【解説】 なぜ石油大手は記録的な利益を上げているのか
ベン・キング、ビジネス記者

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英BPやロイヤル・ダッチ・シェル、米エクソンモービルやノルウェーのエクイノールなど、世界の石油大手が相次いで記録的な利益を発表している。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて石油・ガス価格が高騰していることが、大きな収益につながっている。
こうした企業が利益を上げる一方で、世界中の大勢が光熱費の支払いや車のガソリン価格に苦慮しており、企業により高い税をかけるべきとの声も上がっている。
どうして石油企業は大きな利益を上げたのか、政府はそれを食い止めるべきなのか、解説する。


なぜ石油価格は高騰したのか
石油やガスは世界中で取引されているが、供給が減って需要が高まった場合、売る側は価格を引き上げることができる。
ウクライナ侵攻以前、ロシアは世界最大の石油・ガス輸出国だった。
ロシア産の石油・ガス購入に支払われる資金の多くはロシア政府のものになる。2021年には、この輸出がロシア政府の歳入の45%を占めていた。
しかし侵攻後、イギリスや欧州連合(EU)を含む西側諸国は、ロシア産エネルギーの購入がロシアの軍資金となり、敵対政府を支援することになるのを避けようと、同国からのエネルギー輸入を停止(あるいは、少なくとも大幅に削減)しようとした。
ロシアから石油・ガスを購入したくない国は、他の場所から割高な価格で調達しなければならなくなった。
各国経済が新型コロナウイルス流行を受けたロックダウンから回復する中、石油の需要は高まっており、価格もすでに上がっていた。


ロシアが昨年2月24日に侵攻を開始した翌日、石油価格は1バレル当たり100ドルまで高騰した。3月には127ドルに達し、その後、85ドル前後まで下がってきている。ガス価格も同様、侵攻後に急騰した。
石油と天然ガスは、現代の生活のあらゆる場面で必要とされる。石油はガソリンやディーゼルになり、天然ガスは暖房や調理に使われる。
また、農業や発電にも使われるほか、肥料からプラスチックに至るまで、あらゆる工業生産過程に関わっている。
そのため、石油・ガス価格が上がり続けると他の商品の値段も上がる。イギリスを含む各国がかねて見舞われている生活費危機が、ここ数カ月加速しているのは、そのためだ。
価格の高騰と利益拡大の関係
石油企業は、地中深くに眠る石油・ガスの場所を特定し、採掘することで利益を得ている。
採掘のコストは価格の上下には左右されないが、石油・ガスを売却する場合に関わってくる。
ウクライナ侵攻後に石油がさらに値上がりしたことで、売却益も大きく拡大した。
シェルやBPの通年利益は?
BPは7日、2022年の通期決算が277憶ドルの黒字となり、前年の2倍になったと発表した。また、2030年までに石油・ガス生産を削減する計画を縮小した。
シェルも2022年の通年利益が399億ドルと、やは前年の2倍を記録。過去115年で最高益となった。
こうした利益が全て、消費者の元から消えてなくなるわけではない。多くの一般市民がBPやシェルを含む世界的な石油企業の株を保有している。中には石油大手の株が自分の年金基金の中に組み込まれているものの、そのことに気付いていない人もいるかもしれない。
過剰な利益の一部は、高配当で配分されたり、自社株買いによって1株当たりの価値を上げたりすることで、株主に還元される。
しかし、利用者が光熱費の支払いに苦労するのをよそに、エネルギー各社が何十億ドルもの利益をあげている以上、各社に高い税金を課すよう求める声は続くだろう。
石油・ガス企業の税金
石油・ガス企業は、各国で何十億もの税金を支払った上でなお、記録的な利益をあげた。
BPとシェルは本社をイギリスに置くものの、イギリスの水域での生産は比較的少ないため、複雑な立場に置かれている。両社は利益の大半を世界各地での採掘活動で得ている。
シェルは2022年、イギリスでの生産について1億3400万ドルを納税した。世界全体での納税額は130億ドルだった。
BPはイギリスでは22億ドル、世界全体では150億ドルの税金を支払っている。

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イギリスでの納税の仕組み
石油企業にはすでに、イギリスでの生産について40%の税金がかけられている。これは、他の企業よりも高い税率だ。
しかし、老朽化したリグ(掘削施設)の閉鎖コスト、将来の投資や過去の赤字との相殺などによって、税金を減らすことができる。
BPとシェルは一時、イギリスでの生産について税金を払わず、むしろ政府から支払いを受けていたこともある。
ロシアのウクライナ侵攻後、イギリス政府は高騰する光熱費の支払いを助けるため、エネルギー各社に「超過利潤税」をかけるよう圧力を受けた。
超過利潤税は2022年5月に導入され、11月には税率が25%から35%に引き上げられた。これにより、2022~2028年にイギリスの水域で操業するエネルギー企業から、計400億ポンドの追加税収が得られる予想だ。。
しかし、この超過利潤税はイギリスでの生産のみが対象で、企業によっては利益のほんの一部にすぎない。
そして企業は、新規開拓・生産コストの9割以上を課税対象から控除できるため、超過利潤税の納税額を大きく減らすことができる。
超過利潤税はシェルのイギリスでの納税額全額、BPでは7億ドル分に相当する。
さらに納税すべきとの声
多くの政治家や環境保護活動家、労働組合、貧困対策団体などが、石油企業の記録的な利益を批判し、超過利潤税をさらに引き上げるよう要求している。
石油価格の高騰は企業が制御できない戦争からもたらされているもので、市民の苦しみから利益を得るのは公正ではないという意見だ。
超過利潤税は集めやすく逃れにくい仕組みのため、同税の引き上げが良い方法だという声もある。
シェルのベン・ファン・ブールデン元最高経営責任者(CEO)さえも、社会の最貧困層を保護するために、政府がエネルギー生産者にもっと課税する必要があるのは必然ではないか、と考えている。
しかし石油各社は、超過利潤税が上がればイギリスへの投資に消極的になるし、税率の低い場所で操業することになると主張している。
イギリスでの油ガス生産が最も多いハーバー・エナジーは、超過利潤税のために人員整理を行い、イギリスへの投資を考え直している。
イギリス政府がBPとシェルの「世界」利益に対する課税を増やしていくと決めれば、両社は本社をイギリスから移す可能性もある。新しい税金を逃れ、イギリスから現在支払っている収入の多くを奪うことになる。

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石油企業は、石油価格が前触れもなくいきなり変動することのある世界で操業しなくてはならない。石油価格が高い時期に得た利益は、価格が低い時期に釣り合いを取るのを助けてくれる。
多くの石油企業は昨年、ロシアへの投資で何十億ドルもの損失を被った。BPは昨年、ロシアの石油大手ロスネフチへの投資で240億ドルを減損処理した。
各社はまた、世界が再生可能エネルギーに切り替わるまで石油を供給し続けるため、新たな油田探査に何十億ドルもを投資しなくてはならない。
エネルギー各社は、この切り替えにも大きな役割を果たしている。BPとシェルは、油ガスで得た何十億ドルもの利益の一部を、太陽光発電や風力発電、電気自動車の充電スタンドなどに投じている。
BPのバーナード・ルーニーCEOは、同社は「世界が必要とするエネルギーを届ける手伝いをして」おり、グリーンエネルギーへのシフトにも投資していると語った。
シェルのワエル・サワンCEOは、「非常に難しい時期だ。世界中でインフレ高騰が起きている」と述べた一方、シェルは再生可能技術への投資で役割を果たしていると語った。シュネード・ゴールマン最高財務責任者(CFO)は、同社は昨年、世界全体で1300億ドルの税金を支払ったと付け加えた。
しかしBPは、油ガス需要が高まっていることから、今年の二酸化酸素排出量削減計画を縮小している。
光熱費の上限設定の効果は?
イギリスでは2019年、企業が電気・ガス企業の乗り換えをしない人々の過剰な支払いを要求しないよう、光熱費に上限が課せられた。これは電気・ガス企業を対象にしたもので、石油・ガス企業の利益には影響しない。









