アフガニスタンの女性議員、今はどこに? 権利のためになお闘う
トム・ドンキン、BBC 100 Women

今年8月に武装組織タリバンがアフガニスタンで実権を握って以降、身を隠すために逃げた大勢の人たちの中に、旧政権の女性議員たちもいた。BBCの調査では、アフガニスタンの女性議員69人のうち60人が国外に逃げ、世界各地に滞在していることが分かった。その多くはなお、アフガニスタンの女性の権利のために闘っている。
マシドさん(仮名)は、タリバンがアフガニスタンを掌握してすぐに身を隠し、住む場所を転々と変えた。2日以上、同じ場所で寝泊まりしなかった。
家族を混雑や混乱、複数の爆発が起きていたカブール空港へ連れて行くリスクを負いたくなかったため、アフガニスタンからの脱出は困難を極めた。「アフガニスタンの扉は閉まっていた」とマシドさんは語った。
しかし身を隠して3カ月がたった、今からちょうど2週間前、マシドさんはブルカで顔を完全に覆い隠し、子供たちと共にバスに乗った。まず西部ヘラートへ向かい、さらにイラン国境へと足を伸ばした。
「タリバンについて一つ言えるのは、彼らは女性に顔を見せろと強制しないことだ」
もしタリバンの検問所で身元が特定されれば、確実に拘束されていただろうとマシドさんは語る。しかし、タリバンは女性議員がブルカを着ているとは思っていないし、「この国の政治家や女性活動家は全員、避難したと思っている」という。
10日間かけてイランを抜け、マシドさんは現在、トルコに滞在している。しかし、ここにとどまろうとは思っていない。トルコ当局が彼女の政治的活動を認めないと考えているからだ。
マシドさんは、アフガニスタンの女性や少女たちが直面している「恐怖」を世界に伝え続け、変化を求める活動を行いたいと思っている。しかし現在は、アフガニスタンに残った親族を守るために、身分を隠して暮らしている。

BBCの調査では、女性議員69人のうち残りの9人は、アフガニスタンに残って逃亡生活を送っていることが分かった。
その他の議員の大半は、国外退避の飛行機に乗ることができた。
46人が欧州に滞在しており、最も人数が多いのはギリシャだ。これにアルバニアとトルコが続く。その他の女性議員は、アメリカやオーストラリア、カタールなど、さまざまな地域に分散している。
セリナさん(仮名)は、夫と生後3カ月の赤ちゃんと共に、ドイツ行きの飛行機に乗ることができた。出国前に結核にかかったため、ドイツでは抗生剤で治療を受けながら、亡命申請者のキャンプに滞在している。
セリナさんは、アフガニスタンから逃げることは今まで考えたこともなかったと語る。初めて訪れた欧州、言語を知らない国で、途方に暮れていると話した。
「つらい日々を過ごしてきたし、今も良くない状況にあるが、アフガニスタン国民が今なお直面している問題を考えれば、自分の痛みなど忘れてしまう」
アフガニスタンに帰ることは考えていないという。家族3人でドイツに新しい家を持ち、生活を再スタートさせるまで、とにかく待つしかない。その間も、後にした故郷とのつながりは何とかして維持しようと努めている。
「私は戦争と悲惨な状況の中で育ってきたけれど、それでもアフガニスタンの文化や慣習、母国の雰囲気の中で子供を育てたいと思う」

画像提供, Derrick Evans
国外に逃れた女性議員の多くは、5000人のアフガン難民を受け入れると表明したカナダへたどり着きたいと考えている。
しかしどの国にいても、女性議員の大半はマシドさんのように、女性の権利のために闘い続けたいと思っている。アフガニスタンでの女性の権利侵害にスポットを当て、タリバンに圧力をかけるため、女性議員による「亡命議会」結成という案も出ている。
このアイデアは、女性議員らの国外脱出を手助けした非政府組織(NGO)が発案したもので、欧州に滞在している議員らが熱心に支持している。ただ、実現するかどうかを判断するには時期尚早だという。
支持者の1人には、元駐カナダ・アフガニスタン大使のシンカイ・カロハイルさんもいる。カロハイルさんは現在、カナダのトロント郊外に滞在し、亡命申請を行っている。
タリバンがアフガニスタンを掌握した8月15日についてカロハイルさんは、「その日の朝に自分の州を失い、午後に大統領を失った」と説明した。
「その日が終わるころには、どんなことにも驚かなくなった」
カロハイルさんはアフガニスタンで、女性に対する暴力根絶法の制定に深く関わった。もし何かを達成したければ、女性議員はそれぞれの違いをいったん脇に置く必要があると警告する。
「それぞれがアフガニスタンの異なる地域で選出され、異なる優先事項や政治的興味を抱えているが(中略)、私たちはいますべてを失った状態だ」
「私たちの間にあった違いも失われてしまった。今重要なのは、アフガニスタンを救い、国民をサポートし、女性に発言権を与えることだけだと気づくべきだ」

オランダ・アムステルダム郊外の小さな家で、エライ・エルシャドさんは伝統的なアフガニスタンの昼食を用意している。地元のスーパーマーケットですべての食材をそろえるのには苦労したが、それをおろそかにしないことが重要だと言う。
「アフガニスタンの人々、十分な食事をとれない、あるいはまったく食べ物にありつけない人たちを思い出す」とエルシャドさんは語る。
エルシャドさんはタリバンの進攻時には現職議員ではなかったが、過去に十数年にわたってアフガニスタンで議員を務め、その後はアシュラフ・ガニ大統領の報道官に転じた。
タリバンは実権を握った後にエルシャドさんの銀行口座を凍結したが、エルシャドさんは隠れる必要はないと思い、9月に民間機でアフガニスタンを後にした。

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エルシャドさんは現在、タリバン内の関係者から保護を受けられることを願いながら、アフガニスタンに帰る準備を進めている。一方で、国外からアフガニスタンを変えられる機会については懐疑的だ。
「国外から、他国から活動することは不可能だ。私たちはアフガニスタンにいなくてはいけない」
「解決策はアフガニスタンに基づくものだから、アフガニスタンの中で探さなければならない」
エルシャドさんの計画は、「たとえタリバン政権下であっても」、国際NGOと協力して女子校を作り、女性が教育を受ける権利を訴えていくことだという。
「問題から逃げれば、その問題は永遠に残り続けるだろう」
追加取材:アフマド・ハリド











