オーストラリアとパプアニューギニアが新たな防衛条約を締結、太平洋地域の安全保障見据え

スーツ姿の男性2人が、開け放たれた窓の外で、腕相撲のポーズで手を握り合っている。2人の両脇にはオーストラリアとパプアニューギニアの国旗が並んでいる

画像提供, Reuters

画像説明, オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相(右)とパプアニューギニアのジェイムズ・マラペ首相(6日、キャンベラ)

オーストラリアとパプアニューギニアは6日、新たな防衛条約を締結した。これにより、オーストラリアはパプアニューギニアの軍事施設および部隊へのアクセスを得るほか、どちらかの国が攻撃を受けた場合、両国は互いに支援することになる。

両政府はこの条約について、太平洋地域の隣国としての、長年にわたる同盟関係から生まれたものだと述べた。一方で専門家らは、この地域で拡大する中国の影響力への対抗が目的だと指摘している。

豪シンクタンク・ローウィ研究所でオーストラリア・パプアニューギニア・ネットワークのプロジェクトディレクターを務めるオリバー・ノベタウ氏は、この条約によって、中国はパプアニューギニアのインフラについて、他の太平洋諸島で得ているようなアクセスができなくなると述べた。

条約では、最大で1万人のパプアニューギニア人がオーストラリア軍に従事できるようになる。従軍者はオーストラリア国籍を取得する選択肢を得る。

人口約1200万人のパプアニューギニアは、南太平洋地域で最大かつ最も人口の多い国。

中国は近年、太平洋諸島諸国との貿易を大幅に強化しており、現在では地域各地に外交および安全保障の拠点を築こうとしている。

オーストラリアや、アメリカを含む西側諸国の同盟国は、これらの動きに対抗しようとしている。

中国は2022年、ソロモン諸島と安全保障協定を締結。これにより中国の警察官が同国全土に配置されるようになった。さらに、2023年には、別の警察協定が締結された。

これに対しオーストラリアは昨年12月、ソロモン諸島の警察に1億9000万豪ドル(約188億円)を投資し、警察訓練センターを設置する合意を結んだ。同様の合意は、ツヴァルとも締結している。

今年8月には、バヌアツと3億2800万ドルの安全保障および経済協定を締結した。この協定には、データセンター2カ所の建設、安全保障の強化、気候変動の影響への対応支援が含まれている。

中国との関係

パプアニューギニアのジェイムズ・マラぺ首相は6日、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相とこの最新の合意に署名した。

マラぺ首相は、この条約が地政学的な理由から生まれたものではないと強調。「我々は中国に対して透明性を保ってきた」と述べた。

「我々は中国に対して、オーストラリアが我々の選択する安全保障上のパートナーであると伝えており、中国も我々の同盟関係を理解している。(中略)我々の関係の他の側面が損なわれたことは一度もない」

アルバニージー首相は、両国の同盟関係について「世代を超えた相互の信頼に基づいており、太平洋地域が平和で安定し、繁栄し続けることへの我々の決意を示している」と述べた。

また、「我々がこの地域における安全保障関係を引き続き構築することで、自国の安全保障も守られる」とも語った。

この条約は、パプアニューギニアのピジン語で「ワニ」を意味する言葉にちなみ、「プクプク条約」と名付けられた。どちらかの国に対する武力攻撃は「他方の平和と安全にとって危険」だと明記され、両国は「共通の脅威に対処するために行動すべき」とされている。

オーストラリア放送協会(ABC)が入手した条約の写しによると、「この条約にはワニのようにかみつく力があり、そのかむ力は軍の相互運用性と戦争への備えを物語っている」と書かれている。

また、この合意にはサイバー空間および電磁戦に関する協力強化も含まれている。

これに先立ち、パプアニューギニアのビリー・ジョセフ国防相はABCに対し、この合意によってオーストラリア軍とパプアニューギニア軍は「完全に統合される」ことになると述べていた。

ローウィ研究所のノベタウ氏は、この条約が、オーストラリアが近年直面している軍の人員確保という課題にも対応するものだと述べた。

「パプアニューギニアには、この種の仕事を進んで行おうとする健康な市民が過剰なほど存在している」と同氏は語り、多くのパプアニューギニア人が、オーストラリアでの生活や市民権取得の可能性に魅力を感じるだろうと付け加えた。

ノベタウ氏はまた、この条約がアメリカに対してもメッセージを送るものだと述べた。

同氏は「アメリカは近年、太平洋地域およびUSAID(米国際開発局)からの撤退により、その姿勢が疑問視されている」と語り、トランプ政権が数十億ドル規模の人道支援を削減したことに言及した。

「これは、パプアニューギニアとオーストラリアが対等なパートナーとして太平洋地域の安定を管理し、回復させる能力を持っていることを示すものだ」

条約では、年次の合同軍事演習の実施も定めている。ノベタウ氏はこれを「戦略的メッセージの発信」だと説明。「両軍の相互運用性、地域における外部からの脅威に対処する能力、そしてどれだけ迅速に組織化し展開できるかを示すものだ」と述べた。

ニュージーランドのマッセー大学で安全保障研究を行っているアンナ・パウルズ准教授は、この合意がパプアニューギニア軍の近代化を支援し、物質的にも士気の面でも大きな向上をもたらすと述べた。

一方で、この合意がパプアニューギニアの外交政策とどのように整合するのか、疑問があると付け加えた。

「パプアニューギニアでは、この条約が『すべての国と友好関係を持ち、敵を作らない』という同国の外交方針を損なうのではないかという懸念がある」

パウルズ氏は、この合意が、オーストラリアを中心とし、島嶼(とうしょ)国を周辺とする、いわゆる「ハブ・アンド・スポーク型」の安全保障ネットワークの一部を形成していると指摘。そのうえで、両国には期待や義務、責任についてより明確な理解が必要だと述べた。

この合意はパプアニューギニア国内でも一部で批判を受けている。同国の元国防軍司令官は、この合意が「国にとって大きな代償を伴う可能性がある」と警告している。

ジェリー・シンギロク元司令官は先月、「オーストラリアが中国を潜在的な脅威と見なしていることは周知の事実だが、中国はパプアニューギニアの敵ではない」と、ABCに語った。