イスラエル、ハマスのアブ・オベイダ報道官をガザで殺害と発表

BBCアラビア語を含めた世界各国の報道機関のロゴがついたマイクが並ぶのを前に、目のほかを紅白のスカーフで覆ったアブ・オベイダ報道官が、パレスチナの旗が袖についている迷彩服を着て、右手の人差し指を立てて話している。

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画像説明, ハマスのアブ・オベイダ報道官(2019年撮影)。顔をスカーフで覆い、イスラエルを非難する長広舌で知られていた。

ヤロスラフ・ルキフBBCニュース記者 ラシュディ・アブアルーフBBCガザ特派員(イスタンブール)

イスラエルは8月31日、イスラム組織ハマスの軍事部門のアブ・オベイダ報道官がガザ市での空爆によって死亡したと発表した。同報道官は、2023年10月7日にイスラエル南部を奇襲したハマス軍事部門で残る、数少ない幹部の一人とされていた。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は、イスラエル国防軍(IDF)および治安機関シン・ベトによる「完璧な作戦遂行」をソーシャルメディア「X」で称賛した

ハマス側はアブ・オベイダ報道官の死亡を認めていない。ハマスはイスラエル側の発表に先立ち、イスラエルが8月30日にガザ市の集合住宅を空爆し、多数の民間人が死傷したと発表していた。

複数の現地記者によると、30日に人口密集地のガザ市アル・リマル地区が攻撃され、少なくとも7人が殺害され、20人が負傷した。被害者には子どもも含まれていたという。

イスラエルは現在、ガザ市制圧のための地上侵攻を計画中で、それに先駆けた空爆を継続している。カッツ国防相は31日、「ガザでの作戦が強化される」中で、アブ・オベイダ報道官の「犯罪仲間」も今後大勢が標的になると警告した。

IDFとシン・ベトは30日の攻撃について共同声明を発表。事前に得ていた情報に基づき、アブ・オベイダ報道官の潜伏場所を特定した上で作戦を実行したと説明した。

アル・リマル地区への攻撃では、6階建ての建物の2階と3階に、別々の方向から同時に5発のミサイルが着弾した。標的となった部屋は歯科医院として使用されていた。目撃者によると、攻撃後に数十万ドルが空中に飛び散った。その多くを地元住民が持ち去ったが、後にハマスが回収したという。

IDFとシン・ベトは、アブ・オベイダ報道官が「ハマスのテロ組織の顔役として活動し、ハマスの宣伝を広めていた」と主張した。

報道官は40歳前後とみられ、ハマスの軍事部門カッサム旅団を代表してイスラエルを非難する長い演説を、ここ数年繰り返していた。常にパレスチナのスカーフで顔を覆ったその姿は、中東全域のハマス支持者の多くがあこがれる対象となっていた。

最後の演説とされる映像は8月29日のもので、残るイスラエル人の人質の運命はハマス戦闘員の命運と同じだと述べ、ガザ市侵攻を思いとどまるようイスラエルに警告していた。

窓が吹き飛ばされすでに破壊された建物群から黒煙が空に昇る。ゆがんだテントの間から大人や子供が、それを見上げている

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画像説明, イスラエルによる30日のガザ市攻撃で、黒煙が上った

アル・リマル地区の攻撃現場から約100メートルの場所で理髪店を経営するモハメド・エマド氏は、「恐ろしい爆発の音だった。1時間以上動けなかった」とBBCに話した。

「自分がまだ生きているのが信じられない。けがをして、顔中血まみれの子どもたちを見た。まるで世界の終わりのように、大勢が四方八方に逃げていた」とエマド氏は話した。

BBCが検証した攻撃後の映像には、おびえる住民が通りへ逃げる様子が映っていた。布で覆われた遺体から血が流れ出す様子や、負傷した子どもが男性に抱えられて運ばれる様子も見えた。

IDFは、攻撃前に民間人への被害を減らすため、「精密兵器の使用、空中監視、追加の情報収集」など多くの措置を講じたと説明している。BBCは、IDFの主張もハマスの主張も、独自に検証できていない。

イスラエルの安全保障内閣は8月8日、ガザ市制圧を目指す新しい攻勢計画を承認した。戦争終結を目的とするこの作戦について、国連はパレスチナ市民およびガザで拘束されているイスラエル人質に対する「壊滅的な結果を招く」と警告している。イギリスの駐イスラエル大使も「とてつもない過ちになる」と述べている。

他方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマス打倒を誓い、戦争拡大に対する国際的な批判を退けている。

イスラエルの軍事作戦は、2023年10月7日のハマス主導による攻撃への報復として開始された。ハマスの攻撃では約1200人が死亡し、251人が人質となった。それ以降、ハマスが運営するガザ保健省によると、6万3000人以上のパレスチナ人が殺害されている。

ガザ市の制圧作戦は本格的には始まっていないが、同市への攻撃は継続している。100万人近くが住むガザ市では、すでに多くの住民が避難を繰り返している。

地元住民によると、30日に攻撃されたアパートは数カ月前にもイスラエルの空爆を受けていたという。

イスラエル軍は、ガザ市の全住民を南部の避難地区へ移動させた後、地上部隊を投入する計画を示している。ガザ住民の大半はすでに複数回の避難を経験しており、同市の住宅の90%以上が損壊または破壊されていると推定されている。医療、上下水道、衛生システムは崩壊している。

国連は8月22日、ガザ市および周辺地域で飢饉(ききん)が初めて確認されたと発表した。