米連邦最高裁、ロサンゼルスでの移民捜査の一時停止命令を解除

ロサンゼルス郡ベル市のアトランティック・ブルーバードで、連邦捜査官と国境警備隊に対峙する住民たち

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画像説明, ロサンゼルスでの移民捜査は6月に始まり、すぐに抗議デモが起こった(7月19日撮影)

アメリカの連邦最高裁判所は8日、カリフォルニア州ロサンゼルスで実施されている大規模な移民摘発を当面継続することを認める判断を下した。「合理的な疑い」なしに捜査官が個人を呼び止めることを禁じた、連邦地裁の命令を解除した。

この判決は、国内に不法に滞在する移民を、過去最大規模で強制送還するとしているドナルド・トランプ大統領にとっては勝利となる。

保守派が多数を占める連邦最高裁はこの日、6対3の賛成多数で、人種や言語、職業のみを根拠に容疑者を呼び止めることを認めた。ロサンゼルスで最近行われた移民摘発に対する訴訟が進行しているなかでの判断だ。

一方、リベラル派の判事らは反対意見を述べ、「この判断は憲法上の自由を危険にさらす」と警告した。

保守派とリベラル派が大きく対立

保守派のブレット・キャヴァノー最高裁判事は判決文の中で、下級裁判所による差し止め命令が、移民税関捜査局(ICE)の捜査官による呼び止めや尋問を過度に制限していると指摘した。

「明確にしておくが、見た目の民族性のみでは合理的な疑いを構成しない」とキャヴァノー判事は記し、「しかし、他の重要な要素と併せて考慮する場合には、『関連する要素』となり得る」と述べている。

一方で、リベラル派判事3人は強い反対意見を表明した。意見書のなかでソニア・ソトマイヨール判事は、「ロサンゼルス地域では、見た目や話し方、肉体労働で生計を立てているという理由だけで、数え切れないほど多くの人々が捕まえられ、地面に押し倒され、手錠をかけられてきた」と記した。

「そして今日、最高裁は不必要にも、さらに多くの人々を同様の屈辱にさらすことになった」

ホワイトハウスはこの判決を歓迎し、声明で「犯罪歴のある不法移民の逮捕と送還という任務を引き続き遂行する」と表明した。

ロサンゼルスのキャレン・バス市長とカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(いずれも民主党)は、この判決を批判した。

バス氏は声明で、「本日の判決は危険であるだけでなく、非アメリカ的で、アメリカ合衆国における個人の自由の根幹を脅かすものだ」と述べた。

ニューサム氏は、「トランプ氏の私設警察が、今やあなたの家族を標的にすることにお墨付きを得た」と警告している。

移民団体は「人種差別が合法化された」と懸念

今回の判断により、ロサンゼルスのマーメ・E・フリムポン連邦地裁判事が出していた差し止め命令が解除された。同判事は、一連の摘発が合衆国憲法に違反していることを示す「圧倒的な証拠」があると述べていた。

フリムポン判事の命令を受け、摘発の一時停止が命じられていた。同判事は、トランプ政権が「見た目の人種や民族性」や「スペイン語を話していること」などの要素だけを根拠に、個人を呼び止めたり尋問したりすることはできないと指摘していた。

さらに、バス停や農業の現場、洗車場など「特定の場所」にいるという理由や、個人の職業の種類だけを根拠に個人を呼び止めることも、移民当局に対して禁じていた。

この一時的な差し止め命令は、移民擁護団体による訴訟に基づいて出されたもの。団体は、移民当局がロサンゼルスで無差別に「巡回パトロール」を行い、弁護士へのアクセスを個人に与えていないと主張していた。

フリムポン判事は、こうした行為が、政府による不当な捜索および押収を禁じた合衆国憲法修正第4条に違反する可能性があると述べていた。

しかし連邦最高裁は、政権の対応が、最終的には連邦裁によって合憲と判断される可能性が高いとの見解を示した。今回の判断は、フリムポン判事による一時的な差し止め命令のみに関するものだが、判事らは今後、控訴審でこの訴訟を審理する際の、同裁の姿勢も示した形となった。

国土安全保障省の弁護士らは、移民当局が対象としているのはアメリカ国内での法的地位に基づくものであり、肌の色、人種、民族性に基づくものではないと主張している。

また、フリムポン判事の命令が、ICEの業務を不当に制限しているとも述べた。

移民当局による強制捜査について訴訟を起こした関係者らは、最高裁の判断に「本当に憤りを感じている」と述べた。

6月に連邦捜査官によって一時的に拘束されたアメリカ市民のブライアン・ガヴィディア氏は、BBCの取材に対し、「こんなことが起こるとは思っていなかった」、「人種的プロファイリングに関する法律があると思っていた」と述べた。

原告の一人であるアルマンド・グディーノ氏は、今回の判決が全国的に影響を及ぼす可能性があると述べた。

労働者と移民の権利擁護団体「ロサンゼルス・ワーカーセンター・ネットワーク」の事務局長を務めるグディーノ氏は、「この判決によって人種差別が合法化された」と指摘。アメリカ国内のすべての人が懸念すべき事態だと訴えた。

動画説明, 抗議デモ参加者に当局が催涙ガスや閃光弾 米LAで移民摘発めぐり激しい衝突(2025年6月)

トランプ政権は6月、ロサンゼルスで大規模な移民摘発を開始し、ホームセンター「ホーム・デポ」やその他の職場で人々を呼び止めたり、逮捕したりした。これに対して、即座に抗議活動や市民の混乱が発生した。

トランプ氏はその対応として、カリフォルニア州の承認を得ることなく、州兵約2000人と海兵隊員700人を派遣した。

その後、連邦判事はこの州兵の派遣が違法であるとの判断を下した。これに対しホワイトハウスは、「反逆的な判事が、アメリカの都市を暴力と破壊から守る大統領の権限を奪おうとしている」と反発した。

最高裁が摘発の継続を認めた判断は、トランプ政権が首都ワシントンを含む他の都市でも、法執行を強化しようとしている中で下された。

8月には、ワシントン市内の高い犯罪率に対処するとして州兵を派遣。連邦捜査官も投入して治安維持を強化している。

トランプ氏はさらに、今週中にもイリノイ州シカゴに連邦法執行機関および州兵を派遣するかどうかを決定する意向を示している。