トランプ氏、温室効果ガス規制の法的根拠「危険性認定」を撤回 詐欺の基盤と

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マット・マクグラス環境担当編集委員
アメリカのドナルド・トランプ大統領は12日、連邦政府による地球温暖化ガス抑制政策の基盤となってきた、バラク・オバマ政権期の重要な科学的判断を撤回すると発表した。
2009年のいわゆる「危険性認定」は、さまざまな温室効果ガスが公衆衛生に対する脅威だと結論づけたもの。特に、自動車からの排出量を抑制する連邦政府の取り組みの法的根拠となってきた。
ホワイトハウスは、この撤回は「アメリカ史上最大の規制緩和」だとした。また、自動車1台あたり2400ドル(約37万円)のコスト削減につながり、自動車価格を引き下げられると述べた。
一方、環境保護団体は、この措置がこれまでで最も深刻な気候変動対策の後退だと主張。司法の場で争う構えを示している。
大統領執務室での発表でトランプ氏は、2009年の決定は「アメリカの自動車産業に深刻な損害を与え、アメリカの消費者に大幅な価格上昇をもたらした、壊滅的なオバマ時代の政策だ」と述べた。
また、民主党の気候政策について触れ、「この急進的な規則が『グリーン・ニュー・スキャム』という、歴史上最大級の詐欺の法的基盤になった」とした。
これに対しオバマ元大統領は、この認定を撤廃すればアメリカ国民をより危うい状況に置くことになると述べた。オバマ氏が、現職大統領の政策についてコメントすることはめずらしい。
オバマ氏はソーシャルメディアで、「これがなければ、私たちはより安全でなくなり、より健康でなくなり、気候変動と闘う能力も低下する。すべては化石燃料産業がさらに利益を得るためだ」と指摘した。
「アメリカ車を買いたいと考える国はない」
米環境保護庁(EPA)はオバマ政権1期目の最初の年だった2009年に、温室効果ガスの影響に関する姿勢を初めて示した。
同庁は、二酸化炭素(CO2)やメタンなど六つの主要な地球温暖化ガスが人間の健康にとって危険だと判断した。
世界的な気温上昇に対処する法案について、連邦議会が分裂し合意がまとまらない中、このEPAの認定は、その後の連邦政府による排出抑制の取り組みの中心的役割を果たすことになった。
「危険性認定は、アメリカの温室効果ガス規制の要となってきた」と、EPAと司法省で法律顧問を務めたメガン・グリーンフィールド氏は述べた。
「つまり、自動車だけでなく、発電所、石油・ガス部門、埋立地からのメタン、さらには航空機まで含まれる。これらすべての分野の基準がこの一つの認定に基づいている」
トランプ政権の当局者は、この規制を覆すことにより、1兆ドルを超える節約につながり、エネルギーと輸送の価格引き下げに役立つと強調している。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、認定を覆すことで自動車メーカーの支出が1台あたり2400ドル減少すると記者団に述べた。
しかし多くの環境保護活動家は、トランプ陣営が強調する潜在的なコスト削減に懐疑的だ。
非営利団体「環境防衛基金(EDF)」のピーター・ザルザル氏は、「この措置は、アメリカ国民に、効率が低く汚染度の高い車両を動かすための燃料費として、約1兆4000億ドルを追加で支出させることになる」と述べた。
「我々は健康への影響も分析しているが、この措置によって最大5万8000人の早期死亡と、3700万件のぜんそく発作が増加するとの結果を得た」
アメリカの自動車業界の一部では、燃費効率の低い自動車を製造しても、海外での販売が限られる可能性があるため、環境規制の後退が不確実性につながるとみられている。
米コロンビア大学ロースクールで気候法を専門とするマイケル・ジェラード氏は、「この後退は、燃費基準の緩和など、すでに行われてきたことを固めるようなものだ」と述べた。
「しかし、これはアメリカの自動車メーカーを苦境に陥れる。アメリカ車を買いたいと考える国は他にないからだ」

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トランプ政権は、危険性認定を撤回する作業を進める一方で、この認定を利用し、各州がより厳しい炭素排出規制を制定することを阻止した。
危険性認定は、温暖化ガスの規制責任を連邦当局に与えている。そのため、気候問題に関して個人や団体が提起する、いわゆる「迷惑」訴訟を抑制するためにも使われてきた。
前出のグリーンフィールド氏は、「危険性認定の判断は多数の訴訟を阻んできたほか、原告の主張を裁判所から排除するうえで非常に強力だった」と指摘した。
「今後は、州や非営利団体が主に州裁判所で訴訟を起こし、この新しい法律の輪郭がどこにあるのかを見極めようとする動きが起きると予想している」

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気候科学に異議を唱える動き
危険性認定の撤回をめぐっては、その根拠となっている科学について大きな議論が起きている。
米エネルギー省は昨年、温室効果ガスの温暖化への影響に関する広く受け入れられている科学に異議を唱える報告書を作成するため、科学者の委員会を設置した。
この報告書が、2009年の認定を覆す最初の提案を支える根拠となった。
しかし、多くの気候専門家らは、この報告書を作成した委員の選出が偏っており、人間の活動が気候変動に与える影響に懐疑的な人物で満たされていた上、不正確で誤解を招く内容だったと批判した。
トランプ政権が、この報告書をどの程度活用して反対意見に対抗するかは明らかではない。しかし連邦判事は最近、エネルギー省が委員の選出で法に違反したとの判断を示している。
実際、危険性認定の撤回に対する司法での争いこそが、トランプ政権が求めているものである可能性が高い。
トランプ政権は、この提案がトランプ氏の任期終了前に連邦最高裁で審査されることを望んでいると、多くの法律専門家が指摘している。政権側は、最高裁で勝訴すれば危険性認定が歴史に葬られると考えているという。
「今回の事態は本当に異例だ。EPAがこの領域から完全に撤退し、それを恒久的な措置としようとしている」と、グリーンフィールド氏は述べた。
「現政権がその主張通りに最高裁で勝訴した場合、新たな法律がない限り、新しい政権はその立場を変えることができなくなる」











