ドイツ下院、国防費の歴史的増額を可決 基本法改正へ

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フランク・ガードナーBBC安全保障担当編集委員、トビー・ラックハーストBBC記者
ドイツ連邦議会(下院)は18日、国防費とインフラ支出の大幅な増加へ向けて、財政規律を緩和するため、基本法(憲法に相当)の改正案を3分の2以上の多数で可決した。上院にあたる連邦参議院での審議を経て、21日にも成立する見通し。この決定はドイツにとってだけでなく、欧州防衛のあり方を一変させる可能性がある。
この基本法改正によって、ドイツは厳格な財政規律から、防衛と安全保障への支出を除外する。また、5000億ユーロ(約82兆円)のインフラ基金を創設する。
伝統的に借金を嫌うドイツにとって歴史的な議決。ロシアによるウクライナへの全面侵攻が続き、ドナルド・トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)と欧州防衛に積極姿勢を示していない状況において、欧州にとってドイツのこの決定は極めて重要な意味を持つ可能性がある。
基本法改正案の成立には、連邦参議院で各州政府代表の3分の2以上の賛成が必要。同院での議決は21日に予定されている。

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国防費に関する財政規律緩和を取りまとめたのは、近くドイツの新首相に就任する見通しのフリードリヒ・メルツ氏。同氏は18日の議会審議で、ドイツは過去10年間「誤った安心感を抱いていた」と述べた。
「私たちの今日の決定は、新しい欧州防衛共同体に向けた最初の大きな一歩にほかならない」とメルツ氏は述べ、その共同体には「欧州連合(EU)の加盟国ではない国」も含まれると付け加えた。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ドイツ議会の投票結果を「素晴らしいニュース」と歓迎した。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相との共同記者会見で、フォン・デア・ライエン委員長はドイツ議会のこの議決が、「ドイツは巨額の防衛投資をする覚悟だと、非常に明確なメッセージを欧州に送るものだ」と述べた。
フレデリクセン首相も、ドイツ議会の議決を「すべての欧州人にとって素晴らしいニュース」と評価した。
ドイツはかねて、1945年にさかのぼる歴史的な理由だけでなく、2009年の世界金融危機の経験からも、防衛支出拡大に慎重な姿勢を貫いていた。
それだけに今回の採決も僅差が予想されたが、結果的には賛成513、反対207で、基本法改正案の可決に必要な3分の2の賛成を優に上回った。
ドイツ主要紙の中には、この議決を「私たちの国にとって運命の日」と評した新聞もあった。
今回の改正によって、ドイツでは今後、防衛費が国内総生産(GDP)比1%を超えても、財政規律の対象ではなくなる。ドイツでは政府債務をGDP比0.35%未満に抑える「債務ブレーキ」と呼ばれるルールが定められているが、今回の基本法改正によって、防衛費の一部は「債務ブレーキ」の対象から外れる。
ヨーロッパにとって不確実性が大いに増している時代において、今回の措置によって、これまで刷新が一部遅れてきたドイツ軍が変革する可能性がある。
今回の議決では防衛費の規制緩和以外にも、ドイツのインフラ整備のために5000億ユーロを充てることも認められた。橋や道路などの改修だけでなく、緑の党が強く要求していた気候変動対策にも使われることになる。

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メルツ氏率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU)は2月下旬のドイツ総選挙で勝利し、選挙後すぐに一連の措置を提案した。
公共放送ARDとの16日のインタビューでメルツ氏は、トランプ大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談を重ねていることや、アメリカが欧州防衛から手を引く可能性について懸念を示し、「ここ数週間で状況は悪化している」、 「だからこそ、私たちは素早く行動しなくてはならない」のだと話した。
今回の議決は、メルツ氏にとって大きな政治的勝利だ。首相に就任した際には、数千億ユーロを国家に投資できるようになる。ドイツ国内の一部ではこれを「財政バズーカ」と呼んでいる。
これはウクライナにとっても重要な瞬間だ。ドイツ連邦議会が18日に承認した防衛計画では、「国際法に違反して攻撃を受けた」国に対する援助支出が「債務ブレーキ」の対象外となることも認められている。
これに伴い、近く退任するオラフ・ショルツ首相は早ければ来週にもウクライナに30億ユーロの援助を提供できるようになる。
メルツ氏は、新しい議会会期が始まる3月25日以降よりも、今の議会で採決した方が結果が有利になると分かっていたため、現議会での議決に臨んだ。 2月の選挙で議席を増やした極右「ドイツのための選択肢(AfD)」と、支持を増やした左派党(ディー・リンケ)はどちらも、メルツ氏の計画に反対している。
メルツ氏は選挙勝利後も政権作りの連立協定にまだ至っていないが、キリスト教の復活祭(イースター、今年は4月20日)までに組閣する意向を示している。 しかしドイツでは、連立交渉が何カ月も長引く場合もある。












