スイスで氷河とけ遺体発見、1986年から行方不明の登山者
イモジェン・フォークス、BBCニュース(ジュネーヴ)

画像提供, Swiss Police/Canton Valais
スイスのマッターホルンで7月、氷河近くで見つかった人間の遺体が、1986年から行方不明になっていたドイツ人登山者のものだと確認された。
スイス南部ツェルマット村から登り、テオドール氷河に沿って歩いていた登山者グループが7月12日、遺体を発見した。登山靴と滑り止めのアイゼン(クランポン)が、氷の外に露出しているのに気付いたという。
現地警察によると、遺体をDNA鑑定した結果、37年前に行方不明となったドイツ人登山者のものと判明した。警察は身元を明らかにしなかったが、この人物は当時38歳で、ハイキング中に行方が分からなくなった。大がかりな捜索が当時行われたものの、手がかりがつかめなかったという。
気候変動によってアルプス山脈の氷河が急速に縮小している影響で、氷に埋もれていたものが露出することが増えており、これもその一つのケースとみられている。
テオドール氷河は、1年中スキーが可能なツェルマット地区の一部で、欧州では最も標高の高いスキー・エリアとして知られる。しかし、山岳の氷原は温暖化の影響を特に受けやすく、テオドール氷河は近年、大幅に縮小。隣接するゴルナー氷河と1980年代までは連結していたものの、今では分断してしまった。
何十年も行方が分からなかったものが、近年では毎夏のようにとけた氷河から出現している。昨年には1968年に墜落した飛行機の残骸が、アレッチ氷河の中から見つかった。
2014年には、マッテルホルンの山小屋に備品をヘリコプターで運んでいたパイロットが、登山者の遺体を発見。遺体はやがて、1979年から行方不明となっていたイギリス人ジョナサン・コルヴィル氏だと判明した。消息を長年知らずにいた遺族は、コルヴィル氏が愛する場所で亡くなったとついに確認することができたのは「切ない」ことだと話した。
その2年後には、1970年に嵐に巻き込まれて行方不明になっていた日本人登山者2人の遺体が、マッターホルンの氷河の端で見つかった。
昨年には、とける氷河の影響で、スイスとイタリアの国境の位置さえ影響を受けた。国境はかつて、氷河がとけて流れ落ち、どちらかの国の方向へ進む分水地点に定められていた。しかし、氷河の融解によって分水地点が移動した。その結果、たとえば登山者に人気のイタリアの山小屋リフュジオ・グイデ・デル・チェルヴィーノが今では厳密には、スイス国内にあることになる。
両国政府は国境の画定について、交渉を重ねている。
しかし、氷河の融解は国境をめぐる外交交渉や、長年行方不明だった登山者の発見以上に、大きい影響をもたらす。
アルプス山脈の氷河は欧州の環境にとって重大な意味を持つ。氷河がたくわえる冬の雪はラインやドナウといった欧州の大河の水源となり、農業用水や原子力発電所の冷却水となる。ライン川では昨年も今年も水位が下がりすぎ、オランダからドイツを経てスイスへと移動する貨物船が移動できなくなった。
氷河の融解水には、河川の水温を下げる効果もある。その冷却効果が得られなければ、水温は上昇し、魚が死んでしまう。
昨年7月には、スイスの氷河が1931年以来半減していることが判明し、それまでの予測よりはるかに急速に氷河の融解が進んでいると、専門家たちに衝撃を与えた。
たとえばフィーシャー氷河について1928年と2021年の写真を比較すると、氷河がほとんど失われている様子がわかる。
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このペースが続くと、今世紀末までにアルプスの氷河はほとんどなくなってしまうと、昨年夏の時点で言われた。
しかし今年になってスイスは過去にほとんど例のない暑く乾燥した6月を経験。今年7月の第1~3週は世界的に、記録史上最高の暑さとなった。
氷河の専門家たちは8月と9月に再びアルプスの氷河を計測するが、どのような結果になるのかすでに懸念が高まっている。










