ミャンマーのロヒンギャに対するジェノサイド疑惑、国際司法裁で審理始まる

バンダ・アチェの行政庁舎内の仮設避難所で、頭を白っぽい布で覆ったロヒンギャ難民が子どもを抱きながら立っている。背後には布がひもにかけて干してある

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画像説明, 多くのロヒンギャの人々がミャンマーから逃れ、隣国バングラデシュやその他のアジア諸国で生活している(2023年12月、インドネシアのバンダ・アチェ)

国際司法裁判所(ICJ)で12日、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害がジェノサイド(集団殺害)に当たるかの審理が始まった。

この訴えは2019年、イスラム教徒が多数派の西アフリカ・ガンビアが起こしたもの。同国のダウダ・ジャロウ法相はこの日の口頭弁論で、ミャンマーが「ジェノサイド的な政策」によってロヒンギャを抹殺しようとしていると主張した。

ジャロウ氏はまた、「弱い立場にある集団に加えられた、残忍で悪質な暴力に関する信頼できる報告」を、ガンビアとして検証したと説明。ロヒンギャについて、「何十年にもわたるおぞましい迫害と、長年の非人間的なプロパガンダに苦しんできた」とした。さらに、その後も軍による弾圧と、「ミャンマーでの存在を消し去ることを目的とした継続的でジェノサイド的な政策」に悩まされていると主張した。

ミャンマーは以前、これらの疑惑を否定している。

ジャロウ氏は、ミャンマーに対して訴訟を起こしたことについて、ガンビアも過去に軍事政権を経験しており、その「責任感」からの行動だと説明した。

そして、2021年の軍によるクーデターを念頭に、「悲しいことに、ミャンマーは残虐行為と不処罰の連鎖に陥っているようだ」と述べた。

ミャンマーでは2017年、軍がロヒンギャを弾圧。数千人が殺害され、70万人以上が隣国バングラデシュに逃れた。

国連は2018年の報告書で、ミャンマー・ラカイン州でのジェノサイドと、別の地域での人道に対する罪について、同国軍の幹部を調べる必要があるとした。

ミャンマーはこの報告書の内容を否定。作戦は一貫して、武装戦闘員や反政府勢力の脅威に向けられたものだと主張してきた。

ガンビアによる訴訟では2020年、ICJがミャンマーに対し、ロヒンギャに対するジェノサイドを「あらゆる手段を用いて」阻止するよう命じた。一方、ジェノサイドの認定には時間がかかるとみられていた。

ICJの審理は今月末まで続くとみられている。ミャンマーはその間に、ガンビアの訴えに反論する機会が与えられる。

ICJは、ロヒンギャの生存者らを含む証人から話を聞くことに3日間を割り当てる予定。これらは一般やメディアには非公開となる。

最終的な判断が示されるまでには、数カ月、あるいは数年かかるとみられている。ICJは、ジェノサイドのような極めて重大な犯罪について、個人を訴追することはできない。それでもその見解は、国連やその他の国際機関において重みを持つ。

共同記者会見に出席したアウンサンスーチー氏。黒っぽい服に大きな真珠色の首飾りをつけ、目線を落としている。前後にミャンマーの国旗が見える

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画像説明, ミャンマーの元指導者アウンサンスーチー氏は、2023年に刑務所から自宅に移され軟禁状態に置かれている(2018年10月9日撮影)

2017年時点でミャンマーの指導者だったアウンサンスーチー氏は、ロヒンギャに対するジェノサイドの疑惑が持ち上がった際に軍の行動を擁護したため、人権の擁護者としての国際的名声に傷がついた。同氏はその後、軍によるクーデターによって権力の座から追われ、政治的動機に基づくと非難されている罪状で有罪とされ収監された。

オランダ・ハーグにあるICJの前では、弾圧を生き延びたロヒンギャの一人、モナイラ氏が、「私たちは正義の実現を単に望むのではなく、それを要求する。そして、ジェノサイドを犯したミャンマーの独裁者たちや、ミャンマー軍の指導者らに対して、裁判所が措置を講じることを求める」とロイター通信に話した。

国連の難民機関によれば、バングラデシュ南東部のコックスバザール県だけでも、100万人以上のロヒンギャが難民キャンプで暮らしている。世界でも最大規模で、最も人口密度が高い難民キャンプだと、国連は説明している。

今回の裁判は、パレスチナ自治区ガザでの戦争をめぐって南アフリカがイスラエルに対して起こした裁判など、他のジェノサイド関連の裁判においても先例をつくるとみられている。こうした裁判は過去10年以上なく、ICJの裁判官らがジェノサイドの定義に関する規則を洗練する機会だとの見方もある。

1948年の国連ジェノサイド条約は、ナチス・ドイツによるユダヤ人の集団殺害を受けて採択された。ジェノサイドを「国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもつて行われた」犯罪と定義している。ガンビアはこの条約をもとに、ロヒンギャに対する扱いをめぐって、ミャンマーが条約に違反したと非難している。

ガンビアのジャロウ法相は、「この条約の言葉が(ミャンマーのケースで)実行され、適用されないなら、意味がない」と述べた。

同法相はまた、ロヒンギャのために正義を求めるガンビアの努力は、イスラム協力機構の57カ国や、イギリス、フランス、ドイツ、カナダなど他の11カ国からも支持されていると付け加えた。

また、ミャンマー軍トップで、2021年のクーデターで政権を掌握したミンアウンフライン司令官については、ICJに加え、国際刑事裁判所(ICC)も捜査している