イギリスの秋季予算発表 低所得世帯やパブなどの支援を約束

画像提供, House of Commons
イギリスのリシ・スーナク財務相は27日、下院で秋季予算案を発表した。イギリス経済は新型コロナウイルスのパンデミックの影響を予想していたほど受けなかったと説明。すでにその影響から脱しつつあり、健全だと強調した。
予算案では、社会保障の一括給付制度(ユニヴァーサル・クレジット)を改革し、低所得世帯に年間1000ユーロを追加で補助すると述べた。
また、教育予算を拡大するほか、法人税の増税を廃止。さらに酒税を見直し、ビールなどへの課税を減らすことでパブを支援すると発表した。
GDP成長率は上方修正
スーナク財務相は下院での演説で、「雇用は拡大し、投資も増えている。公共サービスは改善し、財政も安定している。賃金は上がっている」と述べた。
「本日発表する予算案は、イギリス国民により力強い経済をもたらす。力強い成長と共に、イギリスは競合国よりも早く回復する」
スーナク財務相によると、失業率はパンデミック下でも予想されていたほど悪化しなかった。一方、インフレ率は上昇を続けており、来年には3.1%から4%になると述べた。
しかしイギリスのシンクタンク、財政研究所(IFS)のポール・ジョンソン氏はBBCの取材で、向こう5年で生活水準が「ほとんど」向上しないという見通しは、イギリスの家庭に「大きな打撃」だと指摘した。
予算責任局(OBR)がこの日発表した経済見通しでは、家計の可処分所得は年間0.8%しか上がらない見込み。
一方で、国内総生産(GDP)成長率は前回予想から上方修正し、2022年には前年比6.3%拡大すると予想。しかし2023年には1.3%増に減速するとみている。
<関連記事>
予算案の大半はすでに発表されていたもので、全国生活賃金を現在の時給8.91ポンドから9.5ポンドに引き上げる。
また、アルコール税を「大幅に簡素化」し、アルコール度数に応じた課税に切り替える。これにより、2023年からはスパークリングワイン、ドラフトビール、サイダー(リンゴ酒)などが減税される一方、赤ワインや「ホワイト・サイダー」と呼ばれるアルコール度数の高いサイダーは増税となる。
事業税については、イングランドで予定されていた増税を撤回。2023年から、事業所を改修した企業への減税措置を設ける。さらに、パンデミックからの回復を促すため、パブや映画館、レストラン、スポーツジムといった娯楽施設の事業税を1年間、50%減額する。
注目されていたユニヴァーサル・クレジットの改革は、70分にわたる演説の最後に発表された。
財務省は10月初め、週当たり20ポンドの保障額上乗せを廃止すると発表し、批判を受けていた。今回の予算案では、保障の対象となる収入を上回った場合の減額率を下げることで、上乗せ廃止による影響を抑えるとしている。
これにより、「200万世帯が平均1000ポンドを追加で貯蓄できるようになる」とスーナク財務相は説明した。
このほか、航空旅客税の国内線での引き下げと長距離路線での増税、銀行税の低減なども発表された。
野党の反応は
予算案の発表では通例、財務相による演説の後に野党の各党首が返答の演説を行う。ただし、最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、新型ウイルス検査で陽性が発覚したため、代わりにレイチェル・リーヴス影の財務相が演説に立った。
リーヴス氏は、労働党はユニヴァーサル・クレジットへの対応を歓迎すると述べた一方で、20ポンドの上乗せ給付の廃止を相殺するものではないと指摘した。
「減額率が下がっても、ユニヴァーサル・クレジットの利用者はなおこの国の首相より高い税率を課せられている。失業していてもなお、年間1000ポンドを失っている」
その上で、多くの国民が直面している光熱費や食品価格の上昇といった生活の危機に対し、スーナク財務相は「一貫した計画を示せていない」と批判した。
スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード議員は、国内線の航空旅客税の減税は「不名誉」な政策だと非難。11月から英グラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の前に、世界にどのようなメッセージを伝えるつもりなのかと問いただした。
自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は、教育予算の拡大と銀行税の減税に大きな格差があると述べ、「スーナク財務相は子ども1人当たりつき、1日にたった1ポンドしか投資しない。保守党の銀行員の友人たちに提案した減税の6分の1以下だ」と指摘した。








