COP26の主要報告書の変更求め、多くの国がロビー活動 流出文書で判明

ジャスティン・ロウラット、トム・ガーケン、BBCニュース

Coal power plant chimney

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今月末に国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が控える中、さまざまな国が、気候変動への対処方法に関する重要な科学報告書の内容を変更しようと働きかけていることが明らかになった。BBCが膨大な流出文書で確認した。

流出文書によると、サウジアラビアや日本、オーストラリアなどが、化石燃料からの急速な脱却の必要性を控えめに評価するよう国連に求めている。

また、一部の富裕国は、より環境に優しい技術に移行するために貧困国への拠出を増やすことに、疑問を抱いている。

こうした「ロビー活動」は、10月31日に開催予定のCOP26をめぐって問題を引き起こすものとなっている。

国連の行動提言に反発

COP26では、地球温暖化を遅らせ、気温上昇を1.5度以下に抑えるための重要な基準の策定が各国に求められるとみられる。開幕が迫る中、各国が国連の行動提言に反発していることがうかがえる。

今回流出した文書には、さまざまな政府や企業、その他の関係者が、気候変動への対処方法に関する最良の科学的証拠をとりまとめた国連報告書を作成する科学者チームに提出した、3万2000件以上の意見が含まれる。

この「評価報告書」は、気候変動の科学的評価を行う国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が6〜7年ごとに作成しているもの。

同報告書は、各国政府が気候変動に取り組むためにどのような行動が必要かを決定する際に用いる。最新版は、COP26での交渉に不可欠な情報といえる。

関連コメントや報告書の最新の草案は、環境保護団体グリーンピースUKの調査報道チーム「Unearthed」に提供され、BBCニュースに公開された。

化石燃料をめぐって

流出文書によると、多くの国や組織が、最新の草案が推奨するほど早急に化石燃料の使用を減らす必要はないと主張している。

サウジアラビア石油省のある顧問は、「『あらゆる規模での緊急かつ加速的な緩和行動の必要性』といった表現を(中略)報告書から削除すべき」だと要求している。

COP26の目的の1つに、石炭の使用停止が掲げられているが、オーストラリア政府のある高官は、石炭火力発電所の閉鎖が必要だという結論を拒否している。

サウジアラビアは世界有数の産油国で、オーストラリアは主要な石炭輸出国だ。

インド政府と密接な関係にある鉱業燃料中央研究所(CIMFR)の上級科学者は、安価な電力を供給するという「とてつもない課題」があるため、石炭は数十年にわたってエネルギー生産の主力であり続けるだろうと警告している。同国はすでに世界第2位の石炭消費国となっている。

多くの国が、二酸化炭素(CO2)を回収して地下に永久貯蔵する、新たに開発された高価な技術を支持している。化石燃料を大量に生産または使用しているサウジアラビア、中国、オーストラリア、日本と、石油輸出国機構(OPEC)は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術を支持している。

こうしたCCS技術は、発電所や一部の産業部門から出される、化石燃料の燃焼による排出を、劇的に削減できるとされる。

世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアは、「エネルギーシステム分野における脱炭素化の取り組みの焦点は、ゼロカーボン源への迅速な移行と、化石燃料の積極的かつ段階的廃止」だとする結論の削除を、国連の科学者に求めている。

An offshore gas field

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画像説明, ノルウェー沖のスレイプナー・ガス田では1996年からCCSが導入されている

アルゼンチン、ノルウェー、OPECも異議を唱えている。ノルウェーは、国連の科学者は化石燃料からの排出量を削減するための有望な手段として、CCSの可能性を認めるべきだと主張している。

報告書の草案は、CCSが将来的に役割を果たす可能性があることを認めつつ、その実現可能性については不確実だとしている。また、2015年のパリ協定での合意に対して、CCSを用いた化石燃料がどの程度適合するかについては「かなりあいまいだ」としている。パリ協定では、190以上の国と地域が、産業革命以前の気温からの気温上昇分を摂氏2度、理想的には1.5度未満に抑えるための取り組みを推進すると合意した。

報告書の草案についてコメントを求められると、OPECは「IPCCの報告書で明らかになったように、排出量の削減という課題には多くの道筋がある。我々はそのすべてを模索する必要がある。我々は利用可能なすべてのエネルギーを活用するとともに、クリーンでより効率的な技術的解決策を用いて排出量を削減し、誰も取り残されないようにする必要がある」とBBCに述べた。

公平な科学

IPCCは、各国政府からのコメントは科学的評価プロセスの要で、報告書の作成者がこれらを報告書に組み込む義務はないとしている。

「我々のプロセスは、あらゆる方面からのロビー活動を防止するように設計されている」と、IPCCはBBCに述べた。「評価プロセスは今も(そしてこれまでも常に)IPCCの活動で絶対に欠かせないものであり、報告書の強みと信頼性の重要な源だ」。

IPCCの3つの主要な報告書の作成に携わってきた気候科学者、英イーストアングリア大学のコリーヌ・ル・ケレ教授は、IPCCの報告書の公平性に確信を持っている。

教授は、すべてのコメントは、誰からのものかに関わらず科学的根拠に基づいて判断されるとしている。

また、「科学者に対して、こういったコメントを受け入れろという圧力は全くない」、「もしコメントがロビー活動的であったり科学的に正当化されないものであればIPCCの報告書に組み込まれることはない」とBBCに述べた。

教授は、各国政府を含むあらゆる分野の専門家が科学を検証する機会を持つことが重要だと主張する。

「報告書が吟味されればされるほど、最終的な(科学的)証拠はより強固なものになるだろう。利用可能な最善の科学に基づいた方法で議論が進められ、明確にされるので」

コスタリカの外交官として、2015年にパリで開催された国連気候変動会議を監督したクリスティアナ・フィゲレス氏は、各国政府がIPCCのプロセスに参加することが極めて重要であるという考えに同意する。

「みんなの声がそこにあるべきだ。それがこの目的のすべてなので。これは1本の糸ではなく、たくさんの、たくさんの糸で織られたタペストリーなので」

肉食を減らす

世界有数の牛肉製品と飼料作物の生産国であるブラジルとアルゼンチンは、温室効果ガスの排出量を削減するために肉の消費量削減が必要だとする報告書草案の証拠に強く反論している。

草案には、「植物由来の食生活は、温室効果ガス排出量の多い欧米の平均的な食生活に比べて、排出量を最大50%削減できる」とある。ブラジルは、この主張は正しくないとしている。

両国は、気候変動対策における「植物由来の食生活」の役割について言及している文章や、牛肉を「炭素排出量が多い」食品としている文章の削除や変更を求めている。アルゼンチンは、赤身肉への課税や、週に2日肉を食べないことを推奨する国際キャンペーン「ミートレス・マンデー」への言及を削除するよう求めた。

ブラジルは「植物由来の食生活は、それ自体が排出量の削減や抑制を保証するものではない」とし、食品の種類ではなく、様々な生産システムからの排出量レベルに議論の焦点を当てるべきだとしている。

ブラジルでは、アマゾンをはじめとする森林地帯で森林破壊の割合が大幅に増加している。これは同国政府が規制を変更した結果だとの声が上がっているが、同国は誤った主張だとしている。

貧困国への資金援助

スイスは、排出量削減目標を達成するために、発展途上国が富裕国からの支援、特に資金援助を必要とするとの文章の修正を求めている。

2009年コペンハーゲン会議では、先進国2020年までに年間1000億ドルの気候変動対策資金を途上国に提供することで合意したものの、この目標はいまも達成されていない。

Chart showing climate finance provided to developing countries
画像説明, 発展途上国への気候変動対策資金。2018年は800億ドル近くに上った(出典:経済協力開発機構)

オーストラリアも同様に、気候変動に関する途上国の誓約のすべてが、外部からの資金援助に依存しているわけではないと主張している。

「気候変動対策資金は、気候変動への取り組みを強化するための重要なツールではあるが唯一の関連ツールではない」と、スイス連邦環境局はBBCに述べた。

「スイスは、その(資金拠出)能力を有するパリ協定のすべての締約国が、そのような支援を必要とする人々に支援を提供すべきであると考えている」

原子力の役割

東欧諸国を中心とした国々は、国連の気候目標を達成するために原子力が果たす役割について、もっと積極的に記載すべきだと主張している。

インドはさらに踏み込んで、「ほとんどすべての章に原子力に対する偏見が含まれている」と主張。原子力は「確立された技術」であり、「一部の国を除いて、政治的な後ろ盾がある」としている。

チェコ、ポーランド、スロヴァキアは、原子力は国連が掲げる持続可能な開発目標17項目のうち1項目にしかポジティブに働かないとする報告書を批判している。3カ国は、原子力は国連の開発目標のほとんどにおいて、ポジティブな役割を果たせると主張している。