スペースXの有人宇宙船、初の打ち上げに成功

ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員

Launch

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アメリカの宇宙開発企業スペースX(エックス)は30日午後3時22分(日本時間31日午前4時22分)、米フロリダ州のケネディ宇宙センターで、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士2人を乗せた宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げに成功した。

アメリカ国内からアメリカ人が宇宙に飛び立つのは、スペースシャトルの有人飛行計画を9年前に中止して以来のこととなる。

搭乗したダグ・ハーリー飛行士とボブ・ベンケン飛行士は、新しい宇宙船システムの試験だけでなく、NASAにとっての新たなビジネスモデルも主導する。

NASAは今後、自前の宇宙船を持たず、スペースXから「タクシー」サービスを借りるモデルを想定している。

Elon Musk

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画像説明, 打ち上げ成功を喜ぶイーロン・マスク氏

今回の打ち上げが成功したことで、富豪イーロン・マスク氏が所有する「スペースX」以外の企業の参入も期待されている。航空機大手ボーイングもすでに、NASAと宇宙船供給の契約を結んでいる。

マスク氏自身も、自社の宇宙船が飛行士を乗せて軌道に乗るのを見て、感極まったと話した。

「これは開拓スピリットを持つ人の心を、わしづかみにする出来事だと思う。そしてアメリカは、開拓のスピリットを蒸留した国だ」

Astronauts

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画像説明, ダグ・ハーリー飛行士(左)とボブ・ベンケン飛行士は最大4カ月間、宇宙でのミッションに当たる
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マスク氏がNASAに宇宙船提供を申し出たことで、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)に人を運ぶのにロシアの宇宙船に頼る必要がなくなった。

フロリダ州に打ち上げを観覧に来ていたドナルド・トランプ米大統領も、この点に注目した

「過去の指導者たちは、外国のお情けでアメリカの宇宙飛行士を軌道に送っていた。そういうことはもうない」

「今日という日から我々は誇りを持ってアメリカの宇宙飛行士を、世界最高峰のアメリカのロケットで、このアメリカの国土から打ち上げられる」

ハーリー氏とベンケン氏を乗せた「クルードラゴン」は、打ち上げロケット「ファルコン9」に乗せられて打ち上げられた。

気象予報士によると、この日のケネディー宇宙センター周辺の天候が好ましい状態になる確率は五分五分だった。しかし幸運なことに好天が続き、スペースXは打ち上げを決行することができた

ファルコン9は有名な第39発射施設から北東の大西洋に向かって打ち上げられた。その2分半後に下部が切り離され、さらに6分後には、宇宙飛行士たちは無事に軌道に乗った。

Behnken and Hurley

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画像説明, 軌道に乗った「エンデバー」から通信するベンケン氏(奥)とハーリー氏(手前)

ハーリー氏とベンケン氏は31日中にISSに到着する予定だ。

その間、両氏はクルードラゴン内の設備や、手動運転などを含む手続きを試験する。

クルードラゴンは自動的にISSまでの航路を決められる完全自動型だが、乗組員はあらゆる事態を想定し、宇宙船が手動の場合どのように動くのかを正確に把握する必要がある。

この宇宙船には操縦桿(かん)がなく、すべての操作はタッチパネルで行われる。

軌道上での最初の仕事のひとつに、宇宙船に名前をつけるというのがある。アメリカでは、最初の有人飛行計画「マーキュリー計画」の時から、この伝統が続いてきた。ハーリー氏とベンケン氏は地球への連絡で、この宇宙船を「エンデヴァー(努力、試みの意)」と呼ぶと発表した。

ハーリー氏は、「この名前を選んだのにはいくつかの理由がある。まず今回の計画は、2011年にスペースシャトル計画が終わって以来、NASAとスペースX、そしてアメリカが行ってきたすばらしい努力の賜物だから。もうひとつはボブと私の個人的な理由で、2人とも最初の宇宙飛行をスペースシャトルのエンデヴァー号で行った。その名前を受け継ぐのは私たちにとって非常に意味がある」

エンデバヴァーという名前は、18世紀にイギリス人探検家ジェイムズ・クックがオーストラリアへ向かった際に乗っていた船にちなんでいる。

Beach

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画像説明, 新型コロナウイルス対策のため、NASAはケネディー宇宙センター近くに集まらないよう呼びかけていたが、近隣の海岸は混雑していた

両氏のISS滞在期間は現時点では明らかになっていないが、1~4カ月ほどとなる可能性が高い。

打ち上げ同様に太平洋への帰還も無事に実現した時点で、NASAとスペースXの新しい協業関係は次の段階に入る。

スペースXはすでに、ISSへの有人宇宙飛行計画を6件、26億ドル(約2800億円)で受注している。

その第1弾は8月末かその直後にも行われる予定で、今度は2人ではなく4人の宇宙飛行士がクルードラゴンに乗り込むことになっている。

Bridge

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画像説明, ケネディー宇宙センター近くの橋から打ち上げを見守る市民
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30日の打ち上げは、新型コロナウイルス危機の中で決行された。

NASAはケネディー宇宙センターの近くに集まらないよう人々に呼びかけたほか、同センターへの招待客も厳しく絞り込んだ。

宇宙飛行士は通常の場合でも、打ち上げ前に隔離生活を送る。しかしNASAはここでも、数週間前から2人と接触できる人数を絞り、マスクの着用を義務付けた。

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Donald Trump

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画像説明, ドナルド・トランプ米大統領はケネディー宇宙センターに招待された

18年前に創業したスペースXにとって、30日は大きな節目の日となった。

同社の再利用可能な宇宙船は業界をひっくり返し、有人宇宙船について、新しいマーケット主導型のアプローチを開拓した。

すべてが順風満帆だったわけではない。

29日には、テキサス州ボカチカの試験施設で大きな爆発があったばかりだ。しかしスペースXは繰り返し、否定的意見は間違っていると証明してきた。NASAも、マスク氏との関係で浮いた数十億ドルを、月や火星への有人飛行計画など、複雑な計画にまわせると歓迎している。

ケネディー宇宙センターのボブ・キャバナ所長は、「地球の低軌道に商用環境を構築することで、我々は地球を離れた探索といった難しい計画に注力できるようになる。月に継続的に駐留できるように、そして火星でもそうした設備を確立できるようにしたい」と語った。

「低軌道にとらわれている限りそれは不可能だ。民間の参入は、宇宙飛行の新時代の始まりだ」

The ascent
画像説明, 打ち上げ計画の概要。クルードラゴンは打ち上げロケットの上に搭載されており、途中で第1ステージと第2ステージの切り離しがある。第1ステージは切り離された後に制御された状態で着陸する。クルードラゴンは軌道に乗った後、国際宇宙ステーションへと向かう
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The capsule
画像説明, クルードラゴンの全体図。乗組員の生活する上部と、トランク・太陽光パネルのついた下部に分かれている
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