トランプ氏、自分には「全面的権限」あると主張 知事たち「王ではない」と反発

President Donald Trump

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新型コロナウイルス対策の行動制限をいつ解除するかについて、ドナルド・トランプ米大統領は13日の定例記者会見で、各州の知事たちに命令する「絶対権限」が自分にはあると主張した。憲法の規定と異なるこの主張に、ニューヨーク州など一部の知事は「大統領は王ではない」と反発している。

トランプ氏はこの日のホワイトハウス定例会見で、新型ウイルス対策で停止していた国内の経済活動を再開するため、政権内で計画を最終段階まで詰めているところだと述べた。トランプ氏は5月1日に、国内の行動制限を解除したいとしている。

米政府がこれまで市民に対し、不要不急の移動や外食などを控え、集会は10人までにとどめるよう求めてきた自粛要請は、4月30日に期限が切れる。

しかし、住民への具体的な行動制限は各州の知事が州ごとに、要請もしくは命令している。こうした知事の要請や命令に反して、大統領が行動制限を解除できるのかと記者に質問されると、トランプ氏は「合衆国の大統領には全面的な権限がある」、「最終的に決めるのは合衆国大統領だ」、「(州知事は)合衆国大統領の承認ガなければ何もできない」などと答えた。

合衆国憲法は、住民の安全と治安を維持する権限は州にあると規定している。連邦制のアメリカでは各州とその知事に幅広い独自権限が認められており、ワシントンの中央政府がすべてにおいて州政府の上位に立つわけではない。

東海岸と西海岸で計10州が、厳しい外出禁止令の解除に向けて準備している。

人口約3億3000万人のアメリカは現在、世界で最も新型ウイルスの感染者が多く確認され、死者も最多。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計(日本時間14日午後4時現在)によると、58万2500人超の感染と2万3600人超の死亡が確認されている。

A woman, with a face mask, crosses a street with her dog on Park Avenue, remaining nearly empty due to coronavirus

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画像説明, ニューヨーク州のクオモ知事は行動制限の解除を準備し始めている

憲法と知事たちは

トランプ氏は、行動制限解除を命令する「最終的」で「全面的」な権限は自分にあると言い、「全面的だ。知事たちは承知している」と述べた。

その上で「そうは言ったものの、各州と協力する」とも話した。

トランプ氏は、憲法のどこにその根拠があるかは言明しないまま、自分にそうした権限を与える「色々な規定」が憲法にはあると強調した。

しかし、法律の専門家によると、州や各市町村が定めた公衆衛生のための規制を覆す権限は、大統領にはない。

アメリカで最も甚大な被害が出ているニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(野党・民主党)は米CBSに対して、経済活動の再開時期について大統領には全面的な権限などないと発言。「この国には国王はいない、大統領がいるからだ」と述べた。

クオモ知事は全国の注目を集めるようになった毎日の定例会見でもトランプ氏を批判。大統領と争うつもりはないものの、大統領がニューヨーク州民の安全と福祉を脅かすなら、「そうするしかない」と強調した。

その上で知事は、「全面的な連携と協力のためなら、大統領に手を差し伸べる」とも述べた。

これに対してトランプ氏は14日、ツイッターでクオモ氏の批判を続けた。さらに、自分に従わない州知事を牽制(けんせい)するかのように、「ほかの民主党知事には、『バウンティ号の反乱』は自分の一番好きな映画のひとつだと伝えておけ」と書いた。

A quiet Wall Street with a view of a statue of George Washington and the New York Stock Exchange in New York, 13 April 2020

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画像説明, ひとけのないウォール街

これに先立ち、ペンシルヴェニア州のトム・ウルフ知事(民主党)も、大統領には一方的な権限があると主張するトランプ氏のツイートに反応し、「州を封鎖する責任は自分たちにあったのだから、再開する責任も一義的にはおそらく自分たちにあるはずだ」と述べた。

各州の知事たちはすでに、トランプ政権の意向とは無関係に、経済活動の再開について協議しているもようだ。

東部のニューヨーク、ニュージャージー、ロードアイランド、コネチカット、デラウェア、マサチューセッツ、ペンシルヴェニア各州の州政府当局者は、「圧倒的に賢明」な対応を約束しているが、時期の見通しは示していない。

西海岸で隣接するカリフォルニア、ワシントン、オレゴンの各州も、行動制限の解除において連携する方針を示している。

マサチューセッツ州のチャーリー・ベイカー知事を除く9州の知事は、いずれも野党・民主党に所属する。

ニューヨーク州では19万人近くの感染と1万人以上の死亡が確認され、世界でも特に甚大な被害を受けている。

しかし、アンドリュー・クオモ知事は13日の定例会見で、「最悪は脱した」と思うと述べた。

「こんな経験は誰もしたことがない。すべての答えが分かっている人などいない」とクオモ知事は言い、「公衆衛生と経済。どちらが優先か? どちらも優先だ」と述べた。

アメリカでは全米50州が緊急事態を宣言し、40以上の州が州全体に外出禁止令を出している。

他国の行動制限は

各国はロックダウン(都市封鎖)や行動制限の解除に、それぞれ異なる方法で取り組んでいる。

新型コロナウイルスが昨年12月に最初に報告された中国湖北省の武漢では、1月下旬からの2カ月以上にわたる厳しい都市封鎖の後、今月8日に封鎖を解除した。

スペイン政府スペイン政府は13日、ロックダウンを一部緩和し、社会機能維持に不可欠ではない職種でも、約30万人の職場復帰を認めた。

イタリアも今週中に、一部の業種について業務再開を認める方針。

フランスでは、エマニュエル・マクロン大統領が全面封鎖に近い厳しい制限を5月11日までに延長すると発表した。

イギリス政府は13日、先月23日からの全国的なロックダウンの延長を発表した。

トランプ氏はほかに何と

新型コロナウイルスへの対策状況を連日ホワイトハウスで発表しているトランプ大統領は、国内の日別死者数は一定になりつつあり、他人との距離を開ける「社会的距離」の取り組みが成功していると述べた。

この定例会見でホワイトハウスは、トランプ氏の取り組みを礼賛し、マスコミ報道を罵倒する内容や、トランプ政権をたたえる複数の知事の様子などをおりまぜたビデオを流した。

ホワイトハウスの定例会見を生中継している複数の放送局が、これを受けて中継を切り替えた。

このほか、米政府の新型ウイルス対策をまとめている米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長について、トランプ氏は12日にツイッターで、「ファウチを首にしろ」というハッシュタグをつけたツイートを共有していた。ファウチ所長はCNNに対して、アメリカがもっと早く行動制限を開始していたら多くの人命が救えただろうと発言したため、トランプ氏の怒りを買ったとみられている。

ファウチ所長を解任するつもりかと13日の記者会見で質問されたトランプ氏は、そのつもりはないと答え、国内で広く尊敬と信頼を集める所長が自分も好きだし、「最初から」同じ意見だったと述べた。

トランプ氏は、「最高の人だと思う」と言いつつ、中には所長を好ましく思っていない人もいると指摘した。

ファウチ氏はこれまでたびたび、政府の対策不足を議会で認めたり、トランプ氏と食い違う発言をしたり、科学的な内容についてトランプ氏の発言を訂正したりしてきた。ただし13日の会見では、CNNでの発言は「言葉遣いがまずかった」と認めた。

ファウチ所長も2月17日の時点では、インフルエンザの脅威は「本物で喫緊」だが、それに比べると新型コロナウイルスの危険は「狭小なものにすぎない」と述べていた。

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