アメリカの猛暑、刑務所でも命の危機 空調のない施設も

ブランドン・ドレノン、ジュアン・ベン・ジュニア、BBCニュース

Activists gather at the Texas capitol

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画像説明, 刑務所の改革を求める活動家らは、暑さによる受刑者や職員への影響を懸念している

アメリカで気温が上がる中、空調システムのない刑務所で、監房に閉じ込められた受刑者らと、警備の職員らが苦しんでいる。

カルヴァン・ジョンソンさん(67)は、テキサス州刑務所に37年間収容されていた。エアコンのない監房で37回の夏を過ごした。

華氏100度(摂氏37.7度)を超える焼けつくような日々が、数えきれないほどあった。ジョンソンさんの生存は、いかに涼しく過ごすかの、創造力と必死さにかかっていた。

「時にはトイレを詰まらせてから水を流すんだ」と、ジョンソン受刑者は話した。「そこにパンツとシャツを入れて、少しばかり水につけておく」。

ジョンソンさんはこれを「何度も」やってきたという。

ジョンソンさんは、自分は試したことはないが、トイレの水を飲んでいる受刑者さえ見たことがあると話した。監房の洗面台の水よりも数度ほど冷たいからだという。

刑務所では涼む方法もいくつかあったが、アクセスは簡単ではなかったとジョンソンさんは語った。扇風機は少なく、氷もめったに見られなかったという。

「暑さで失神する人もいた」、「何度も見てきた」。

米海洋大気庁によると、ジョンソンさんが釈放された2022年は、アメリカで史上3番目に暑い夏だった。

アメリカでは今週、2億3000万人の国民が華氏90度(摂氏32.2度)以上を経験した。危険なほど暑い状況が頻発するようになったことで、アメリカの刑務所に再び注目が集まり、改革を求める声が高まっている。

6月以降に9人死亡=現地報道

テキサス州やアリゾナ州などアメリカで最も暑い地域の13州では、刑務所に全館空調システムがなく、命に関わる状況が生まれていると、NPO「刑務所政策イニシアチブ」は分析している。

科学雑誌「PLOS ONE」に掲載されたある研究では、アメリカの州立および民間の刑務所における夏季の死亡率は、気温が平均気温より華氏10度上がるごとに5.2%増えるとの結果が出た。

テキサス州刑事司法局が運営する刑務所100カ所のうち、全館空調システムが設置されているのは31カ所、一部区域にのみ空調システムがあるのは55カ所だった。ジョンソンさんのいたウェインライト刑務所を含む14カ所には、まったく冷房がない。

ブラウン大学、ボストン大学、ハーヴァード大学の研究者らは、昨年11月に行った調査で、2001~2019年の間にテキサス州内の全館空調システムのない刑務所で死亡した人の13%は、「酷暑が死因となった可能性がある」と結論づけた。

現地紙テキサス・トリビューンは、同州のエアコンのない刑務所で今年6月半ば以降に、少なくとも9人の受刑者が心臓発作や心疾患で死亡したと伝えた。外気温は華氏100度以上だったという。

同紙によると、暑さが厳しかった時期にさらに少なくとも14人が亡くなったが、死因は不明だという。死者は大抵の場合、監房内で刑務所職員に応答しなかったことで発見された。

テキサス州刑事司法局のアマンダ・ヘルナンデス報道官は、これらの死亡事案について、調査が完了する前に暑さと結びつけるのは不正確だと述べた。同局の公式発表では、2012年以降、暑さが原因の死者は出ていない

今年に入ってからは、受刑者8人が暑さによって応急手当以上の医療行為を必要としたが、命にかかわるものではなかったと、ヘルナンデス報道官は述べた。

電子メールでの取材でヘルナンデス報道官は、同局は受刑者と職員の保護責任を真剣にとらえていると説明。

「誰もが氷と水を利用できる。施設内には、空気を動かすために扇風機が戦略的に配置されている。受刑者は扇風機を利用でき、必要に応じて冷房の効いた休憩所を利用できる」

Allan B Polunksy prison in Polk County, Texas

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画像説明, 米テキサス州ポーク郡のアラン・B・ポランスキー刑務所には空調設備がいっさいないという

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Presentational white space

一方、刑務所関連の活動団体は、犯罪に対するテキサス州の厳しい姿勢が、刑務所の状況改善に政治家らが積極的ではない理由だとしている。

だが同州下院は今年、州立刑務所の過度の暑さに対処する動きを見せた。

刑務所内を摂氏18~29度に保つよう定めた法案を可決し、空調システムの設置に3億4300万ドル超の予算を付けた。この温度設定は、すでに民間刑務所に義務付けられている。

しかし州上院はこの法案を否決し、予算も縮小させた。BBCがアメリカで提携するCBSによると、テキサス州は今年の議会会期中、320億ドル超の財政黒字だという。

BBCは、テキサス州上院の財政委員会にコメントを求めている。

刑務所職員にも影響

一方、元刑務所職員で、現在は州刑事司法局職員の代表団体「AFSCMEテキサス・コレクションズ」の副代表を務めるクリフトン・ブキャナンさんは、暑さの影響を受けているのは、受刑者だけでなく職員もだと語る。

「これは職員や有権者、子供にサッカーを習わせる母親、あるいはサッカーコーチをしている父親についての話だ」と、ブキャナンさんは指摘した。

「受刑者たちにとって苦しいものは、私たちにとっても苦しい」

華氏で3けたの気温の刑務所の様子について、ブキャナンさんは「地獄で働いているようだ」と説明した。

「防刃ベストを着て、何時間も階段を上り下りしなくてはならない。(中略)職員は頭がくらくらして、めまいがして、吐き気に見舞われる」

「政治家たちが空調システムを導入するために、職員の誰かが死ななくちゃならないのか?」