がんで息子亡くしたイラク油田地帯の父親、英石油大手の総会で「被害」訴える

Ali Hussein Julood
画像説明, アリ・フセイン・ジュルードさんの白血病は、油田のフレアリングによる汚染が原因となった可能性が高いと、医師は指摘している

若くしてがんで死去したイラク人男性の父親が27日、イギリスの石油大手BPの年次総会に出席し、イラクの油田地帯では「がんがまるでインフルエンザのように当たり前になっている」と訴えた。この男性ががんになったのは、BPの油田のガスのフレアリング(焼却処分)が原因の可能性があると医師は指摘している。

BPの油田をめぐっては、発がん性の高い汚染物質が出ていたことがBBCの調査で分かった。

男性はアリ・フセイン・ジュルードさん。今月21日に、血液のがんの白血病で亡くなった。21歳だった。BBCのドキュメンタリー番組で自身の生活を記録していた。

BPは、アリさんの家族に哀悼の意を述べるとした。

自宅から2キロの場所でフレアリング

アリさんの父親のフセイン・ジュルードさんはBBCに対し、アリさんの命はBPの記録的な利益の犠牲になったと話した。

アリさんの医師は、アリさんが暮らしていた地域がひどく汚染されていたことが白血病の原因となった可能性があると述べた。

BBCニュース・アラビア語の調査では、油田と近接しているイラクのコミュニティーで白血病のリスクが高いことが明らかになった。

油田では、石油の掘削の際にでる「無駄な」ガスを焼却処分している。このフレアリングが、がんと関連があるとされる汚染物質を作り出している。

イラク南東部ルマイラのアリさんの住んでいた地域は、フレアリングが行われていた地点から約2キロメートルの距離にある。これは、フレアリングは住宅地から少なくとも10キロ離れた場所で行うよう定めたイラクの法律に違反している。

がん患者が20%増加

BPの年次株主総会には当初、アリさんが自ら出席し、質問する予定だった。しかし総会前に亡くなったため、父親のジュルードさんが通訳を介し、ビデオリンクで参加した。

ジュルードさんはBPの役員に対し、状況を説明した。

「玄関からは、フレアリングの黒い煙が24時間見える。この煙の有害な化学物質のにおいもする」

「煙がひどいと呼吸もままならなくなり、石油が空から降ってくる。(中略)ここではがんは、まるでインフルエンザのように当たり前になっている」

アリさんは15歳から白血病に悩まされてきた。

イラクにある世界最大の油田地域(バスラ、ルマイラ、西クルナ、ズバイル、ナフラン・オマール)に住む人々は長い間、地域内で子供の白血病が増えており、フレアリングがその原因ではないかと疑ってきた。

BBCにリークされた公文書では、この地域ではフレアリングが加速する中、ここ5年でがん患者が20%増加したとされている。

ジュルードさんは、フレアリングと汚染がなくなることをアリさんは何より望んでいたと話した。

「息子は自然を愛していた。自分の庭を世界で一番愛していた。子供たちが自由に呼吸をしながら外で遊べることを願っていた」

BPはこの総会で、ルマイラでのフレアリングを削減し続けていると述べた。

イギリスの年金基金も懸念

BBCの調査では、BPや伊エニ、米エクソンモービル、米シェブロン、英蘭シェルが事業を展開している油田で、フレアリングによる排出ガスが数百万トン規模で報告されていなかったことも分かった。

BPの総会では、イギリスの一部の主要年金基金が、BPは気候変動対策を弱めていたとして、ヘルゲ・ルンド取締役会長の再選に反対票を投じた。しかし、大多数の株主が再選を支持した。

BPは先に、2020年代末までの排出削減目標を下方修正すると発表している。

英年金基金5団体は、新目標がBPにとって財務的リスクになると指摘。世界が温室効果ガス排出でネットゼロへと動く中、同社の化石燃料プロジェクトの価値は失われていく可能性があると述べた。

5団体はBBCの取材に対し、反対票はBPの活動への抗議を示すものだとした。

年金基金はBPに4億4000万ポンドを出資しているが、これは全株式の1%に満たない。しかし、これらの年金基金はイギリスの労働者の3分の1以上をカバーしているため、その影響力は大きい。

総会では、気候変動活動家による妨害活動もあった。

BPは、「建設的な挑戦と対話」に価値を置くとしている。

BBCニュース・アラビア語の調査に基づくドキュメンタリー「Under Poisoned Skies(毒された空の下で)」は、2022年9月に公開されました。