今年は化石燃料発電が初めて縮小へ、クリーンエネルギー加速で=報告書
マット・マクグラス環境担当編集委員

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今年は発電に使われる化石燃料が前年より減り、環境にやさしいエネルギーへの「分岐点」になると、シンクタンクの最新報告書が予測している。
気候・エネルギーのシンクタンク「エンバー(Ember)」の調査によると、世界的な景気後退(リセッション)やパンデミックの年を除き、発電のために使う石炭や石油、ガスの量が前年を下回るのは今年が初めてとなる。その結果、発電による温室効果ガスの排出も減るという。
報告書の著者らは、中国を中心に再生可能エネルギーがブームとなっており、これが変化をもたらしていると評価した。
風力発電と太陽光発電は現在、世界の電力の12%を供給している。イギリスでは昨年、風力タービンがほぼ全土の電力をまかなえる数に達した。
エンバーは、再生可能エネルギーで今年の電力需要の伸びを全て満たせるだろうとみている。
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発電は、地球温暖化の最大の要因となっている。2021年には、エネルギー関連の炭素排出の3分の1以上を発電が占めていた。
そのため、発電で石炭や石油、ガスの使用を徐々に減らしていくことが、危険な水準の気候変動を避けるために重要とされている。
エンバーは今回の調査で、世界の電力需要の93%を占める国々のデータを分析した。

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それによると、発電セクターにおける化石燃料の役割を縮小させる動きが、大きく前進したという。
その主要因として、太陽光と風力による発電が、経済的にも有用な電力源として伸び続けていることが挙げられる。昨年は世界全体で太陽光発電が24%増加。これは、南アフリカほどの規模の国の年間需要をまかなえる増加率だという。
原子力発電と水力発電を合わせると、2022年にはクリーンエネルギーが世界の電力の39%を占めた。報告書は、昨年つくられた電力は過去最もクリーンだったと説明している。
一方で、石炭の利用が増えたことから、発電セクターからの炭素排出は増加し続けた。

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報告書の著者らは、これは全体的な電力需要が拡大しているものの、そのすべてがクリーン発電でまかなえているわけではないからだと指摘している。
また、昨年は原子力と水力による発電に問題があった。フランスでは多くの原発が休止状態に置かれ、欧州では水力発電所のある河川の多くで水位が低下しすぎた。
しかし報告書は、今年は風力と太陽光による発電の伸びが需要の伸びを上回ると予想。温室効果ガスのトレンドが逆転し始めるだろうとした。
主著者のマルゴルザタ・ウィアトロス=モチカ氏は、「発電のために化石燃料を増やすのをやめれば、排出量は減少し始める」と語った。
「これは、電気自動車やヒートポンプが増え、電力化が進む中で非常に重要な文脈だ。発電セクターをクリーンにすることは、他のセクターでも排出量を減らすことになる」
発電における化石燃料の排出量は、今年わずか0.3%しか下がらない見込み。しかし報告書の著者らは、減少傾向は今後も続き、加速していくとみている。そのためには、昨年わずかに縮小したガス使用を、さらに減らしていくことが必要だという。ブラジルのように、昨年、発電におけるガス使用を46%減らした国もある。

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著者の1人であるデイヴ・ジョーンズ氏は、「我々は今、化石燃料による発電の排出量が減少するという新しい時代、次の分岐点に到達した。風力と太陽光発電がその答えであり、できるだけ早くこうした発電所を建設するためのロードマップに沿って取り組みを始めたところだ」と話した。
化石燃料による発電の縮小という大きな傾向を生み出したのは中国だ。昨年は世界の新たな風力発電所の50%、太陽光発電所の40%が中国に建設された。一方で中国は、世界最大の石炭発電国でもある。
「中国における風力や太陽光などクリーン発電の拡大の速さが続き、石炭発電のピークが2025年以前に終われば、それは大きな影響力になる」と、ジョーンズ氏は述べた。
エネルギーの専門家は、化石燃料での発電が縮小するのは「分岐点」といってよいと認める一方で、まだやるべきことは残っていると指摘する。
ベルゲン大学のジェシカ・ジェウェル教授は、「イギリスでは石炭発電の最初のピークは1979年だった」と話す。ジェウェル教授は今回の報告書には関わっていない。
「言うまでもなく、完全な石炭発電からの撤退には数十年がかかる。イギリスはピークから43年たった2022年にもまだわずかに石炭を使っている。クリーンエネルギーの目標達成までに40年、いや30年も残っていない。我々は電力の完全な脱炭素化をもっと短い時間でやらなければならない」









