中国のゼロコロナ抗議デモ、姿を消す参加者たち 政府の弾圧強まる中

テッサ・ウォン、グレイス・ツォイ、BBCニュース(シンガポール)

Protesters hold up a white piece of paper against censorship as they march during a protest against Chinas strict zero COVID measures on November 27, 2022 in Beijing, China

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画像説明, 中国の厳格な新型コロナウイルス対策に対する抗議デモでは、多くの参加者が白紙を掲げた(2022年11月27日、北京)

中国共産党の政治局常務委員会は16日、新型コロナウイルスのパンデミックで勝利を収めたと宣言した。「ゼロコロナ」政策に終止符を打った、昨年11月の画期的な抗議デモの記憶はすでに薄れつつある。

しかし、中国が大幅に方針転換して動き出す中、政府に異議を唱える人々への弾圧がひっそりと強化されている。デモ参加者の多くは、当局に連れ去られて行方不明になっている。

暗闇の中で白紙を掲げて新型コロナをめぐる行動制限に抗議した、いわゆる「白紙」デモには、数千人が集まった。中国共産党と党を率いる習近平国家主席を批判する、異例の行動だった。

当時、警察はほとんど逮捕に踏み切らなかった。それから数カ月がたった今、中国の活動家たちによると、多数の抗議者が警察に拘束されている。ひとつの団体は、100人以上が逮捕されたと推計している。

国際人権団体や国外の大学は、拘束された人々を釈放するよう求めている。複数の活動家団体は、拘束されたとされる人の名前を記したリストを公表しており、その中には、北京だけでなく上海や広州、南京など複数の都市で抗議した人たちが含まれている。

中国当局は拘束について、取材に回答していない。しかしBBCは、拘束者の友人や弁護士への取材を通じて、北京で逮捕された12人の名前を確認することができた。

12人のうち、少なくとも5人はすでに保釈されている。拘束が続く人の中には、「けんかを売り、トラブルを引き起こした」として逮捕された曹芷馨さん、李思琪さん、李元婧さん、翟登蕊さんの女性4人が含まれる。有罪となれば最長5年の禁錮刑を言い渡される可能性がある。この悪名高くあいまいな容疑は、反対意見を封じ込めるために多用されていると批判される。

「彼らは活動家ではない」

逮捕者の多くは高学歴で、イギリスやアメリカの大学に通っていた人もいる。作家やジャーナリスト、音楽家、教師、金融のプロフェッショナルなどが含まれる。

北京で拘束された人の大半は、芸術を愛する友人同士で構成された自由なネットワークの一員で、読書会や映画上映会、討論会などでよく顔を合わせていた。

その多くは女性で、警察は彼女たちがフェミニストかどうか、あるいは「フェミニスト活動」に関与しているかどうか、尋問していると報じられている。中国当局は近年、女性の権利活動家に対する取り締まりや検閲を強化している。

このグループは社会的意識が高く、セクハラ被害者を支援する「#MeToo(私も)」運動の中国での象徴的存在である周暁璇さんへの支持を示していたメンバーもいた。しかし、決して活動家ではないと友人たちは主張する。

「社会に関心がある若者のグループに過ぎない(中略)私の友人は女性の権利だけでなく、人権や弱者の権利にも関心がある。フェミニスト関連の活動とはなんら関係はない」と、拘束者の友人の1人は語った。

同グループの一部の女性は昨年11月27日、北京の亮馬河近くで行われた追悼集会に参加していた。

このイベントは、昨年11月25日夜に新疆ウイグル自治区ウルムチ市で発生した集合住宅火災の犠牲者を追悼するために、中国全土で市民が自発的に行った多くのイベントの1つだった。10人が死亡したこの火災をめぐっては、コロナ対策の影響で住民避難が遅れたとの声が上がったが、当局はこれを否定した。

参加者は白紙を掲げ、集会は平和的な抗議行動へと取って代わった。白紙はコロナ対策への不満を象徴するものとなった。

「すごく抑圧的な環境が、すごく長く続いていた。(参加者は)当時、自分たちが運動に参加しているとは思っていなかった。自分たちの感情を吐き出すための手段だと、そう思っていたに過ぎない」と、別の友人は語った。

「警察と衝突したわけでも、過激な意見を口にしたわけでもなかった。なので誰も、特に重視していなかった」

Protesters light candles and leave cigarettes at a memorial during a protest against Chinas strict zero COVID measures on November 27, 2022 in Beijing, China

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画像説明, ウルムチ市で発生した集合住宅火災の犠牲者を追悼するための集会が、コロナ対策への抗議行動へとつながった。画像は追悼集会でろうそくを灯す人々(2022年11月27日、北京)

だからこそ、中国がいかに迅速に抗議行動を封じるか知りつつ、参加者は誰も自分の身元をほとんど隠そうとしていなかったのだと、友人たちは口をそろえる。

何がきっかけで警察がこの特定の友人グループにたどり着いたのかはわかっていないが、警察が監視カメラや顔認識ソフトウェアを使って抗議者を追跡したり、逮捕者の携帯電話を調べていると報じられている。

拘束者の1人が作成したメッセージアプリ・テレグラムのグループには、60人以上のメンバーが集まっていた。その多くは実名で登録された電話番号を使用していたという。拘束の2日後、一部メンバーが警察に尋問された。

「彼女が連行された時、私たちは電話で話をしていた」と、拘束された1人の恋人は話した。「彼女は友人数人が連行され、連絡が取れなくなったと言っていた。彼女は携帯電話から何かを削除しようとしていた。消し終わる前に彼女は連行された」。

複数の活動家は、昨年12月から今年1月にかけて逮捕のスピードが加速したようだと話す。1人、また1人と友人たちが拘束されていったと。

いまも拘束されている曹芷馨さんは逮捕を見越して、カメラに向かって訴える動画を撮影し、友人に送っていた。自分が行方不明になったらオンライン上で公開してもらうために。

「私たちがしていたのは、合理的な方法で自分たちの気持ちを表すということです」と曹さんが語る動画は、オンラインで拡散されている。「私たちは消えたくない。(中略)もし、追悼行事に参加することが犯罪であるなら、私たちの気持ちを共有する余地はどれだけ残されているのでしょうか」。

懸念と非難

複数の人権団体や教育機関が現在、拘束された人々を釈放するよう求めている。こうした動きは、国際的関心の高まり示すものだ。英ロンドン大学ゴールドスミス校はBBCに対し、李思琪さんが同大の元学生だと確認し、李さんが無事かどうか「深く懸念」しているとした。

「言論の自由に対する弾圧を最も強い言葉で非難し、この追悼集会に関連して拘束されているすべての人を直ちに釈放するよう、中国当局に求める」と、ゴールドスミス校の広報担当者は述べた。

さらに、学長が中国の鄭沢光駐英大使宛てに書簡を送ったと付け加えた。中国大使館はこれまでのところ、BBCの問い合わせに回答していない。

米シカゴ大学と豪ニューサウスウェールズ大学(UNSW)も、元学生が逮捕されたことを認めた。UNSWはBBC宛ての声明で、「法律の原理原則と普遍的人権について、それ相応の敬意を持って」この問題を解決するよう求めた。

国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団(RSF)」は、拘束された李思琪さんら4人はジャーナリストだと指摘。その逮捕は「たとえ政府の公式見解と矛盾する内容であっても、事実に基づく情報を報道すべきだと考える人々に対する、身が凍るようなメッセージを改めて」発するものだとした。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この出来事は「中国の若者が自由と人権のためにあえて発言することで、重い代償を払っている」ことを示しているとし、中国当局は拘束された人々を支援しようとしている弁護士や友人を脅迫していると付け加えた。

ニワトリを殺すようなもの

観測筋は、当局は抗議者を逮捕することによって、人権活動家の滕彪氏が言うような「サルを脅すためにニワトリを殺す」というシグナルを発したいのだとみている。

「当局は自分たちが(抗議者側の)指導者や組織者とみなした人物を捕まえて、指導的立場の者を厳しく罰したいと考えている」と、滕彪氏は述べた。さらに、中国当局は抗議行動の背後に「西側の敵対勢力」がいるかどうか、本能的に探ろうとするだろうとも話した。

拘束者の多くが女性で、フェミニスト活動を支持しているかどうか尋問されたという情報からして、中国当局がいかに女性の権利運動に不信感を抱いているか、浮き彫りになっている。

中国では近年、女性に対する暴力や性的暴行事件がいくつか全国的な注目を集めている。こうした事件を機に、異例なほど厳しい当局批判が続き、女性の権利について世論の支持が高まっている。

しかし、この運動が拡大するにつれて、政府の対応も硬化している。2015年に当局が「フェミニスト・ファイブ」という女性グループを取り締まって以降、オンライン上で検閲や攻撃を受けることが多くなったと活動家たちは話す。中国共産党内の部局のひとつは最近、「極端なフェミニズム」は「悪性腫瘍」だと非難した。

「『社会の調和』の維持が、かねて中国政府の最優先事項なだけに、フェミニスト運動は常に政治体制全体の安定を脅かすものだと考えられてきた」。英ウォリック大学で中国のジェンダーにおける力関係を研究するアルトマン・ペン助教は、こう言う。

A protester holds a candle as another a white piece of paper against censorship during a protest against Chinas strict zero COVID measures on November 27, 2022 in Beijing, China

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画像説明, 活動家たちは、国際的批判の高まりが拘束者の解放につながることを期待している。画像は2022年11月27日の北京での抗議行動

デモ参加者たちの先行きは不透明だ。

保釈された人たちが今後、起訴される可能性は残っている。今も拘束が続く人の中には、起訴するかどうか検察が判断を下すまで、さらに拘束が数週間続く可能性がある人もいる。政治的な事案では、拘束期間は数年とはいかないまでも数カ月間続く可能性もあると、滕氏は言う。

デモ参加者の家族はいまのところ沈黙を守っている。拘束者の友人との連絡を絶った人さえいる。BBCの取材では、娘の裁判にむけて雇った弁護士との契約を解除した家族がいることが明らかになった。解除の理由は不明だ。

拘束者の家族は大きな圧力にさらされていることから、沈黙を守る可能性が高いと、ベテランの権利活動家、楊占清氏は言う。

「警察はあめとむちを使い分けている。当局は家族に対し、沈黙を守れば逮捕者を早期に釈放するが、応じなければ、仕事も年金も失うことになるというのだ」

しかし、拘束に対する国際的な監視の目が強まっていることが、拘束者を助けることにつながるかもしれない。政治的にデリケートな事案では、外圧によって拘束者が早期に釈放されたり、刑務所での待遇が改善されることがあると、楊氏は言う。

こうした中、拘束者の友人たちは、自分たちの身の安全を心配しながらも状況を見守り、情報を共有し続けている。

友人の多くは海外に住んでいるため、昨年11月の抗議行動には参加していない。しかし、拘束者と関わりを持ち、友人の窮状について国際的関心を高めようと動いていることから、いずれ自分たちが標的にされるかもしれないと恐れている。

彼らは最近、拘束者の1人が獄中から伝えてきたメッセージを広めた。この女性拘束者は友人を安心させるために、拘束された人々は気を落とさずにいると伝えた。

「(私たちを尋問する人たちは)私たちの周りには裏切者の友人がいる、私たちを裏切った人がいると、私たちに思わせようとしてくる」、「でも私たちはいまも、共に支え合っていると信じている」。

(注意:当局からの報復を恐れる人々の身元を保護するため、一部の名前を伏せています)