【解説】 セヴェロドネツクの陥落、ウクライナ情勢でどんな意味があるのか
ジョー・インウッド、BBCニュース(ウクライナ・キーウ)

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ウクライナ東部の都市セヴェロドネツクの陥落は、必然のように思えたかもしれない。しかし、ウクライナにとって痛手であることに変わりはない。
セヴェロドネツクは何週間か前から、ロシアによる侵攻の主な目標となっていた。巨大な砲撃と空爆で、この古い工業都市の大部分はがれきと化した。
ついにはウクライナ側の指揮官らが、この廃墟を守ろうとすれば、あまりに多くの人命が失われると述べた。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、セヴェロドネツクがロシアに完全制圧されたと発表。その後の25日夜のビデオ演説では、ウクライナにとって「道徳的に、そして感情的にも」困難な日だと述べた。
ウクライナがどうにか持ちこたえていたルハンスク州の最大都市を失い、ロシアは重要な戦略目標の1つに1歩近づいたことは、否定しようがない。ウクライナ全土の占領を狙った最初の試みが失敗して以降、ロシアはドンバスと呼ばれる東部の広い地方の掌握に戦力を集中させてきた。
ドンバス地方は、ドネツクとルハンスクの2州で構成されている。どちらか一方を手中に収めれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、国民に真の成果として示せる。それは、侵攻初期に失敗したプーチン氏がまさに必要としていることだ。
だが、ロシアによるルハンスク州全体の掌握は、その可能性が高まっているとはいえ、保証されているわけではいない。ロシアの進路にはリシチャンスクがある。セヴェロドネツクから10キロも離れていないこの都市は、まだウクライナが保持している。
セヴェロドネツクを明け渡したウクライナ軍は、ここに退いたと考えられている。
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リシチャンスクがなぜ大事なのかを理解するには、ルハンスク州の地理と、今回の戦争で同州がこれまで果たしてきた役割を理解する必要がある。
リシチャンスクとセヴェロドネツクは、シヴェルスキー・ドネツ川沿いにある。この川はドンバス地方を流れ、ロシアが大きな痛手を被った数々の戦いの舞台となってきた。

1カ月前には、ロシア軍がこの川を渡ろうとし、大隊の戦術グループ全体が犠牲になった。
兵士数百人と装甲車数十台が、対岸に移動しようとしたところでウクライナの砲撃を浴び、全滅した。
セヴェロドネツクとリシチャンスクを結ぶ橋がすべて破壊された現在、カーブを描いている川の流れが、ロシアの前進を妨げる天然の障壁となっている。
さらに、リシチャンスクは丘の上に位置しているため、ルハンスク州最後のウクライナ陣地となったこの都市を奪うのは、かなり苦しい戦いとなる。
米シンクタンク「戦争研究所」のアナリストらは、この紛争に関するブリーフィングを毎日発表している。6月24日には、「ロシア軍がウクライナ軍を包囲または孤立させることができなければ、ウクライナ軍はリシチャンスクの高台を占拠し、しばらくの間、ロシアの攻撃をはね返すことができるだろう」とした。

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しかし、ロシアはまさに、ウクライナ軍の包囲と孤立化に集中しているようだ。ロシア部隊は南から押し寄せており、街を目視できる距離まで接近していると主張している。
ロシアが支援する勢力の報道官は、リシチャンスクとセヴェロドネツクを守ろうとするウクライナ軍の試みについて、「無意味で無益」だとした。
ルハンスク州でロシアが支援する部隊の代表者の1人であるアンドレイ・マロチコ氏は、「私たちの兵士の前進速度では、(自称)ルハンスク人民共和国の全土はまもなく解放されるだろう」と述べた。
「私たちの部隊はすでに、リシチャンスクの市街地に入っている。だから、私たちはウクライナ軍のすべての動きを完全にコントロールしていると言える」
最終目標は何なのか
鍵となる問いは、ロシアは最終的に何を目指しているのかだ。
ドンバス地方を占拠し、ウクライナに停戦を受け入れさせ、ルハンスク州とドネツク州を併合し、国境を引き直す――というものだろうか。
多くのアナリストが指摘しているとおりにロシア軍が疲弊しているならば、これは妥当だ。
ロシアではそれらを「成功」だと、国民に示すこともあり得る。「特別軍事作戦」によって、ドンバス地方あるいはそこに残されているものを「解放」したと説明できる。
ロシアとしては、現実政治が重みをもつことを期待するかもしれない。平和と世界の安定のため、領土を失うことを受け入れるよう、ウクライナに圧力がかかることを望む可能性がある。
しかし、ウクライナはまず間違いなくそれを拒否する。そして最終的には、紛争は凍結となるだろう。
あるいは、プーチン氏が自分が始めたことを終わらせようと、南部全域を手に入れるか、あらためてキーウに攻め込むだろうか。
その答えを知っているのはプーチン氏ただ1人であり、自分の計画を誰かと共有しようとはしない。そのため、この「特別軍事作戦」がどのように終わり得るのかのヒントを探るなら、プーチン氏の「言葉」に注目するしかない。
6月初旬の演説で、プーチン氏は公然と自らをピョートル大帝になぞらえた。そして、ロシアのウクライナ侵攻と、3世紀ほど前の同大帝の領土拡大戦争を同一視した。
これは暗に、自らの戦争が土地の収奪だと認めたことになる。
プーチン氏は、「(国土を)取り戻し、強化することを、私たちも求められているようだ」と述べた。若い企業家たちを前に、プーチン氏はほほ笑みを浮かべていた。同氏がウクライナ侵攻について語っていたのは明らかだった。
ロシアは戦争当初、決定的なミスを犯した。ウクライナ国民の抵抗の意思と、ウクライナ軍の能力を見くびったのだ。
ロシアは首都に急いで攻め込み、大敗を喫した。これは痛恨の経験だったが、貴重な教訓でもあった。
ドンバス地方にはゆっくりと、しかし執念深く軍を進めている。これは、ロシアが失敗から学び、同じ過ちは繰り返さないと決意していることを示している。










