マクロン仏大統領、ルコルニュ氏を首相に再任命 政治的混乱続く

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ポール・カービー欧州編集長
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は10日、側近のセバスチャン・ルコルニュ氏(39)に首相復帰を要請した。ルコルニュ氏は6日、任期26日という短さで首相を辞任したばかり。フランス政界ではこの1週間、劇的な展開と混乱が続いている。
マクロン大統領はこの日、極右および極左の指導者を除く主要政党の代表者らと大統領府(エリゼ宮)で会談した。その数時間後に、ルコルニュ氏の再任命を発表した。
エリゼ宮は、マクロン氏が「ルコルニュ氏に組閣を命じた」と発表。大統領の側近は、ルコルニュ氏に「白紙委任」が与えられたことをうかがわる発言をしている。
エリゼ宮の発表後、ルコルニュ氏はソーシャルメディア「X」に長文の声明を投稿し、「大統領から託された使命を、義務感から受け入れる。年末までにフランスに予算を提供し、同胞の日常的な問題に対応するために、あらゆる手段を尽くす」と述べた。
ルコルニュ氏は今週フランスのテレビ番組に出演した際、自分を「兵士で修道士」と表現した。10日には、組閣に取りかかる準備を進める中で、「この使命を成功させるために全力を尽くす」と話した。
ルコルニュ氏が政府を成立させられるかは、依然として不透明だ。しかし、新首相は、来年度予算案を13日までに議会に提出する必要があるため、ルコルニュ氏に時間の猶予はない。

フランスではこの1年、国家債務を削減し、財政赤字を縮小する方法をめぐる政治的な対立から、首相3人のうち2人が退陣している。そのため、ルコルニュ氏が直面する課題は極めて大きい。
フランスの公的債務は国内総生産(GDP)の114%近くに達し、ユーロ圏ではギリシャ、イタリアに次いで3番目に高い水準となっている。また、今年の財政赤字はGDP比5.4%に達する見通しだ。
ルコルニュ氏が首相職を引き受ける条件として挙げた事項の中には、「フランスの財政を立て直す必要性から「逃られる者は誰もいない」という内容が含まれていた。また、マクロン大統領の任期終了まで残り1年半となる中で、ルコルニュ氏は、自分の政権に加わる者は大統領選への野心をいったん、棚上げする必要があると警告した。
マクロン氏が議会で過半数を持たない状況下で、国民議会における信任投票に直面することも、ルコルニュ氏の立場を難しくしている。
世論調査会社エラブが実施した最新の調査によると、マクロン氏の支持率は今週、過去最低の14%にまで下落した。
極右政党「国民連合(RN)」のジョルダン・バルデラ党首は、ルコルニュ氏の再任について、「エリゼ宮殿でこれまで以上に孤立し、現実からかけ離れた」大統領による「悪い冗談だ」と非難した。 RNは、9日の大統領と各党代表との会談に招かれなかった。
バルデラ氏はさらに、RNが選挙への恐怖だけを存在理由とする破綻した連立政権に対して、直ちに不信任決議案を提出すると表明した。 現在、RNは世論調査で首位を走っている。

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ルコルニュ氏に勝算はあるのか
ルコルニュ氏は今週すでに2日間にわたり、政府に参加する可能性のある政党と協議を行っている。そのため、組閣に向け、少なくとも今後の落とし穴を把握しているとみられている。
同氏は、9月9日に初めて首相に任命され、その後3週間をかけて組閣に取り組んだが、保守・共和党のブリュノ・ルタイヨー党首が閣僚人事の一部を批判したことで、政権は一夜にして崩壊した。
中道政党だけでは単独で政府を構成することはできず、昨年の選挙でマクロン大統領が議会の過半数を失って以来、同氏の政権を支えてきた共和党内にも分裂が生じている。
大統領選への野心を持つことで知られるルタイヨー氏は、ルコルニュ第2次政権には加わらないことを明言。中道派と保守派による「共通基盤」はすでに崩壊したと宣言した。ただし、同氏の党内の全ての議員がこの見解に同意しているわけではない。
一方で、中道派のルコルニュ氏は、左派政党にも支援を求めている。
左派の支持を得る手段としてルコルニュ氏は、2023年に成立した年金改革の一部の施行を延期する可能性があることを示した。この改革では、退職年齢が62歳から64歳に引き上げられた。

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この措置は、年金改革成立のため奮闘した中道派の主な協力者たちを怒らせる可能性がある。また、左派指導者らはマクロン大統領に左派から首相を選ぶよう要請していたが、大統領は応じなかった。
社会党のオリヴィエ・フォール第一書記は、「我々には何の保証も与えられていない以上、信任投票で首相を支持する保証も与えることはできない」と述べた。
共産党のファビアン・ルーセル書記長も、大統領との会談後に、「左派は真の変化を求めている。大統領の中道陣営から首相が選ばれるようでは、国民は受け入れない」と語った。
緑の党のマリーヌ・トンドリエ党首は、「マクロン大統領が左派にほとんど何も提示しなかったことに衝撃を受けた」と述べ、「このすべてが非常に悪い結果を招くことになるだろう」と警告した。
マクロン大統領と再任されたルコルニュ首相が、数百億ユーロ規模の政府の財政赤字削減を目指す一方で、フランス中央銀行のフランソワ・ヴィルロワ・ド・ガロー総裁は、政治的混乱が経済をさらに後退させると警告している。
仏中銀は、今年の経済成長率を0.7%と予測しているが、ヴィルロワ・ド・ガロー氏は、政治危機に伴う不確実性がフランスに0.2%ポイント分の追加成長を失わせたと述べている。
「フランスの多くの人々と同様、私はこの政治的混乱にうんざりしている」と、ヴィルロワ・ド・ガロー氏はRTLラジオで語り、「妥協の時だ。妥協は汚い言葉ではない。連立を組むことも含めてだ」と述べた。
ルコルニュ氏が政府の組閣に失敗すれば、さらなる不安定化が生じる可能性があり、それによってフランス経済はさらに打撃を受けることになる。











