英与党内で首相に退任予定の提示求める声高まる スターマー氏は演説で過ち認める

画像提供, PA Media
イギリスのキア・スターマー首相は11日、7日の地方選挙の結果は労働党にとって「厳しいもの」だったと述べ、政府が間違いを犯したと認めた。一方、自分を「疑う人々」が間違っていたと証明してみせるとして、続投の意向をあらためて示した。これまでに70人以上の労働党議員がスターマー氏の退陣を求めている。
労働党は今回、イングランドでナイジェル・ファラージ氏率いる野党・リフォームUKの躍進により、1500近い議席を失った。ロンドンなどの都市部では、野党・緑の党にも有権者の支持を奪われた。さらに、1世紀以上もの間、政治的優位を保ってきたウェールズ議会(定数129)では、わずか17議席という過去最悪の結果で終わった。
こうした結果を受け、労働党内ではスターマー氏の責任を問う動きが高まっている。首相の退陣を求める70人以上の労働党議員には、シャバナ・マムード内相も含まれている。ただし、閣内ではスターマー氏の続投を望む声が優勢だという。内閣は12日にも閣議を開く予定。
一方、党首選の実施を発議する構えを見せていたキャサリン・ウェスト議員は、スターマー氏の演説後、この主張を取り下げた。そのうえで、9月までに退任するようスターマー氏に求めた。
これまでの政策を擁護、EUとの関係強化を強調
労働組合のイベントで演説したスターマー氏は、「私に不満を感じている人がいる」、自分を「疑う人々」がいることを分かっていると認めた。
そのうえで、「私は彼らが間違っていると証明しなくてはならないし、そうする」と主張し、労働党が「大きな課題に正面から向き合い」、「大きな論争を展開していく」と約束した。
スターマー氏はまた、「もちろん、どの政府と同じように、私たちも過ちを犯してきた」と認めた。
一方で、「しかし、大きな政治的選択は正しかった。というのも、仮に他党の助言に耳を傾けていたなら、今ごろ私たちはイランとの対立に行き詰まり、国益に合致しない戦争に引きずり込まれていただろう。私は決してそのようなことはしない」と、これまでの政策を擁護した。
また、他党が「さらなる分断」と「怨嗟(えんさ)の政治」を求めていると非難。これらの政党は解決策を探しているのではなく、「誰かのせいにするため」その対象を探しているのだと述べた。
スターマー氏は、非難が自分に向けられるのは構わないとしたうえで、「しかし、次第にそうではなくなり、この国の別の人たちが非難の対象にされている」、「これは、わが国の魂のための闘いにほかならない」と語った。
ヨーロッパとブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)に話題を移したスターマー氏は、野党・リフォームUKのファラージ党首が2016年の国民投票当時、ブレグジットによってイギリスはより豊かになり、より安全になり、移民が抑制されると述べていたことを振り返った。
スターマー氏は、「彼はイギリス国民をだました」と述べ、「彼は単なるペテン師ではなく、日和見主義者だ」と批判した。
リフォームUKは今回の地方選挙で、労働党から多くの議席を奪い、1500議席以上を積み増している。
また、次回のEU首脳会議でイギリスは「新たな方向性」を打ち出すと表明。「(保守党)前政権は、欧州との関係を壊したことで特徴づけられていた」としたうえで、「この労働党政権は、欧州との関係を再構築し、イギリスを欧州の中心に据えることで定義される。そうすることで、私たちは経済でも、貿易でも、防衛でも、あらゆる分野でより強くなる」と述べると、会場からは拍手が起きた。
スターマー氏は新たな政策として、EUとの関係刷新の中心となる「意欲的な」制度を発表し、若者が欧州で働き、学び、生活できるようにすると述べた。
さらに、見習い制度や技術専門校、特別な教育的ニーズへの投資を「はるかに拡大する」と誓い、仕事探しに苦しむすべてののイギリスの若者に、「保証された」雇用、研修、または就業体験の機会を提供すると約束した。
また、公共利益の審査を条件に、政府に「ブリティッシュ・スティールの完全所有権」を取得する権限を与えるための「法案を水曜日(13日)に提出する」と発表した。
演説後の質疑で、BBCのクリス・メイソン政治編集長は首相に対し、今回の演説で自身の今後への懸念を払拭(ふっしょく)できたかと尋ねた。これに対しスターマー氏は、自分は「私たちが進むべき方向性」を示しているのだと強調した。
また、これが労働党にとって最後の機会なのかと問われると、自分が直面している課題の「巨大さ」を理解していると述べた。
党首選が実施された場合に党首の座を争うのかとの質問には、「私はこのイギリスのために闘う」と答えた。
9月までに退任をとウェスト議員、他の有力者の動向は
選挙結果を受け、党首選でスターマー氏に挑む用意があると表明していたウェスト議員は、労働党党首選に立候補する考えはもはやないとの認識を示す一方で、首相に対し、9月に退任するよう求めた。
声明の中で同氏は、今朝のスターマー氏の演説について「少なすぎるし、遅すぎる」と述べた。
そして、「9月に新党首を選ぶための選挙日程を首相が示すよう求める、労働党議員の名前を私は集めている。そのことを今、首相官邸に通知する」と付け加えた。
この日の労組イベントではアンジェラ・レイナー前副首相も演説し、選挙後の「ここ数日は厳しいものだった」と述べた。
党首選が実施されれば出馬するとみられているレイナー氏は、「私たちが今やっていることは機能しておらず、変える必要がある」と付け加え、「過ちを認めるだけで、それが正されなければ意味がない」と語った。
レイナー氏はまた、グレーター・マンチェスターのアンディ・バーナム市長の議員復帰を阻止した党の決定を批判し、これは、党指導部が正すべき間違いだ」と付け加えた。
かねて党首への野心を隠してこなかったバーナム氏は、今年2月に行われた下院の補欠選挙の際、労働党全国執行委員会に出馬を阻止された。今回の選挙結果を受け、バーナム氏の議員復帰と党首選出馬を望む声が高まっているが、そのためには党首選より先に、下院の補欠選が実施される必要がある。
ただし、同じく党首候補と目されているウェス・ストリーティング保健相に近い党内右派からは、スターマー首相はもっと速やかに退陣すべきだとする声が上がっている。早期の党首選実施は、バーナム氏の立候補の可能性を排除することになる。
一方、労働党の党首選挙対策委員長を務めるアナ・ターリー議員やルーシー・パウエル副党首、リサ・ナンディー文化相は、スターマー氏への支持を改めて表明した。
ナンディー文化相は、スターマー氏の演説について、若者が意識的に重視されていたとし、労働党は人々の生活を改善するために「利用可能なあらゆる手段」を用いると語った。
また、スターマー氏は立ち上がり、闘っていくと述べ、「彼の成功は、私たちの成功だ」と付け加えた。
労働党では「リフォームUKに立ち向かえない」と野党
保守党のケミ・ベイドノック党首は、スターマー首相の演説は「見ていて悲しいものだった」と述べた一方、党内で想定されている後継候補者についても、「答えを持っていない」と批判した。
ベイドノック氏は、「彼らは誰が車を運転するかで議論しているだけだが、全員が間違った方向に向かっているというのが、本当のところだ。未来像がまったくない」と語った。
さらに、「(イギリスには)指導力が必要だ。何かがひどく間違ってしまったと承知している人が、またしても演説をすれば済むというものではない」と述べた。
野党・緑の党のザック・ポランスキー党首は、首相の演説は、有権者がなぜ「圧倒的に労働党を拒否したのか」を理解していないことを示していると述べた。
ポランスキー氏は、「スターマー氏は、リフォームUKに立ち向かうことができないことを示した。彼は退くべきだ。リフォームUKを止められるのは、急進的な緑の党だけだ」と語った。
スコットランド自治政府のジョン・スウィニー第一大臣(首相に相当)は、労働党が各地で大きく議席を失ったことを受け、首相は「危うい立場」に置かれているとの考えを示した。
スウィニー氏は、スターマー氏の演説を「精彩を欠いたものだった」と評し、もはや在任期間も残り少ないと話した。
一部閣僚の秘書官が辞任
こうしたなか、一部の閣僚の議院内私設秘書官(PPS)が、スターマー氏の演説後に辞任を表明した。さらに、スターマー氏に退任時期を示すよう求めた秘書官も含め、6人が首相官邸によって交代させられた。
これには、党首候補とみなされるストリーティング保健相や、デイヴィッド・ラミー副首相のPPSも含まれている。
PPSは、閣僚が自身の補佐役として任命する無給の役職。イギリス議会の公式サイトによると、PPSは下院の一般議員の中から選ばれ、下院において閣僚の「目と耳」としての役割を果たす。











