日本、原子力エネルギー依存度を高める計画を決定 「福島事故後」の転換

福島第一原発の大型パイプの前を歩く人

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シャイマ・ハリル東京特派員

日本政府は18日、原子力エネルギーへの依存度を高める計画を閣議決定した。人工知能(AI)や半導体などの分野で増大する電力需要に対応するとしている。

閣議決定された「エネルギー基本計画」は、原子力エネルギーについて、「最大限活用する」としている。一方で、これまで掲げてきた「依存度を可能な限り低減する」という文言は削除されている。

同計画は経済産業省が作成。電源構成で原子力エネルギーが占める割合を、2040年までに20%にすべきだとしている。これは2023年(8.5%)の2倍以上になる。

日本では14年前の福島第一原発の大事故が、痛ましい記憶を呼び起こしながら、国全体に影響を及ぼし続けている。

2011年3月に発生した三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震は、津波を引き起こし、1万8000人以上の死者を出した。多くのまちが壊滅し、福島第一原発の原子炉建屋にも海水が押し寄せた。

日本は現在、14基の商業用原子炉を稼働させている。福島原発事故の前は54基を稼働させ、エネルギーの3割を原子力でまかなっていた。

今回の計画はまだ国会の承認が必要で、今後数カ月内に国会で審議される見通し。

日本は燃料の90%を輸入している。エネルギー基本計画に関して政府に提言を出した、自民党総合エネルギー戦略調査会の幹事長を務める山際大志郎衆院議員は、温室効果ガスの排出削減とエネルギーの自給のため、原子力に目を向ける必要があるとBBCに話した。

原発関連の反対デモ

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画像説明, 閣議決定された新たなエネルギー基本計画は原子力を「最大限活用する」としている。原発をめぐっては反対の声も根強い

山際氏は、ウクライナや中東での戦争で化石燃料の購入も難しくなっていると説明。エネルギー資源のない日本は、利用できるものは何でもバランスよく使う必要があると述べた。

また、国内各地にAIデータセンターや半導体工場ができることで電力需要が増しており、エネルギーの確保の必要性も増大していると付け加えた。

一方、専門家らからは、原子力エネルギーへの依存度を高めることで、リスクもコストも高まるとの指摘が出ている。

龍谷大学政策学部の大島堅一教授は、日本は高価なウランを輸入しなくてはならず、他国に依存することになるとBBCに説明。また、原発の数を増やせば、悲惨な事故の潜在リスクが高まるとした。

大島氏はさらに、20年前に地元の反対で原発建設計画が廃止された能登半島で、昨年元日に地震が発生したことに言及。もし原発があれば大事故が起きていたことは明らかだと話した。

福島原発の記憶

日本では原子力の話になると、福島第一原発のメルトダウン(炉心溶融)の苦い記憶が必ずよみがえる。

東京で暮らす女性はBBCの取材に、「福島の地震ではみんなひどい経験をした」と述べ、次のように続けた。

「(原子力エネルギー計画は)支持できるわけがない。政府には他のエネルギー源に頼ってほしい」

「母親として子どもたちのこと、子どもたちの安全のことを考える。将来何が起こり得るのか考えずにはいられない」

福島原発でのメルトダウンは、1986年のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故以降で世界最悪とされている。

2023年には、福島原発からの処理水の海洋放出を開始し、新たな論争が巻き起こった。安全性への懸念から、中国など日本の近隣諸国でも抗議の声が上がった

国連の国際原子力機関(IAEA)は、処理水は安全で、人々や環境への影響は「無視できる程度」だとした

環境保護団体「グリーンピース」は、今回の新たなエネルギー基本計画について、福島原発事故の影響が残る中で原子力エネルギーを推進するものであり「言語道断」だと批判。

「原子力エネルギーは、何万年も有毒なままであり、長期的な管理が必要な放射性廃棄物を生み出し、地震やテロなどのリスクを伴う。そうしたものに依存し続けることは正当化できない」とした。

専門家らは、政府の目標を達成するには、原子炉33基を再稼働させる必要があると指摘する。だが、現在の安全検査のペースや、一部地域での住民の反対運動を考えると、これは困難だ。

原発の多くは老朽化しており、安全に機能させるには新たな技術の導入が必要だ。

前出の山際氏は、原発がさまざまな場所にあり、それぞれに独自の安全対策やインフラが必要になることが最も難しい問題だと説明。一つずつ入念にチェックしなければならず、時間がかかるとした。

規制当局はここ何カ月かで、いくつかの古い原子炉について、運転の継続を認めている。

昨年10月には、国内最古の原発の高浜原子力発電所1号機に運転継続のゴーサインが出され、50年を超えて運転する国内初の原発となった。