米議会「大きくて美しい法案」を可決 トランプ氏公約の大型減税成立へ

屋外で開かれた支持者集会の壇上に立つトランプ氏。赤字に白で「USA」と書かれたキャップをかぶり、合衆国大統領印のついた演台に立ち、正面を指さしている

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画像説明, 選挙公約だった大型減税法案が議会を通過後、支持者集会に登場したトランプ米大統領(3日、アイオワ州デモイン)

アメリカ連邦議会は3日、ドナルド・トランプ大統領が推進する大規模な税制・歳出法案「一つの大きくて美しい法案」を可決した。与党・共和党内での攻防の末、トランプ氏は大統領選の中で掲げた主要公約実現のため、勝利を獲得した。

連邦議会下院(定数435)は長時間の審議を経て3日午後、賛成218、反対214の僅差で法案を可決した。上院(定数100)は2日に、上院議長を兼ねるJ・D・ヴァンス副大統領が投じた1票差で可決していた。

トランプ氏は、共和党が両院で多数を占める議会に対し、7月4日までに自分が署名できる形の法案を可決して届けるよう期限を設けていた。7月4日はアメリカの独立記念日。

法案の可決を受けてトランプ氏は3日夜、記者団に対し「この法案はこの国をロケットのように変身させる」と述べ、「これはこの国にとって素晴らしい法案になる」と歓迎した。トランプ氏は米東部時間4日午後5時に、法案に署名し、成立させる予定。

この法案は、食料支援や医療保険の削減、クリーンエネルギー関連の税控除廃止などによって歳出を抑制する内容。さらに、トランプ第1次政権による2017年の減税措置の恒久化、サービス提供者へのチップや残業代や社会保障受給者への課税廃止など、トランプ氏の主要選挙公約を実現する内容となっている。減税規模は10年間で4兆5000億ドル(約650兆円)と見込まれている。

また、国境警備、収容施設、移民取締官の強化に1500億ドル(約21兆円)、軍事費にも同じ額が割り当てられており、トランプ氏の「ゴールド・ドーム」ミサイル防空計画も含まれている。

可決された大型減税法案の財政への影響を示すグラフ。負担増になるものとして、減税措置延長(4.5兆ドル)、国防(1500億ドル)、国境警備強化(1290億ドル)を挙げ、赤色の帯で示している。負担減では、メディケイド(9300億ドル)、グリーンエネルギー(4880億ドル)、食費補助(2870億ドル)を挙げ、青色の帯で示している

議会予算局(CBO)は、この法案によって今後10年間で連邦政府の財政赤字が3兆3000億ドル(約477兆円)増加し、数百万人が医療保険を失う可能性があると試算しているが、ホワイトハウスはこれに異議を唱えている。

共和党議員の大半が賛成

ジョンソン下院議長が机に向かい、周りの共和党議員と握手している。机には、箱に入った法案と、法案を大統領へ送付するための書簡が議長の前に置かれている。議長に、別の議員がペンを渡そうとしている

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画像説明, 「一つの大きくて美しい法案」の可決を同僚議員たちと喜び、トランプ大統領へ送付するため書簡に署名しようとするジョンソン下院議長(3日、米下院)

採決後にマイク・ジョンソン下院議長(共和党)は勝ち誇った様子で本会議場を出て、党内の支持を固めるために「信念」が鍵となったと記者団に話した。

議長は共和党の議員団と共に並び、「私はここに立つ人々を信じていた」と述べた。さらに「中には付き合いやすい人もいる」と言い、「これは、最大限の敬意を込めて言っている」と付け加えた。

ジョンソン議長が説得に苦労した中には、チップ・ロイ議員(テキサス州)のように、直前まで法案に反対していた議員たちがいる。ロイ議員は、上院が前日に可決した法案を「とんでもないもの」と呼び強硬に反対していたが、下院採決時には賛成に転じた。

ロイ議員は「重要な点で良い結果に至ったと感じている」と述べたものの、下院は上院案に一切修正を加えていない。

共和党内ではロイ氏のように上院案に反発する声もあったが、最終的に造反したまま反対票を入れたのは、トーマス・マッシー議員(ケンタッキー州)とブライアン・フィッツパトリック議員(ペンシルヴェニア州)の2人にとどまった。

ジョンソン議長が法案の可決を宣言すると、数十人の共和党議員が議場で「USA! USA!」と唱和した。

ジョンソン議長は議長席に向かって立ち、法案可決を宣言し、議長用の小づちを右手に持ち振り上げ、まさにこれからたたこうとしている。後ろに星条旗の紅白の線が見える

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画像説明, 「一つの大きくて美しい法案」の下院可決を宣言し、つちをたたくジョンソン下院議長(3日、ワシントン)
下院の電光掲示板が賛成票数「216」を青、反対票数「214」を赤で表示している

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画像説明, 賛成216、反対214という採決結果を表示する電光掲示板
法案可決を喜ぶ共和党議員たちが議場内でまとまって立ち、カメラに向かって笑顔で親指を立てている

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画像説明, 法案可決を喜ぶ共和党議員たち

この大型減税法案が財政赤字にどう影響するのか懸念する声は共和党内でも根強く、同党内の票数が固まるまでには時間がかかった。

トランプ氏は東部時間3日午前0時過ぎには、自分のソーシャルメディアで「共和党員は何を待っているんだ??? 何を証明しようとしてるんだ??? MAGAは嫌がっている。これで君たちは票を失うことになるぞ!!!」と書いていた(MAGAは「アメリカを再び偉大に」運動の支持者の意味)。

民主党の抵抗

黒い電光掲示板に白字で議員の名前、賛成を意味する「Y」が緑で、反対を意味する「N」が赤字で表示されている

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画像説明, 議員ごとの賛成(Y)と反対(N)を示す下院の電光掲示板

法案の採決は、民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務(ニューヨーク州)の長時間の演説によって、大幅に遅れた。

下院には、政党の院内総務にのみ、本人が望む限り話し続けるのを認める「魔法の1分」と呼ばれる慣例があり、ジェフリーズ院内総務はこれを利用し、8時間45分にわたる下院史上最長の演説を行った。

その中でジェフリーズ氏は、法案がアメリカの貧困層に打撃を与えるものだと非難し、それだけに審議には「アメリカ国民のためにゆっくり時間をかける」よう求めた。

民主党は、この法案が何百万人もの国民から医療と食料補助を取り上げる代わりに、富裕層の税負担を減らすものだと批判している。

本会議場の演台に向かって立ち、長時間の演説を続けたジェフリーズ民主党院内総務。後ろでは民主党の同僚議員たちが立って拍手している

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画像説明, 法案採決前に8時間45分におよぶ演説をした民主党のジェフリーズ院内総務

ナンシー・ペロシ元下院議長(カリフォルニア州)は、「この日は、暗く、恐ろしい時代の幕開けだ」と述べ、法案を「極端な共和党の優先事項の危険なチェックリスト」と呼んだ。

ノースカロライナ州のデボラ・ロス議員は「少数の利益のため、大勢を痛めつける投票をした人たちは、恥を知るべきだ」と批判した。

アリゾナ州のヤサミン・アンサリ議員は「今は本当に悲しい気持ちだ」と述べ、テキサス州のマーク・ヴィーシー議員は共和党を「ひきょう者と混乱と汚職の党」だと非難した。