トランプ氏、イランは核合意で「時間切れが迫っている」と警告 ペルシャ湾に米軍増派

海を航行する空母

画像提供, Handout via Reuters

画像説明, 米空母エイブラハム・リンカーン(資料写真)

ヤロスラフ・ルキフ、キャスリン・アームストロング

アメリカのドナルド・トランプ大統領は28日、イランに対し、核計画をめぐる合意交渉を行うための「時間はなくなりつつある」と警告した。こうしたなか、米軍は湾岸地域で戦力を着実に増強している。

トランプ氏は、アメリカの大規模な海軍艦隊に言及して、「巨大な艦隊」が「大きな力、熱意、そして目的をもって迅速に」イランに向かっていると述べた。

これに対しイランのアッバス・アラグチ外相は、イラン軍が「引き金に指をかけた」状態で、陸上でも海上でもいかなる侵害に対しても「即時かつ強力に対応する」準備ができていると語った。

イランは、自国の核計画は完全に平和目的だと主張しており、核兵器開発が狙いだとするアメリカとその同盟国の非難を繰り返し退けている。

トランプ氏は今月初め、イランで起きた反政府抗議で残虐かつ前例のない弾圧の対象となった人々を支援するために、アメリカが介入すると約束していた。

この抗議活動は通貨リアルの急落を受けて始まった後、宗教指導者らの正統性をめぐる危機へと急速に発展した。

この時、トランプ氏は「支援は向かっている」と述べていた。その後、デモ参加者の処刑が停止されたという確かな情報を得たとして、態度を変えていた。

アメリカに拠点を置く人権活動家通信(HRANA)は、昨年12月末に騒乱が始まって以来、5925人の抗議参加者を含む6301人以上の死亡を確認したと述べた。また、約3週間に及ぶインターネット遮断にもかかわらず寄せられた、さらに1万7000件の死亡報告について調査を進めているとしている。

ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は(IHR)は、最終的な死者数は2万5000人を超える可能性があるとしている。

核をめぐる相違

トランプ氏の発言は、イランの核開発計画に焦点を当てた内容になった。

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「イランが迅速に『交渉の場に来て』公正な合意を交渉することを望む──核兵器は禁止だ」と記した。

また、湾岸地域に配備されている米海軍部隊について、アメリカがヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束する前に、同国に派遣した部隊よりも大規模だと主張。

この部隊は「必要であれば、迅速かつ暴力的に任務を遂行する用意があり、意欲があり、能力がある」と書いた。

さらに、昨年6月にイランとイスラエルの間で12日間続いた戦争の最中に、アメリカがイランの主要な核施設を爆撃したことにも触れ、「次の攻撃ははるかに深刻なものになる。再びそうした事態を招くな」と警告した。

28日に米連邦上院外交委員会で証言したマルコ・ルビオ国務長官は、イランの「体制はこれまでで最も弱体化している可能性が高い」と述べた。

「イランは、抗議者たちが訴える根本的な不満、つまり経済の崩壊に対処する手段を持っていない」とも、ルビオ氏は語った。

「今われわれにあるのは、イランによる米兵への脅威に備えるため、この地域に戦力を展開する能力だ」

イランのアラグチ外相はトランプ氏の発言を受け、「イランは、イランの平和的な核技術の権利を保障し、核兵器を一切持たないことを保証する、互恵的で、公正で、衡平な核合意を常に歓迎してきた。対等な立場で、強制、脅迫、威嚇から自由な形で」と述べた。

「そのような兵器は、当国の安全保障上の計算には存在せず、イランはそれらを取得しようとしたことは決してない」と、アラグチ氏は付け加えた。

イランのカゼム・ガリババディ外務次官は、「メッセージのやり取り」があるものの、アメリカとの交渉は現在進行していないと語った。

米軍、中東地域に相次いで展開

湾岸地域に配備されている米軍部隊を示した地図。ヨルダンにはムワファク・サルティ空軍基地に戦闘機が配備されている。バーレーンにはハリファ・ビン・サルマン港に駆逐艦と戦闘艦が配備されている。カタールにはアル・ウデイド空軍基地に新たな防空システムが導入された。また、インド洋には空母エイブラハム・リンカーンが主導する艦隊がいる

BBCヴェリファイ(検証チーム)は、オープンソースのツールを用いて、最近の米軍の中東地域への展開の一部を追跡した。人工衛星画像には、少なくとも15機の戦闘機が、ヨルダンのムワファク・サルティ空軍基地に到着した様子が写っていた。

また、ヨルダン、カタール、そしてインド洋のディエゴガルシア島にある基地に到着する航空機の数も増加している。

BBCヴェリファイは、中東に到着した数十機の輸送機と空中給油機を特定している。また、旅客機追跡サイト「フライトレーダー24」では、ドローンとP8ポセイドン偵察機が、イランの空域付近で運用されていることが確認されている。

BBCヴェリファイが取材した米国防筋は、トランプ氏が「艦隊」と表現した海軍部隊について、空母エイブラハム・リンカーンを旗艦とした部隊が中東に到着していると認めた。

「フライトレーダー24」では26日、輸送機オスプレイが湾岸地域の沖合地点を出発し、オマーンに着陸した記録が確認された。これは、空母がこの周辺で活動している可能性を示唆している。

英防衛コンサルタント会社シビラインの主席アナリスト、メガン・サトクリフ氏は、「過去2週間で、アメリカは海軍と航空戦力を中東に急増させ、同地域での態勢を大幅に強化した」と述べた。

人工衛星画像には、少なくとも2隻の誘導ミサイル駆逐艦と3隻の戦闘艦が、数カ月にわたりバーレーンに停泊している様子が映っている。

一方、イランが、昨年就役したドローン空母「シャヒド・バゲリ」をイラン沿岸沖に展開していることが、人工衛星画像から明らかになっている。

海に浮かぶ空母を真上から撮影した写真

画像提供, Maxar Techn

画像説明, 2024年12月に人工衛星から撮影されたイランのドローン空母「シャヒド・バゲリ」

2015年の世界主要国との核合意でイランは、商業用原子力発電所の燃料に必要な水準である3.67%を超える濃縮度でウランを濃縮することを許されず、フォルドウ施設で15年間いかなる濃縮活動を行うことも認められなかった。

しかし、トランプ氏は大統領1期目の2018年、この合意が核兵器への道筋を阻止するには不十分だとして破棄し、アメリカの制裁を復活。これがイラン経済をまひさせた。

イラン政府はこれに対し、合意に基づく制限、特に濃縮ウランの生産に関する制限をますます逸脱することで報復した。濃縮ウランは原子炉燃料として利用されるが、核兵器の製造にも使用される。

米当局者らは、新たな核合意の一環として、イランがウラン濃縮を停止し、ミサイル計画を制限し、中東で代理勢力の支援をやめる必要があると述べていると、米メディアは報じている。

昨年6月の攻撃でアメリカは、フォルド、ナタンツ、イスファハンの3か所の濃縮施設を標的にした。

米当局者は当時、この「ミッドナイト・ハンマー作戦」が、イランによる核兵器開発の可能性を大幅に後退させたと述べた。

しかし、イラン国営放送のハッサン・アベディニ政治部副部長は、同国が「施設からすでに物質を搬出していたため、大きな打撃を受けたわけではない」と主張した。

報復としてイランは、カタールのアメリカ軍基地にミサイルを発射。トランプ氏はこの攻撃を「非常に弱い」もので「予想されていた」と述べた。

追加取材:ジョシュア・チザム、マット・マーフィー、アレックス・マリー、バーバラ・メッツラー、ソフィア・フェレイラ・サントス