英内相、「難民条約」は時代遅れと 国連は「命救うことに変わりない」と反論
ベッキー・モートン政治記者

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イギリスのスエラ・ブラヴァマン内相は26日、国連の「難民の地位に関する条約」について、もはや目的にそぐわないなどと述べた。この発言に批判があがっている。
ブラヴァマン内相は、ゲイや女性であることを理由に差別を恐れているというだけでは、難民保護を受ける資格はないと述べた。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民条約の規則を「強化」すべきだとのブラヴァマン氏の求めを一蹴。
1951年に定められた難民条約は「命を救う手段であることに変わりはない」と、UNHCRは主張した。
イギリスを含む146カ国が締約するこの条約は、UNHCRの取り組みの基礎となるもので、難民の定義と、その待遇に関する最低基準を定めている。
UNHCRは声明で、「必要なのは改革でも、より制限的な解釈でもなく、この条約とその根底にある責任分担の原則をより強固に、より一貫性をもって適用することだ」と述べた。
さらに、「個人が性的指向や性自認を理由に、迫害される危険にさらされている場合、彼らが安全と保護を求めることができることが、極めて重要だ」と付け加えた。
イギリスでの亡命希望者の増加や、亡命申請が滞っていることに対する「適切な対応」は、意思決定プロセスのスピードを加速させることだと、UNHCRは主張した。
ブラヴァマン氏の発言への批判は、慈善団体からも上がっている。貧困問題を抱える女性や少女のための慈善団体「アクション・エイドUK」は、当該発言は「男女平等と人権に対する直接的な侮辱」だとしている。
採択時とは「時代がまったく異なる」
難民条約は第2次世界大戦後に作成された。難民は生命あるいは自由に対する脅威に直面している国に戻されてはならないという原則を、その中心に据えている。
しかし、25日に米シンクタンクで講演したブラヴァマン氏は、この条約が採択された時とは「まったく異なる時代を我々は生きている」とした。
米ワシントンにある右派シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」の聴衆に対し、迫害というよりも「『差別』の定義に近いもの(から逃れる人)を支持する」動きが見られるようになったと述べた。
ブラヴァマン氏は「世界には、ゲイであることや、女性であることが極めて困難な広大な地域」が存在することを認め、「個人が迫害を受けている場所で、我々が聖域を提供するのは正しいことだ」と述べた。
「しかし実際のところ、単にゲイであること、あるいは女性であること、そして出身国での差別を恐れているということが、保護資格を得るのに十分な理由になるのであれば、我々は亡命制度を維持することはできない」
同性愛を犯罪と定める法律が存在する国は64カ国あり、その半数近くがアフリカ諸国だ。

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世界の大半の国がこの条約を締約していることを考えると、ブラヴァマン氏が条約の改革を推進できる可能性は低い。
それでも今回の発言は、小さな船に乗って英仏海峡を渡ろうとする人々を止めようとする英政府に、移民に関して厳しいアプローチを取ろうとする決意があることを浮き彫りにしている。
人権団体アムネスティ・インターナショナルUKのサシャ・デシュムク最高経営責任者は、「難民条約は国際的な法体系の礎であり、我々は同条約に対するこの攻撃を、冷笑主義と外国人嫌悪の表れであると非難する必要がある」と述べた。
英最大野党・労働党は、ブラヴァマン氏が「おおげさに振舞っており」、ゲイと女性を「スケープゴート」として利用していると述べた。
身内の与党・保守党からも、反発があがっている。長年、ロンドン議会議員を務め、保守党のLGBT+(性的少数者)グループのパトロンでもあるアンドリュー・ボフ氏は、「ひどく滞っている亡命申請」から目をそらすために「犬笛」(賛同を得たい特定の集団にしかわからないメッセージ)と「被害者避難」を使っているとして、ブラヴァマン氏を非難した。
ある保守党議員は名前を伏せることを条件に、ブラヴァマン氏の講演は「ひどい」ものだったとBBCに語った。また、首相がブラヴァマン氏を「排除」しない限り、「首相の印象が悪くなる」危険性があるとした。
首相官邸は、ブラヴァマン氏が講演を行うことを承認していたという。
ほかの保守党メンバーは、ブラヴァマン氏を支持する姿勢を見せている。
下院内務委員会のティム・ロートン氏(保守党)は、ブラヴァマン氏の主張には「一理ある」と述べた。
「イギリスは、全世界から来る人のための難民キャンプにはなれない。だからこそ、2020年代にこれらの国際協定がどのように機能するかを、正確に検討する必要がある」と、ロートン氏はBBCに語った。
「多文化主義」を攻撃
ブラヴァマン氏はまた、今回の講演で「多文化主義という誤った独断的考え」を攻撃した。
「多文化主義は入ってきた人に統合を要求しない」、「多文化主義が失敗に終わったのは、ほかの人達が私たちの社会に入ってくることを認め、その社会の中で並行して異なる生活を送ることを許したからだ」と、ブラヴァマン氏は述べた。
「極端な場合では、彼らは社会の安定を損ない、安全を脅かすことを目的とした生活を追求する可能性もある」
モーリシャスとケニアからイギリスに移住した両親を持つブラヴァマン氏は、「2人とも心から、イギリスの価値観を受け入れることを承諾した」とした。
ブラヴァマン氏がワシントンを訪問し、このような迫力のある講演を行うことを決めたという事実から、同氏に国の指導者になるという野心があるとの見方が生まれることは避けられないだろう。
ブラヴァマン氏は昨夏の保守党党首選に出馬したものの落選した。次の総選挙でリシ・スーナク首相が敗れた場合、再び立候補する可能性は高い。






