カンボジア総選挙、与党が圧勝の見通し 首相は近く長男に権力移譲か

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カンボジアで23日、総選挙の投票があった。与党カンボジア人民党(CPP)は投票締め切りの数時間後、予想の通り圧勝を宣言した。投票率は80%を超えた。
カンボジアは、フン・セン首相(70)が独特の強権的なスタイルで38年間、政権を握り続けている。
唯一の対抗勢力、野党キャンドルライト党は5月、手続き上の理由で今回の選挙への参加が禁じられた。他の17政党は参加が認められたが、どれも小規模で知名度がないことから、与党を脅やかすには至らなかった。
今回の選挙では、フン・セン氏の長男のフン・マネット氏(45)が立候補し、当選が確実視されている。
今後数週間以内に、フン・マネット氏が父親の後を継ぎ、長年準備されてきた権力の移譲が行われるとみられている。そのため、この日あったのは選挙よりも「戴冠式」のように感じられたと、首都プノンペンで取材しているBBCのジョナサン・ヘッド東南アジア特派員は報告した。
亡命中の元閣僚で、2017年に解散を命じられた野党カンボジア救国党(CNRP)の幹部だったムー・ソチュア氏は、今回の選挙を「不正選挙とさえ言えない」と評した。
「『選抜』と呼ぶべきだ。フン・センは、自ら率いる党が息子を次期首相に選び、フン王朝が続くことを確実にした」
一部の投票所では、投票用紙が汚損などされるケースが目立った。ヘッド特派員は、有権者が野党への支持を表明できる唯一の安全な方法だったのだろうと伝えた。

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フン・セン氏は、アジアで強大な権力を維持し続けている1人だ。ヘッド特派員によると、同氏は策略に富む抜け目ない政治家と評され、巧みに相手を出し抜いてきた。カンボジアより圧倒的に大きな投資国である中国と、この地域で影響力を取り戻そうとしている欧米を、上手に対抗させてきた。
しかし、過去には選挙で敗れそうになったこともある。与党内の派閥抗争や、カンボジア経済の急激な悪化で、立場が脅かされる可能性もある。そのため、指導者を交代し、自分の業績を固めようとしていると、ヘッド特派員は解説する。


フン・セン氏は、平和と繁栄の実現を、政権の正当性の主な理由としてきた。カンボジアは1998年以降、最も急速な経済成長を遂げている国の1つ。
しかし、富がごく少数の一族に偏在した形での成長モデルになっている。低所得国の道路を、不釣り合いなほど多くの超高級車が行き交う。天然資源の貪欲な搾取が奨励され、多くの庶民は現政権では暮らしが良くならないと感じている。
プノンペン郊外低地に点在する浅い湖の近くでは、プラク・ソピープ氏の一家が立ち退きを命じられている。この家族は釣りや野菜の栽培で25年間暮らしてきたが、湖の大部分は今や不動産開発業者によってがれきで埋め尽くされている。
ソピープ氏はヘッド特派員に、いつから住んでいたのか示す当局の書類と、国有地を不法占拠しているとして裁判所に召喚された書類を見せた。彼女は無力感と怒りを感じている。こうした人は彼女だけではない。


土地問題は、カンボジアで最も不満に火が付きやすい問題の1つだ。クメール・ルージュによる革命で、すべての土地権利書が破棄された。
内戦の終結後は、何百万ヘクタールもの土地が商業開発に割り当てられ、フン・セン氏に連なる多くの政治家や企業が大金を手にした。
裁判所が、大きな力をもつ利害関係者に不利な判決を出すことはほとんどない。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルは、カンボジアの腐敗度を180カ国中150位としている。アジア太平洋地域でカンボジアより順位が低いのは、ミャンマーと北朝鮮だけだ。
「フン・センはいつも『ウィン・ウィン政策』を語る」と、ソピープ氏は言う。「しかし、勝つのはフン・センだけだと感じている。私たちは立ち退きを迫られ、平穏な気分ではいられない。この土地に住む私たち本当のカンボジア人は、開発の名のもとに苦しめられている」。
カンボジアの有権者の半数は35歳未満だ。与党CPPはそれらの世代を引き付けるため、フン・マネット氏や若い党指導者ら、巧みなソーシャルメディア戦略をもつ人々に今年の選挙運動を任せた。
しかし、ほとんどのカンボジア人は内戦やクメール・ルージュを直接知らない。法学部卒で環境活動家の男性(23)は、CPPの古い選挙戦略はもう説得力をもたないと言う。
「フン・マネットの最大の挑戦は、私の世代がクメール・ルージュのトラウマをもつ以前の世代とは大きく異なるということだ」
「子どものころから、与党があの悲劇を思い出させようとするのを見てきた。与党が平和をもたらしたのだから、私たちは与党を支持すべきだという主張だ。でも、その主張はだんだん効果を失っている。与党がそれを持ち出すたびに、若い世代は彼らを馬鹿にする。同じことを30年間も繰り返しているからだ」
フン・セン氏は荒っぽい、時には無法者のような姿勢でカンボジアを率いてきた。息子のフン・マネット氏はそれよりソフトで繊細なものへと、統治スタイルを変えることができるだろうか。同氏は欧米で教育を受け、軍隊を率い、長年父親のそばで見習いをしてきたが、まだ政治の要職を務めたことはない。
彼と一緒に、ティア・バン国防相やソー・ケン内相など、フン・セン氏と同世代の有力者の息子たちも、父親の後任として閣僚入りするとみられている。権力は同じ一族が握り続けるが、代替わりによって、実際に権力を手にするのは不慣れな新顔だ。
カンボジアにとって今後数年間は、デリケートで、危険な時期にすらなり得る。ヘッド特派員は、こう指摘している。







