バイデン氏、気候変動対策や税制改革の大型法案に署名

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画像説明, バイデン米大統領は法案への署名を「歴史的」と表現した

アメリカのジョー・バイデン大統領は16日、主に富裕層を対象に増税を実施しながら医療費と気候変動の問題に取り組むことを狙った、7000億ドル(約94兆円)規模の法案に署名した。

この法律では、気候変動対策に、米政府としては過去最大の3750億ドルを投じる。また、処方薬の価格抑制という、議会の数十年来の約束を実現する措置を講じる。

与党の民主党は当初、3.5兆ドル規模の広範な法案を構想していた。最終的にはそれより小規模になった。

バイデン氏は、法案への署名を「歴史的瞬間」だと表現。この法律について、長い間停滞していた国内政策の「最後の1ピース」だとした。

バイデン氏が主要政策課題に位置付けていた今回の法律が成立したことで、11月の中間選挙を前に、政権与党に弾みがつく可能性がある。中間選挙では、民主党が議会でさらに2年間、主導権を握り続けられるかが決まる。

気候変動対策

今回の法律は、企業に対して温暖化ガス排出量の削減を義務付けはしない。一方で、企業が再生可能エネルギーに投資する際に税制面で優遇し、電気自動車の購入やエネルギー効率を高める住宅整備をする人を金銭的に支援する。

コンサルタント会社ロジウム・グループは、この法律により、アメリカの排出量は2030年までに最大42%減ると予測している。現行の対策では削減幅は35%となっている。

気候変動対策への支出としては前例のない規模だが、改革の多くは少なくともあと2年は実施されないため、新たな取り組みがどう機能するのか疑問が残る。

例えば、自動車業界によると、電気自動車に対する税控除は現在市場に出ているほぼすべての選択肢を無効にする価格上限が設定されているという。

Brett Reinford

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画像説明, 酪農家ブレット・レインフォードさんは、農場からのメタンの排出を減らしたいと考えている

一方、ペンシルヴェニア州の酪農家ブレット・レインフォードさん(36)は、今回の法律に含まれている助成措置を歓迎。一家の牛の農場がメタン排出を減らすのに役立てたいと話した。

「政府からの支援があれば、こうしたプロジェクトの多くは、経済的にもっと意味のあるものになる」

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医療費とインフレ対策

今回の法律には、65歳以上の高齢者を対象とした医療保険制度「メディケア」で提供される一部の処方薬について、政府に価格引き下げの交渉を認めるという画期的な内容も盛り込まれている。

米議会予算局(CBO)の試算では、今後10年間で何千億ドルもの節約になるとされる。

法律はインフレ抑制法(IRA)と名付けられたが、ペンシルヴェニア大学の経済学者とデータ科学者らの分析によると、インフレに対する測定可能な効果はゼロだという。

同法は、法人税を最低15%に設定。民主党は、年収40万ドル以下の人には増税にならないと誓っている。

しかし議会予算局は、年収40万ドル以下の人について、これまでより税金を200億ドル多く支払うことになると分析している。

同法には、内国歳入庁(IRS)が税務署員を数万人規模で増やすための予算約460億ドルも含まれている。

野心的な案を削除

バイデン氏は法案に署名した際、「(野党の)共和党議員は全員この法案に反対票を投じた」と述べた。

一方、共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は、今回の法律について、「増税、エネルギー料金の上昇、IRSの強引な監査を意味する」と批判した。

法案にはいくつかの野心的な案が含まれていたが、最後の数週間で削除された。プライベート・エクイティー企業の税の抜け穴をふさぐ案や、糖尿病治療薬インスリンの価格に上限を設定する案などだ。

このことは、トレヴァー・ミルトンさん(21)のような人たちを失望させた。

ワシントンで建設作業員として働くミルトンさんは、12歳のときに1型糖尿病と診断された。毎月、血糖値の調整に欠かせないインスリンに約210ドルを支出している。

「ただ生きていくためだけに、この薬にこんなに払わなければならないなんて、いつ考えても言葉を失う」と、ミルトンさんはBBCに話した。