イスラエル、ネタニヤフ氏が退陣 ベネット新政権が発足

Benjamin Netanyahu and Naftali Bennett in the Knesset (13 June)

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画像説明, ベネット氏(右)がネタニヤフ氏(左)に替わって首相に就任した(13日)

イスラエルの国会は13日、右派国家主義者のナフタリ・ベネット氏(49)が率いる新たな連立政権を承認した。これにより、12年間首相の座にあったベンヤミン・ネタニヤフ氏は退陣した。

ベネット氏は新首相に就任。連立合意により、任期は2023年9月までとなる。その後2年間は、中道派政党イエシュ・アティドのヤイル・ラピド党首が首相を務める予定。

この日の議会では、賛成60、反対59の1票差で新政権が承認された。主義主張が多様な政党で構成された、類のない連立政権となる。

ベネット氏は、新政権は「全国民のために仕事をする」とし、教育、医療、官僚主義の改革を優先すると表明した。

また、「誰も不安を感じないよう、できることはすべてやる(中略)今夜、祝福したい気分の人には、他人の痛みの上で喜んではいけないと言いたい。私たちは敵ではない。一つの国民だ」と呼びかけた。

イスラエル首相として歴代最長で、同国政界で圧倒的な力を誇ってきたネタニヤフ氏は、右派政党リクードの党首にとどまり、野党勢力のリーダーとなる。

ネタニヤフ氏は国会で、「私たちは復活する」と宣言し、強気の姿勢を保った。ただ、投票後にはベネット氏に歩み寄り、握手を交わした。

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パレスチナ側の反応

一方、イスラエルと対立するパレスチナの代表らは、新政権の発足に無関心な態度を見せている。

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、「これはイスラエルの内政問題だ。私たちの立場は常に鮮明で、1967年の境界に基づく、エルサレムを首都とするパレスチナ国家を求める」と主張。

パレスチナ・ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスの広報担当は、「(現状は)占領であり植民地だ。私たちは権利を取り戻すため、力をもって抵抗すべきだ」と述べた。

アメリカのジョー・バイデン大統領はベネット氏を祝福し、協力を楽しみにしているとするメッセージを送った。

長期政権の終えん

ネタニヤフ氏は1996~1999年、2009~2021年の2度にわたって計5期、首相を務めた。

2019年4月の総選挙では、新たな連立政権の樹立に必要な支持を集められなかった。その後、総選挙が2回繰り返されたが、いずれも政権を発足させることができなかった。

その3回目の総選挙の後、当時の野党トップのベニー・ガンツ氏と連立政権を組んだが、やがて対立。今年3月に改めて総選挙が実施された。

リクードは第一党となったが、ネタニヤフ氏はまたも政権を樹立できず、2位につけたイエシュ・アティドのラピド党首が組閣を任された。

Anti-Netanyahu demonstrators outside parliament in Jerusalem for the vote (13 June)

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画像説明, ネタニヤフ政権に反対のデモが国会の外で起きた(13日)

ネタニヤフ氏の首相続投への反対は、左派や中道に加え、イデオロギー的にはリクードに近いヤミナなど右派政党からも強まった。

ヤミナは3月の総選挙で7議席の5位にとどまったが、その支持の行方が政界再編の鍵となった。ラピド氏は数週間の協議を経て、ヤミナを連立に組み入れることに成功。ネタニヤフ氏を首相の座から下ろすことだけを目的とした協力態勢だった。

8党による連立政権(計61議席)の樹立は6月2日に合意に至った。さらなる総選挙実施が決まる数時間前のことだった。この合意で、ネタニヤフ氏の退陣は実質的に決まった。

新政権の特徴と前途

ベネット新首相が率いる政権は、イスラエルの73年にわたる歴史で前例のないものとなる。

参加政党によって政治思想は大きく異なり、アラブ・イスラム主義政党ラアムも加わっているのが最大の特徴だ。過去最多の女性大臣9人の就任も見込まれている。

ラアムや非アラブ系イスラエル人でつくる左派政党と、ユダヤ人のヨルダン川西岸への入植を強く支持する右派政党のヤミナや「新しい希望」などが、パレスチナ政策などをめぐって衝突する可能性がある。

また、社会問題に対する立場も異なる。いくつかの政党は同性婚など同性愛者の権利の促進を求めている一方、イスラム主義のラアムは反対の立場だ。

宗教的な制限の緩和を望んでいる政党が複数ある一方で、国家主義的な宗教政党のヤミナは、これを認めないことが予想される。

ベネット氏は、合意が可能な分野で新政権としての仕事を集中的に進める方針を示している。経済、新型コロナウイルス対策などがそれに当たる。

ベネット氏は最近、「誰もイデオロギーを捨てる必要はない」、「しかし、全員が夢の実現を先延ばしにしなくてはならないだろう(中略)できないことを議論するのではなく、実現できることに集中していく」と表明した。

BBCのトム・ベイトマン中東特派員は、新政権の政治的立場はこれまでにない幅広さだとし、それゆえ、これまでにない不安定な政権になりうると説明。ベネット氏は連立の維持に多大な努力を払うことになるだろうとした。