BBCはダイアナ元妃インタビューで「欺いた」 調査委が報告書公表

フランチェスカ・ジレット、BBCニュース

Princess Diana and Martin Bashir

画像提供, BBC/Reuters

画像説明, ダイアナ元妃と、インタビューをしたバシール元記者

BBCが1995年に放送したイギリスのダイアナ元妃(故人)のインタビューについて、BBCの独立調査は20日、「誠実さと透明性の高い基準」を満たしていなかったと結論付ける報告書を公表した。

調査報告書によると、インタビューをしたマーティン・バシール元BBC記者(58)はインタビュー実現のため、「欺瞞(ぎまん)」的な行動を取り、書類を偽造した。

また、BBCが1996年に実施した内部調査は「ひどく役に立たない」ものだったとした。

BBCとバシール氏はともに謝意を表明し、BBCはダイアナ元妃の息子のケンブリッジ公爵ウィリアム王子と、サセックス公爵ハリー王子に謝罪文を送った。

BBCは、調査報告書で「明らかな不手際」が認められたとし、問題になった当時にもっと徹底して事実を追求すべきだったとした。

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BBCは、ダイアナ元妃の夫だったチャールズ皇太子と、元妃の弟のスペンサー伯爵にも謝罪文を送付した。また、1996年のBAFTA(英映画テレビ芸術アカデミー)テレビ賞など、当該インタビューで受けたすべての賞を返上する。

バシール氏は文書の偽造は「ばかな行為だった」とし、後悔していると述べた。しかし、インタビューを受けるという元妃の決心には影響を及ぼさなかったとした。

元判事のダイソン卿が率いた調査では、以下のことがわかった。

  • バシール氏はダイアナ元妃に接近するために銀行明細書を偽造し、BBCの規則に大きく違反した
  • 同氏はスペンサー伯爵がダイアナ元妃に自らを紹介してくれることを期待し、伯爵に偽造文書を見せて信頼を得ようとした
  • そうして同氏はダイアナ元妃に近づき、インタビューを受けるよう説得した
  • インタビューに対するメディアの関心が高まると、BBCはバシール氏がインタビューするに至った経緯を知りながら隠ぺいした。ダイソン卿は、BBCがそうすることで、「特長としている、誠実さと透明性の高い基準を満たさなかった」とした
  • ダイアナ元妃は1995年の手紙で、この問題について「後悔はない」と書いた(手紙は報告書で証拠として示された)

BBCの番組「パノラマ」で放送されたダイアナ元妃のインタビューは、BBCの大スクープだった。その中で元妃は「この結婚には3人が存在していた」と発言。それが広く知られるようになった。

現役の王族がこれほどオープンに王室の生活について語ったのは、初めてのことだった。視聴者はダイアナ元妃が、チャールズ皇太子との不幸な結婚や不倫、過食症について話す姿を目にした。

しかしその後、スペンサー伯爵は、バシール氏がインタビューの機会を得た方法を問題視した。

伯爵が疑念を公にすると、BBCは昨年、独立調査を委託した。そして、調査報告書が20日、公表された。

「大事な人を信じられなくなった」

伯爵はBBCの「パノラマ」で、「皮肉なのは、1995年8月31日にマーティン・バシールに会ったことだ。そのちょうど2年後に彼女(ダイアナ元妃)は死んだ。これら2つの出来事を、私は区別している」と述べた。

伯爵はまた、1995年9月にバシール氏をダイアナ元妃に紹介した時から、「だれもが信頼を失い、ダイアナは本当に大事だと思っていた人たちを信用できなくなった」のは「とてもはっきり」していたと話した。

ダイアナ元妃の個人的な秘書だったパトリック・ジェフソン氏は、インタビューが「王室との間で残っていたつながりを壊した」と述べた。

ジェフソン氏はさらに、「彼女(ダイアナ元妃)を長年導き、守ってきた王室の支援構造」を元妃は失ったと説明。そのことで、「心では彼女を大事に思わない人や、彼女を適切に世話することができない人を、必然的に近づけてしまった」と付け加えた。

ダイソン卿は、ジェフソン氏を含む人々が報酬を得てダイアナ元妃を監視していると誤って示唆する偽造の銀行明細を、バシール氏がスペンサー伯爵に見せたとし、それによって伯爵をだましたと認定した。

また、バシール氏がその後、偽造書類は誰にも見せていないとBBC幹部にうそをついたとした。

また、バシール氏の説明の大部分について、「信じ難く、信頼できず、一部は不誠実だ」と表現した。

バシール氏の主張

バシール氏は声明で、書類の偽造について謝罪した。だが、インタビューのことは今も「大変誇りに」思っているとした。

また、「銀行明細はインタビューを受けるというダイアナ元妃の個人的な選択に、何ら影響を及ぼさなかった」と主張。

「調査で提出された、彼女の手書きの証拠が、このことをはっきり示している。ダイソン卿に提示された他の強力な証拠も、それを補強している」とした。

調査報告書は、ダイアナ元妃がインタビュー放送後に書いた手紙を初めて公表した。

元妃は「マーティン・バシールはいかなる書類も私に見せず、それまで私が知らなかった情報を私に提供することもなかった」と記していた。

The letter from Diana to Martin Bashir from 1995

画像提供, Dyson Investigation

画像説明, ダイアナ元妃が1995年にバシール氏に宛てて書いた手紙。ダイソン卿によると、2020年11月に発見され、BBC側に渡されたという

調査報告書では、バシール氏の手法に関する苦情への、BBCの対応についても批判している。

BBCは1996年に内部調査を実施し、バシール氏と「パノラマ」、BBCニュースに関して、問題となる行為はなかったとした。

ダイソン卿は当時の調査を「ひどく役に立たない」ものだったとした。調査はBBCの当時のニュース部門責任者で、後に会長となったホール卿が率いる格好で進められた。

他のメディアの追及が強まると、BBCは記者からの質問に対して「逃げるような」回答をした。

調査報告書はホール卿らBBC幹部について、1996年3月に銀行明細に関して記者らの質問を受けた時点ですでに、バシール氏が銀行明細をスペンサー伯爵に見せていないとうその説明を3回重ねていたことを知っていたとした。

しかしBBCの広報は取材に対し、バシール氏は「正直で高潔な人物」だと説明した。

ダイソン卿は、「BBCが広報対応において、バシール氏によるインタビューの経緯に関する事実を隠ぺいしたと確信している」と述べた。

また、BBCは「特長としている、誠実さと透明性の高い基準を満たさなかった」と指摘した。

ホール卿は声明で、バシール氏に当時、「疑わしきは罰せず」という姿勢を示したのは間違いだったと述べた。

「BBCでの35年間のキャリアを通し、公平、不偏、世の中の関心を重視するという考えで行動してきた」

「ダイソン卿は私の誠実さを批判してはいないが、私たちの調査が求められていた水準に達していなかったことについて、申し訳なく思う」

「徹底的に調べるべきだった」

BBCのティム・デイヴィー現会長は、「調査報告書はウェールズ公妃であるダイアナ元妃がBBCのインタビューを受けることに関心を持っていたとしたが、そのインタビューを実現するまでの過程が視聴者の期待とかけ離れていたのは明らかだ。私たちはこのことを本当に申し訳なく思う。ダイソン卿は明確な不手際を指摘した」と述べた。

動画説明, BBCデイヴィー会長、「いくつも深刻な過ちあった」 ダイアナ元妃の取材めぐり

「現在のBBCは取材過程も手続きも大幅に改善されているが、当時もこうした方法でインタビューがなされるのは食い止められるべきだった」

「BBCは当時、何があったのかを徹底的に調べるべきだったし、判明したことをもっと公表すべきだった」

「BBCは四半世紀の時を戻すことはできないが、完全かつ全面的な謝罪を表明することはできる。BBCは今日、それを実行する」

デイヴィー会長はチャールズ皇太子に送った手紙の中で、バシール氏が皇太子やそのスタッフ、王室の他のメンバーらについて「生々しく、事実ではない主張」をしたことを謝罪したことが、BBCニュースの取材でわかった。

手紙ではまた、バシール氏が「ダイアナ元妃の関心を買うため、害を与える人たちへの影響を配慮することなく、元妃の不安に乗じる格好で」それらの主張をしたことを認めた。

BBCのリチャード・シャープ理事長は、BBCに「容認できない間違い」があったとする、調査報告書の内容を「全面的に受け入れた」と述べた。

「これらは過去に起きたことというのは、私たちの責任を弱めるものではない」

インタビュー放送当時にBBC会長だったバート卿は、調査のおかげで「BBCが『パノラマ』でたちの悪い記者を抱えていたことがわかった」とした。

バート卿はまた、「BBCの長年にわたる誠実なジャーナリズムにとって衝撃的な汚点」だとし、真実が明るみになるのに25年かかったのは「大いに悔やまれる」とした。

バシール氏は先週BBCを去る

バシール氏はイギリスで最も著名なジャーナリストの1人。

ダイアナ元妃のほか、ポップスターのマイケル・ジャクソン氏に2003年にインタビューしたことで話題となった。英ITVやいくつかの米ネットワーク局で勤務してきた。

バシール氏は先週、健康問題を理由にBBCを退社した。同氏は2016年から宗教担当の編集委員と編集者を務めてきた。

2004~2006年にBBC会長を務めたグレイド卿は、BBCの「隠ぺい」はバシール氏の行為より悪質だと述べた。

「真実に行き着くのに25年かかった。BBCのジャーナリズムには、私たちが知らない隠ぺいが他にどれだけあるのかと、思わずにいられない」

BBCの元取締役のサー・リチャード・エアーは、取締役会がバシール氏の行為を知っていたら、徹底調査を指示しただろうと話した。

「バシール氏がうそをついたという事実は、私たちに明らかにされるべきだった。私の記憶では、そうならなかった」

「偽の銀行明細がダイアナ元妃に近づくドアを開くレバーだったと、いまわかった」