「どこに行けばいいのか」 安全な場所のなくなったガザ市内、BBC記者が取材

ラシュディ・アブ・アルーフ、BBCニュース(ガザ

動画説明, イスラエルの空爆続くガザ地区、その市内は今 BBC記者が現地報告

「どこに行けばいいんですか? 静かで美しい安全な場所が、この近くにありますか?」と、リマルで集合住宅の住民が、皮肉たっぷりな口調で、私にたずねた。

イスラエル戦闘機による空爆が続くなか、私はまさに、人生で最も厳しい7時間をこの住宅で過ごしたばかりだった。パレスチナの武装勢力が7日、パレスチナ自治区ガザ地区からイスラエス南部に前例のない襲撃を行なったことへの報復措置だ。

イスラエルの攻撃によって、集合住宅や通信会社のオフィス、ガザ・イスラム大学の施設など数十棟に甚大な被害が出た。

9日には、恐ろしい爆発が夜通しこの地区を揺らした。子供たちは泣き叫び、誰も一睡もできなかった。

動画説明, 暗闇に砲弾の音 9日夜のガザからBBC報告

リマルはガザ市内で最も豊かで、通常は最も静かな場所だが、住民たちはこの夜をしばらくは忘れないだろう。

10日の明け方には空爆の頻度が下がり、住民は破壊の実態を目にした。ガザ市南西部にあるこの地区のインフラは大損害を受け、そこに至る道のほとんどが寸断されていた。

車で周辺を見回ると、まるで地震で被災したかのような光景だった。がれきと割れたガラス、そして切断された電線があちこちに散らばっていた。あまりに破壊の程度がひどすぎて、通り過ぎてもそれがかつて何の建物だったかわからない場所もあった。

動画説明, 空爆後のガザをドローンで撮影した映像

「何もかも失いました。5人の子供と暮らしていた部屋が、このアパートにありました。階下に持っていた日用品店も壊されてしまった」。モハメド・アブ・アル・カスさんは娘のシャハドさんを抱きながら、私に話した。

「どこに行けばいいんでしょう? 家がなくなって、身を寄せる場所も働く場所もない」

モハメドさんは、民間人を標的にしていないというイスラエル軍のうそを批判し、「私の家と店が軍事目標だったとイスラエルは言うのか」と付け加えた。

パレスチナの保健省は、9日のガザ地区への攻撃で約300人が死亡したと発表。うちう3分の2が民間人だという。長年の紛争の中で、1日で最多の犠牲者を記録した。

この日の午後には、ガザ市の北東部にあるジャバリア難民キャンプで、少なくとも15人が殺された。イスラエル軍はハマス司令官の家を狙ったとしている。しかし、近隣の市場や家にいた大勢も殺された。

動画説明, BBCアラビア語が撮影した、イスラエルによる空爆後のジャバリア難民キャンプの様子

人道危機が深刻化

保健省によると、7日以降のガザ地区での死者は900人に上る。そのうち260人が子供だという。このほか4500人が負傷している。

狭い面積に人口が密集するこの地域では、ただでさえ厳しい状態にあった人道危機がさらに深刻化している。

イスラエル政府がハマスの攻撃を受けて「完全封鎖」を命令し、ガザ地区への全ての供給を断ったため、同地区の220万人が食料や燃料、電気、水が足りなくなる状態に置かれている。

7日の突然の急襲により、イスラエル側では1000人が殺された。また、武装勢力により、100~150人が人質としてガザ地区に連れ去られた。

リマル在住のワード・アル・ムグラビさんは、自宅の隣の破壊された建物を見ながら、「21世紀に電気や水なしで生きているなんて想像できますか? 子供のおむつはなくなり、ミルクもボトルに半分しか残っていません」と話した。

「うちの子が、イスラエルを攻撃したとでも?」

A resident of Gaza City's Rimal neighbourhood inspects the damage after a night of Israeli air strikes (10 October 2023)

画像提供, EPA

画像説明, ガザ市内で最も裕福なリマル地区が、イスラエルの空爆で破壊された(10日)

7日以降閉店していたガザ最大のスーパーマーケットが営業を再開すると、数十人が小さな裏口に並んだ。戦闘が長引くことを恐れ、何でもいいから食料を買えればという気持ちだった。

ガザ地区で売られる野菜や果物の多くは、地区の南部で生産されている。深刻な燃料不足によって、これらの作物をガザ市のある地区北部へ運ぶことがますます困難になっている。

A resident of Gaza City's Rimal neighbourhood sits down on debris left after a night of Israeli air strikes (10 October 2023)

画像提供, EPA

画像説明, 国連によると、一連の空爆でガザ地区の20万人が家を追われた(リマル、2023年10月10日)

現時点では隣接するエジプトからも、食料品や生活必需品の供給はない。エジプトは2007年にハマスがガザ地区を占領して以降、安全保障上の理由から、イスラエルと共にガザ地区を厳しく封鎖している。

エジプトとの境界にあるラファ検問所経由で、ガザを脱出することもできなことができない。ラファでは通常、1日400人の出入りを許可されているが、ガザ地区の内務省によると、9日と10日に行われたイスラエルによる空爆で、パレスチナ側のゲートが破壊され、通行できなくなったという。

そのため、ガザ地区で家を追われた20万人の大半が、国連が運営している学校に身を寄せている。身の危険を感じて逃げてきた人もいれば、空爆で家を壊された人もいる。

一部の住民は、建物の地下室に避難しているものの、建物が倒壊した場合は閉じ込められるリスクがある。9日夜には、1つの地下室だけで30家族が閉じ込められた。

リマル在住のモハメド・アル・ムグラビさんは、「これまでの戦争では、(イスラエルとの)境界地域に住む住民にとって、ガザ市の一部が安全地帯となっていた」と話した。

だが9日のイスラエルによる空爆で、もはや安全な場所などないことが明らかになった。