マウイ島火災、住民に警報は届いていたのか 「なんの知らせもないまま」避難した住民も

バーンド・デバスマン・ジュニア(ワシントン)、マックス・マッツァ(マウイ)

Lahaina aerial view

画像提供, Reuters

画像説明, 大規模な山火事に焼かれたラハイナ町では、火が町に到達するまで当局から警告も指示もなかったと住民の多くが話している(10日、マウイ島ラハイナ)

米ハワイ州マウイ島で、山火事による甚大な被害が出ている。その破壊の規模が徐々に明らかになるにつれ、地元当局が住民に対して発した警告のタイミングについて、疑問視する声が高まっている。

最初に避難指示が出されたのは8日で、火は「100%鎮圧された」との発表がそれに続いた。

しかしその翌日、急速に燃え広がる炎がマウイ島のラハイナ町を飲み込んだ。

当局によると、町の約8割が焼失した。

テキストの緊急アラートを受け取ったという住民もいるものの、なぜもっと広範囲に警報が伝えられなかったのかは、はっきりしない。多くの住民は、火が到達する何時間も前から、強風のため携帯電話などが使えなくなり通信手段が途絶えていたと話す。

マウイの住民は火事について知らされていたか

火災が8日に始まったことが、今ではわかっている。それ以前に、具体的な警報はなかった。

アメリカ国立気象局(NWS)は、森林火災の拡大につながる強風や乾燥について何度か警報を出していたが、いずれも9日には解除された。

マウイ島での火災が8日朝に報告されて間もなく、現地当局はラハイナから東にある学校周辺について避難命令を出した。

現地時間午前9時(日本時間9日午前4時)の少し前、マウイ郡の公式サイトは、「風は引き続き懸念される」ものの、森林火災は「100%鎮圧された」と発表した。

通行停止になった道路を避けるよう呼びかけた以外、当局は同日午後4時45分(日本時間9日午後11時45分)まで警報の続報は出さなかった。その時間になって、火が「再び勢いを増したもよう」で、町の近くのバイパス道が封鎖されたほか、一部の人が避難したと発表した。

その後は複数の避難指示が出され、現地時間午後10時までにマウイ郡のリチャード・ビッセン郡長が非常事態を宣言。一部のホテルの宿泊客は、道路が渋滞しないよう、ホテル内に留まるよう指示された。

その時点までにラハイナ町の一部は炎に包まれていた。一部の住民は海へ逃げるしかなかった。

動画説明, 「地獄の炎のようだった」、住民が避難の様子語る マウイ島森林火災
Presentational white space

警報システムは作動したのか

ハワイには、あらゆる災害に対応した世界最大規模の住民警報システムがあるというのが、これまでの州当局の自慢のたねだった。同州内のたくさんの島々に400以上のサイレンを設置し、さまざまな脅威の警報を住民や訪問者に伝えるための仕組みだ。

同州のアダム・ワイントラウブ危機管理長官はAP通信に対して、その警報システムのサイレンが8日の時点でマウイ島で作動したという記録はない様子だと話した。

ワイントラウブ氏によると、代わりに現地当局は緊急アラートを携帯電話やテレビ・ラジオ局に送信したのだという。

しかし火災発生後、多くの住民はこのアラートを見ていないと話す。このため、マウイ島の広範囲で停電が発生し、通信が途絶えた後に、アラートが送信されたのではないかと憶測が広がっている。

ブラッドフォード・ヴェントゥーラ消防局長は10日夜、記者団に対して、強風にあおられた炎はあまりにあっという間に燃え広がったため、住民に連絡を取るのは「ほとんど不可能になってしまった」と話した。

ラハイナ町で真っ先に被害にあった地区の人たちは、「ほとんど何の知らせもないまま、自己判断で自力で避難していたに等しい」のだとも、消防局長は話した。

ビッセン郡長は米NBCニュースに対して、火が移動するスピードはあまりに速く、「何もかもがあっという間に起きた」ため「お手上げな状況」だったと話した。

警報システムが機能したかどうかについて郡長は答えなかったが、8日夜までに2100人がシェルターに避難していたと説明した。

ハワイ州のジョシュ・グリーン州知事は9日の記者会見で、「予想するのが非常に難しかった。とりわけ、夜間に強風のため燃え移ったからだ」と話した。

Lahaina shelter

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画像説明, 多くのラハイナ住民がシェルターに避難している
Presentational white space

住民は何を受け取っていたか

火災から逃れた後、多くの地元住民や観光客は、炎がラハイナ町に危険なほど近づくまで、あるいは街全体に広がってしまった後になるまで、何の警告も聞いていないと話している。

米カンザス州からマウイを訪れていたティー・ダンさん(35)はBBCに対し、泊まっていた民泊施設のオーナーから避難を促されるまで、警報が出ていたことを知らなかったと話した。

「何をすればいいか分からなかったので、とりあえず荷物を全部持った(中略)車に乗り込むころには黒い煙が立ち上っていた」

「私が持ち出したのは食べ物と水と上着だけで、それで逃げた」と、ダンさんは話した。しかしすぐに、炎の中で渋滞に巻き込まれたという。「あちこちに火が付いていた」

ダンさんと夫と3人の子供は最終的に、炎から逃れるために海に入った。

ラハイナ町に住むリー・ムンさん(42)は、集合住宅の住民たちと会っていた時に強風が吹き始め、煙の臭いがし始め、窓に煤(すす)が落ちるのが見えたと話した。それからすぐに、火の粉も落ちてきたという。

「この時点で、みんな慌て始めた」とムンさんは話す。

ムンさんが荷物をまとめたころには、建物にも火が燃え移り、「何もかも真っ黒になった」という。

地元住民のダスティン・カレイオプさんは、BBCがアメリカで提携するCBSの取材で、火事が間近に迫っていることに気づいたのは、「煙が窓から入ってきた」ときだったと述べた。

「車に乗ることろには、近所の庭が燃えていた」

「私たちの家の庭では、知らない人がホースを持って消火しようとしていた」

ラハイナ出身のカール・カドワースさん(63)は、テキストメールで警告を受け取ったと言っている数少ない1人だ。

カドワースさんは米紙ニューヨーク・タイムズに対し、「消防車のような」音のアラートはすぐに消えたが、それのおかげで自分や家族はラハイナから脱出するための時間が確保できたのだという。