プーチン氏はこれからどうする……開戦前に交渉した前アメリカ駐ロシア大使に聞く

John Sullivan
画像説明, ジョン・サリヴァン氏。アメリカの前駐ロシア大使を務めた

バーバラ・プレットアッシャー、BBC米国務省担当編集委員

ロシア政府と交渉するのはどのような感じなのか。ウラジーミル・プーチン大統領はなぜウクライナを簡単には諦めないのか。アメリカの前駐ロシア大使がBBCに説明した。

ジョン・サリヴァン氏は、ロシアによるウクライナ侵攻の前まで、アメリカ大使としてモスクワにいた。

戦争を防ごうとロシア当局と話をした人物だが、「向こうは本気でやりとりしてこなかった」と言う。

「ロシアは自国の安全保障を要求したが、ウクライナの安全保障については建設的に話そうとしなかった。決定済みの論点以上のことは決して言わなかった。見せかけだけだった」

アメリカは紛争を終わらせるため、対話を続ける努力をもっとすべきか。そう尋ねると、サリヴァン氏はプーチン氏について「開戦前、交渉に関心がなかったし、今も交渉には関心がない」と述べた。

ロシアは目標を変えていない

アメリカのジョー・バイデン政権は、ウクライナへの軍事支援とロシアに対する制裁について世界各国の支持を集めることに力を入れている。また、アメリカ単独でもウクライナに何十億ドル分もの兵器を供与している。

プーチン氏は21日の年次教書演説で、「西側諸国が戦争を始めた」、「西側がロシアに『戦略的敗北』をもたらそうとウクライナを利用した」、「存在そのもののために戦っているのは、ウクライナではなくロシアだ」という見解を繰り返した。

ロシアは「特別軍事作戦」の失敗にもかかわらず、当初宣言した目標(ウクライナの「脱ナチス化」と「非軍事化」)は変えていないと、サリバン氏は言う。ロシアが掲げるそうした目標は、つまり「キーウにある政府の排除と、ウクライナ国民の服従」を意味すると、前大使は解釈する。

これは、ソヴィエト連邦の崩壊でばらばれになったロシア民族を再集結させるという、プーチン氏が描いている構想の一部でもある。

「民主的に選ばれた政府が、とりわけ(ウォロディミル・)ゼレンスキー大統領が率いる政府が、キーウに存在することを、(プーチン氏は)認めるわけにいかない」とサリヴァン氏は言う。「その政府が存在する限り、彼は決して満足しない。なぜなら、その政府はロシアにとって、そして彼が作ろうとしている大ロシア国家構想にとって、脅威だと考えているからだ」。

では、プーチン氏はどうなれば戦争をやめるのか。

「勝つことはできないと、彼が確信する必要がある」とサリヴァン氏は言う。「勝利は到底不可能だと確信するまで、彼は攻撃を強めるだろう。戦場でどれほど重大な敗退をすれば、その確信に至るのかはわからない。ただ、現時点ではその状態に全く近づいていない」。

動画説明, プーチン氏、戦争を始めたのはウクライナと西側だと 持論繰り返す年次教書演説
Presentational white space

サリヴァン氏はまた、プーチン氏は長期的な展望の持ち主だと話す。「達成したいビジョンがあり、それを簡単には諦めない」はずだと。

一方で、ウクライナ人も簡単にはあきらめないはずだと、サリヴァン氏は考えている。そして、ウクライナを構成する4400万人のスラヴ民族に自分への拒否感を植え付けたことが、プーチン氏による戦争の戦略的失敗のひとつだと、前大使は言う。

「ウクライナ人は許さないし、忘れない」とサリヴァン氏は言う。「仮にゼレンスキー大統領が戦争を終わらせようと、領土で譲歩し、基本的に降伏したいと思っても、ウクライナ国民がそれを許さないだろう」。

このような軍事的、政治的、イデオロギー的な対立がある以上、アメリカは長期戦に備えなければならない。

バイデン氏は、侵攻1年に合わせてキーウを電撃訪問し、アメリカの支援継続を強調した。しかしサリヴァン氏は、今年中にこの紛争が終わるとはみていない。

「その先のことは分からない」とサリヴァン氏は言う。「ただ、プーチン氏は出口を求めていない。この特別軍事作戦の目標は達成されると、常に繰り返している」