ヘッドスカーフとベレーを合わせて……肌を露出しない「モデスト・ファッション」ウィーク、パリで初

複数のシャンデリアが下がり、白い壁に金色の飾りがついた華やかな室内で、左右に観客が座るランウェイを、顔や手先以外を隠したさまざまなデザインのドレスを着たモデルたちとデザイナーが笑顔で歩いている

画像提供, ThinkFashion

画像説明, フランスのファッションブランド「Soutoura」を立ち上げたデザイナー、ファトゥ・ドゥクレさん(中央)は、自分の服をパリで発表することで、髪にスカーフを巻く女性たちが「社会のあらゆる役割」にもつけると感じたと話す
この記事は約 7 分で読めます

ヤスミン・ハトゥン・デワン記者

フランス・パリで4月半ば、初の「モデスト・ファッション・ウィーク」が開かれた。「モデスト」は「慎み深い、控えめ」などの意味で、「モデスト・ファッション」は肌の露出を極力控えた装いを指す。

パリの「モデスト・ファッション・ウィーク」には、ゆったりとしたロング丈の服やヘッドスカーフなどのコレクションを手がけるデザイナー約30人が参加した。

ムスリム(イスラム教徒)女性の多くは自分たちの宗教の原則に沿って、腕や脚、場合によっては髪も覆う服装をする。今回のコレクションでは、そうした女性たちの装いに合うデザインの服が多数登場した。

このコレクションがフランスで開催されたことには、特別な意味があった。世俗主義を掲げるフランスでは、髪を覆うヒジャブやその他の宗教的衣服がたびたびニュースの話題になり、特定の場面では着用が制限されているからだ。

ナイジェリアのブランド「フローント・アーカイヴ」のクリエイティブディレクター、ルカイヤ・カンバ氏は、「とても意識的に」、自分のコレクションをパリで発表することにしたのだと話した。

モデルたちがランウェイを歩く中、このイベントは以前より包摂的になったフランス文化を示しているような気がすると、若い来場者の一部はBBCに話した。

首から指先、足首までをすっぽり覆う、コーラルピンク色のロングドレスを着たモデルがランウェイを歩いている

画像提供, Rooful Ali

画像説明, 花を思わせる色彩の、長いゆったりしたドレスも登場した

フランスには推計約500万〜750万人のムスリムが暮らしている。モデスト・ファッション・ウィークの運営団体を代表するオズレム・シャヒン氏は、パリを「ヨーロッパ有数のモデスト・ファッションの首都の一つ」と呼ぶ。

シャンゼリゼ通り近くにある「オテル・ル・マロワ」の会場では、花柄や自然に着想を得た色彩のデザインが多く登場した。

トルコを拠点とするブランド「ミハ」の創設者兼デザイナー、ヒジラン・ウナル氏は、花柄プリントのチュールドレスを着て出席。自分のコレクションではロマンスが重要だと、私に話した。

「ミハ」のデザインは、水のようなティール(青緑色の一種)やブルーといった色に、自然な花のピンクを対比させていた。インドネシア人デザイナーのナダ・プスピタ氏も美しい色合いで表現していたが、服のラインはすっきりしていた。

オーストラリアのブランド「アシヤム」のデザイナー、アイサ・ハッサン氏も、自然から着想を得たと話した。ただし、使っている色合いは深緑や秋めいた赤など、ぐっと温かみのあるものだった。バケットハットは、彼女のオーストラリア人としてのルーツを表していた。

上から水色から濃い青へのグラデーションになり、ところどころピンクに染まった柔らかい素材が、何重ものドレープになり重なっているロングドレス。モデルの首から下と指先、足首までをすっかり覆っている

画像提供, Rooful Ali

画像説明, ヒジラン・ウナル氏の「ロマンティック」なドレスは、ブルーとピンクをブレンドさせている。
長い茶色のプリーツドレスに、つばの広いバケットハットの組み合わせ。顔とサンダルをはいた足だけ肌が見えている

画像提供, Rooful Ali

画像説明, オーストラリア人デザイナー、アイサ・ハッサン氏のデザインは、温かみのある色調を使っていた

モデスト・ファッション業界はスポーティーなデザインが主流だが、ハッサン氏の服の柔らかさは、それと対照的だった。

フランスのブランド「スートゥラ」と「ヌール・ターバンズ」のデザインは、ナイロン素材に黒や宝石のような色を使い、「ボクシー」と呼ばれる箱のように四角く直線的なシルエットが特徴で、「Z世代」のストリートウェアから強い影響を受けている。これは、ナイキやアディダスといったスポーツウェア大手も推進してきた、モデスト・ファッションの一つだ。

「アシヤム」と同じように「ヌール・ターバンズ」も、頭にかぶるもので強い印象を与えた。モデルはヘッドスカーフの上にベレー帽をかぶり、ランウェイを歩いた。

モデルは黒いレースの長そでトップスの上に、襟の付いた黄色いロングドレスを着ている。また、青いヘッドスカーフとベレー帽を着けている。

画像提供, Rooful Ali

画像説明, 「ヌール・ターバンズ」はパリのムスリム女性に、ベレー帽とヘッドスカーフの組み合わせを提案したを
紺色のオーバーサイズのポロシャツ風スウェットパーカーと、紺色のひざ丈スカートに薄い色のレースのロングスカートを合わせた装い。パーカーの前面には大きく「45」という番号が入り、裾に太い白いストライプが2本走っている。モデルは頭髪と首を隠す黒いスカーフを巻いた上に黒いキャップをかぶり、黄味がかったサングラスをかけている

画像提供, Rooful Ali

画像説明, 「スートゥラ」によるボクシーなストリートウェアは、大胆な印象を与えた。

モデスト・ファッション市場は、この10年で急成長している。調査会社ディナールスタンダードによると、世界全体での売り上げは来年までに4000億ドルを超える見通しだ。

業界は当初、ムスリム女性の顧客に特化していたが、現在では他の宗教の信者や、宗教とは特に関係のない消費者にもアピールしている。

「スートゥラ」を立ち上げたクリエイティブディレクターのファトゥ・ドゥクーレ氏は、「モデスト・ファッション・ウィーク」がパリで開かれて誇らしい気持ちだと私に話した。自分はフランスにいてヒジャブで苦労してきたものの、今ではヒジャブによって行動が制限されるとは思わないという。

フランスでは20年以上前に、公立の学校でヘッドスカーフやその他の宗教的象徴を着けることが禁止された。2023年には、アバヤと呼ばれるゆったりした全身丈のローブも公立校では禁止された。

これは、国家と公的機関から宗教を排除するよう定めるフランス独自の世俗主義「ライシテ」に由来する。この原則のため、教職や公務員など公的部門の職業に就く人は、宗教的衣服を着ることができない。

ドゥクーレ氏は、自分のコレクションをパリで披露したことで、髪を覆ったり控えめな服装をするムスリム女性が「あらゆる社会であらゆる役割を担える」と感じたと話す。

顔、手、足以外を覆うカラフルな水着「ブルキニ」を着た複数のモデルと、黒いロングドレスを着たデザイナーの女性が、ランウェイに集まり両手を合わせている。この写真のブルキニは上下が分かれたスタイルで、袖や裾が長くゆったりしており、体の線を拾わないデザインとなっている。黒いサングラスをかけているモデルもいる。

画像提供, ThinkFashion

画像説明, ランウェイでモデルが着用した「ブルキニ」は、フランスのほとんどの公営プールで着用が認められていない

トルコの水着ブランド「マヨヴェラ」は、顔、手、足以外をすべて覆う水着「ブルキニ」のコレクションを披露した。ブルキニは「ブルカ」と「ビキニ」を組み合わせた言葉で、フランスでは大半の公営プールで禁止されているが、ビーチでは認められている。

会場にいたマリ系の若いフランス人は、ヘッドスカーフを理由に差別されてきた自分にとって、このイベントはとてもうれしいものだったと話した。

パリの中心部でさまざまな国のデザイナーによる本格的なショーを見たことで、「もう絶対にフランスを離れたくなくなった」という。

フランスで何かが変わったような気がすると話す来場者もいた。この人は、自分のヒジャブがもう政治的な論争の的ではなくなったと、そう思えると話した。街を歩いていても、周りの人たちは自分のヒジャブに注目するのではなく、その奥を見るようになったと感じるという。