ヘッドスカーフとベレーを合わせて……肌を露出しない「モデスト・ファッション」ウィーク、パリで初

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ヤスミン・ハトゥン・デワン記者
フランス・パリで4月半ば、初の「モデスト・ファッション・ウィーク」が開かれた。「モデスト」は「慎み深い、控えめ」などの意味で、「モデスト・ファッション」は肌の露出を極力控えた装いを指す。
パリの「モデスト・ファッション・ウィーク」には、ゆったりとしたロング丈の服やヘッドスカーフなどのコレクションを手がけるデザイナー約30人が参加した。
ムスリム(イスラム教徒)女性の多くは自分たちの宗教の原則に沿って、腕や脚、場合によっては髪も覆う服装をする。今回のコレクションでは、そうした女性たちの装いに合うデザインの服が多数登場した。
このコレクションがフランスで開催されたことには、特別な意味があった。世俗主義を掲げるフランスでは、髪を覆うヒジャブやその他の宗教的衣服がたびたびニュースの話題になり、特定の場面では着用が制限されているからだ。
ナイジェリアのブランド「フローント・アーカイヴ」のクリエイティブディレクター、ルカイヤ・カンバ氏は、「とても意識的に」、自分のコレクションをパリで発表することにしたのだと話した。
モデルたちがランウェイを歩く中、このイベントは以前より包摂的になったフランス文化を示しているような気がすると、若い来場者の一部はBBCに話した。

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フランスには推計約500万〜750万人のムスリムが暮らしている。モデスト・ファッション・ウィークの運営団体を代表するオズレム・シャヒン氏は、パリを「ヨーロッパ有数のモデスト・ファッションの首都の一つ」と呼ぶ。
シャンゼリゼ通り近くにある「オテル・ル・マロワ」の会場では、花柄や自然に着想を得た色彩のデザインが多く登場した。
トルコを拠点とするブランド「ミハ」の創設者兼デザイナー、ヒジラン・ウナル氏は、花柄プリントのチュールドレスを着て出席。自分のコレクションではロマンスが重要だと、私に話した。
「ミハ」のデザインは、水のようなティール(青緑色の一種)やブルーといった色に、自然な花のピンクを対比させていた。インドネシア人デザイナーのナダ・プスピタ氏も美しい色合いで表現していたが、服のラインはすっきりしていた。
オーストラリアのブランド「アシヤム」のデザイナー、アイサ・ハッサン氏も、自然から着想を得たと話した。ただし、使っている色合いは深緑や秋めいた赤など、ぐっと温かみのあるものだった。バケットハットは、彼女のオーストラリア人としてのルーツを表していた。

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モデスト・ファッション業界はスポーティーなデザインが主流だが、ハッサン氏の服の柔らかさは、それと対照的だった。
フランスのブランド「スートゥラ」と「ヌール・ターバンズ」のデザインは、ナイロン素材に黒や宝石のような色を使い、「ボクシー」と呼ばれる箱のように四角く直線的なシルエットが特徴で、「Z世代」のストリートウェアから強い影響を受けている。これは、ナイキやアディダスといったスポーツウェア大手も推進してきた、モデスト・ファッションの一つだ。
「アシヤム」と同じように「ヌール・ターバンズ」も、頭にかぶるもので強い印象を与えた。モデルはヘッドスカーフの上にベレー帽をかぶり、ランウェイを歩いた。

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モデスト・ファッション市場は、この10年で急成長している。調査会社ディナールスタンダードによると、世界全体での売り上げは来年までに4000億ドルを超える見通しだ。
業界は当初、ムスリム女性の顧客に特化していたが、現在では他の宗教の信者や、宗教とは特に関係のない消費者にもアピールしている。
「スートゥラ」を立ち上げたクリエイティブディレクターのファトゥ・ドゥクーレ氏は、「モデスト・ファッション・ウィーク」がパリで開かれて誇らしい気持ちだと私に話した。自分はフランスにいてヒジャブで苦労してきたものの、今ではヒジャブによって行動が制限されるとは思わないという。
フランスでは20年以上前に、公立の学校でヘッドスカーフやその他の宗教的象徴を着けることが禁止された。2023年には、アバヤと呼ばれるゆったりした全身丈のローブも公立校では禁止された。
これは、国家と公的機関から宗教を排除するよう定めるフランス独自の世俗主義「ライシテ」に由来する。この原則のため、教職や公務員など公的部門の職業に就く人は、宗教的衣服を着ることができない。
ドゥクーレ氏は、自分のコレクションをパリで披露したことで、髪を覆ったり控えめな服装をするムスリム女性が「あらゆる社会であらゆる役割を担える」と感じたと話す。

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トルコの水着ブランド「マヨヴェラ」は、顔、手、足以外をすべて覆う水着「ブルキニ」のコレクションを披露した。ブルキニは「ブルカ」と「ビキニ」を組み合わせた言葉で、フランスでは大半の公営プールで禁止されているが、ビーチでは認められている。
会場にいたマリ系の若いフランス人は、ヘッドスカーフを理由に差別されてきた自分にとって、このイベントはとてもうれしいものだったと話した。
パリの中心部でさまざまな国のデザイナーによる本格的なショーを見たことで、「もう絶対にフランスを離れたくなくなった」という。
フランスで何かが変わったような気がすると話す来場者もいた。この人は、自分のヒジャブがもう政治的な論争の的ではなくなったと、そう思えると話した。街を歩いていても、周りの人たちは自分のヒジャブに注目するのではなく、その奥を見るようになったと感じるという。











