人工照明の「光害」 あちこちで夜が消えつつある

ビクトリア・ギル BBCニュース科学担当記者

Europe at night in 2016

画像提供, NASA

複数の科学者が夜間の地球の写真を調査したところ、地球上で人工照明が年々明るく強くなり、その範囲が広がっていることが明らかになった。

米科学誌「サイエンス・アドバンス」 に22日付で掲載された論文によると、2012年~2016年にかけて、人工の光で照らされた屋外面積は毎年2%以上広がった。

多くの国で「夜が失われる」ことで、動植物や人間の健康に悪影響を及ぼしていると、科学者たちは指摘する。

研究チームは、米宇宙航空局(NASA)の人工衛星放射計から入手したデータを使用した。専用の放射計は、夜間の光の強さを測るために作られたものだ。

調査の結果、対象期間中の明るさの変化の度合いは、国ごとに大きく異なることが分かった。米国やスペインなど世界の「最も明るい国々」の一部では、明るさは不変だったものの、南米やアフリカ、アジアの大半の国では明るさが増した。

(中央の<>を動かすとインドの夜が2012年から2016年にかけて明るくなる様子が分かる)

以前より夜が暗くなった国は、戦争状態にあるイエメンやシリアなどわずか数カ国のみだった。

光り輝く海岸線やクモの巣のような都市のネットワークなど、夜間を映す衛星画像は非常に美しい。しかし、人工の光は人間の健康や環境に思いもよらない影響を与える。

動画説明, 「光害」 夜が失われているのか
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人工照明の影響

  • 米国医師会は2016年、「作りが悪く照度が高いLED電球の悪影響」を正式に認めた。医師会は「まぶしい光を減らすため、青色の光の放出を最大限に減らし、青色が多く含まれる光を出来るだけ抑える」よう促した。
  • 英科学誌「ネイチャー」に掲載された最近の研究では、人工照明で夜行性の昆虫の受粉活動が減り、作物の受粉に非常に悪い影響を及ぼすことが明らかになった。
  • 英国の研究によると、通常よりも明るく照らされた場所にある木は、人工照明が当たっていない場所にある木よりも、1週間早く発芽することが明らかになった。
  • 今年発表された調査では、都市の照明によって、夜間に移動する渡り鳥の習性が「劇的に変化する」ことが分かった。
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論文の筆頭著者で、ドイツ・ポツダムにある地球科学ドイツ研究センターのクリストファー・カイバ博士は、人工照明の使用は「人間が環境に与えた最も劇的な物理的変化の一つ」だと話した。

Night-time scene of UK and part of Western Europe (c) SPL

画像提供, Science Photo Library

画像説明, 英国と西欧の夜。特に明るい地域はさらに明るくなってきている

カイバ博士と同僚研究者たちは、オレンジ色のナトリウム灯をエネルギー効率の優れたLEDに交換すれば、裕福な都市と工業地域の明るさは減少すると予想していた。人工衛星の光センサーはLEDが放つ青い光を計測できないからだ。

「米国、英国、ドイツのような金持ち国の、特に明るく光っている部分は、全体的に光が減るだろうと予想していた」とカイバ博士はBBCに話した。「しかし、米国では明るさは変わらず、英国やドイツでは明るさは増している」。

人工衛生のセンサーは人間には見える青い光を「見る」ことができない。つまり、研究で計測されたよりもはるかに大きい明るさの変化を、私たち人間は感じとっていることになる。

英エクセター大学のケビン・ガストン教授はBBCに対し、人類は自分たちに「異常な光の日常的に浴びせている」と話す。

「光が減ればもっとよく見える」

「今の欧州で、自然の夜空を見上げるのは難しい。人工照明が夜空を照らしている状態が、普通になってしまった」

ガストン教授は光の公害が拡大し続けていることに注目する。「人類が自然環境を破壊する場合、その修復や復元は通常、とても費用がかかること。しかし光の公害については、光を必要なところにだけ当てて、必要ないところでは無駄遣いしない。それだけで済む」。

Composite image of Nile River and surrounding region at night in 2016 (c) NASA Earth Observatory images by Joshua Stevens, using Suomi NPP VIIRS data from Miguel Román, NASA's Goddard Space Flight Center

画像提供, NASA

画像説明, ナイル川と周辺地域は夜間になると光の輪郭が浮かび上がる

カイバ博士は、市街地をもっと暗くしても視界が悪くなることはないと言う。

「人間の視覚は、光量ではなく、明暗差に依存している」とカイバ博士は説明する。「なので、まぶしい照明をやめて屋外の明暗差を小さくしても、少ない光量で視界を向上させることができる」。

「そうすれば、エネルギーを大幅に節約できる。けれども国別、そして地球規模でデータを見ると、人類はそちらの方向には向かっていない」