ロシア、「ワッツアップ」を遮断 メッセージアプリの規制強める

モスクワの赤の広場にある聖ワシリイ大聖堂前で、黒い服と帽子を身に着けた男性が、携帯電話を右耳にあてて話をしている

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画像説明, ロシアの規制当局はメッセージアプリ「ワッツアップ」の国内ユーザーに対し、代わりに国営のアプリを使うよう促しているとみられる
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ロシアは12日、米メタが運営するメッセージアプリ「ワッツアップ」の遮断を命じた。ワッツアップは前日、ロシア政府が同国内でワッツアップを「完全に遮断しようとしている」と発表していた。クレムリン(ロシア大統領府)は複数のメッセージアプリに関して規制強化を進めている。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官はBBCに対し、遮断の決定は「(メタが)ロシア法の規範と条文に従う意思を示さなかったため」と説明した。また、メタが「(法律に)従い、対話に応じる」ならば事業再開が可能だと述べた。

ロシア当局が開発したアプリ「マックス」の使用を国民に強制しようとしているのかとの質問には、「国民向けメッセンジャーはロシア国民にとって利用可能な代替手段だ」とペスコフ氏は答えた。

ワッツアップはこうした動きについて、ロシア国内の1億人超のユーザーを「国営監視アプリ」へ移行させるのが狙いだとしている。

ロシア規制当局は先に、セキュリティー対策が不十分だとしてメッセージアプリ「テレグラム」へのアクセス制限を強化していた。テレグラムはロシア国内に、ワッツアップと同程度のユーザーを抱え、ウクライナに侵攻中のロシア軍でも広く使用されているという。

ワッツアップは声明で、「1億人以上のユーザーを安全でプライベートな通信から切り離そうとする試みは、時代に逆行しており、ロシアの人々の安全を損なうだけだ」と指摘。

「ユーザーがつながりを維持できるよう、我々はできる限りの対応を続けていく」とした。

ロシア国営のタス通信は先に、ワッツアップが今年ロシア国内で恒久的に遮断される見通しだと報じていた。

報道によると、ロシア政府関係者のアンドレイ・スヴィンツォフ氏は、メタが2022年に当局から「過激派組織」に指定されたため、「今回のような厳しい措置」は「完全に正当化される」と述べたとされる。

ワッツアップはかつて、ロシアで最も人気のあるメッセージングサービスだった。しかしメタが「過激派組織」に指定されて以降、同社が運営するインスタグラムやフェイスブックなどのアプリはロシア国内で遮断され、仮想プライベートネットワーク(VPN)を通じてのみアクセス可能となっている。

ロシア国民はメタのアプリを使用することを禁止されているわけではない。

ロシアのデジタル権利プロジェクト「ナ・スヴィャージ」は、当局がロスコムナドゾルが管理するインターネットアドレスディレクトリから、さまざまなウェブサイトを削除するケースが増加していると報告した。

これまでに、国家ドメイン名システム(NSDI)から、ユーチューブやメタが運営する各種プラットフォーム、BBC、独メディア「ドイチェ・ウェレ」など13の人気サイトが削除されたという。一度アクセスが遮断されると、VPNなしではサイトが開かなくなる。

国産アプリの使用促す、監視・検閲が目的か

2022年のウクライナ全面侵攻開始以前から、ロシア当局はグローバルなインターネットに代わる国内版インターネットの構築に着手していた。こうした動きは戦争中に加速し、自国が開発した通信プラットフォーム「MAX」にロシア人ユーザーを移行させる取り組みも進められた。

MAXはメッセージ機能と行政サービスを統合したいわゆる「スーパーアプリ」で、中国の「微信(ウィーチャット)」に似ていると言われている。しかし、暗号化機能は備えていない。

ロシア政府は、ロシア国内のユーザー・データを保存することが法律で定められているにもかかわらず、ワッツアップとテレグラムがそれを拒否していると主張している。

2025年以降、当局は国内で販売される全ての新規端末へのMAXアプリのプリインストールを義務付けている。また、公務員や教員、学生にこのプラットフォームの利用を義務付けている。

テレグラムの創業者でロシア出身のパヴェル・ドゥロフ氏は、ロシア政府は自国民に監視・政治的検閲のための国産アプリの使用を強制しようと、テレグラムへのアクセスを制限していると指摘した。

ドゥロフ氏によると、イランも同様の戦略で国内でテレグラムの利用を禁止し、国営アプリへ誘導しようとしたものの、イラン市民は回避手段を見つけたという。

「市民の自由を制限することは、決して正解にはならない」と、ドゥロフ氏は述べた。