【解説】温かな関係示すも影響力はなく……トランプ氏のイギリス国賓訪問

動画説明, トランプ氏の訪英に「意味はあったのか?」 BBC編集長らの見解は

サラ・スミス北米編集長

ドナルド・トランプ米大統領が、英首相の公式別荘「チェッカーズ」でのキア・スターマー英首相との会談よりも、ウィンザー城で過ごす方に熱心だった。このことに疑いの余地はほとんどない。

だからといって、今回の国賓訪問における英首相のもてなしが低評価だというわけではない。トランプ氏とその側近らは、このもてなしを熱心に称賛している。

ロンドン近郊にある首相のカントリーハウスは、間違いなく印象的な会談場所だ。バッキンガムシャーの田園地帯にトランプ氏を歓迎するため、イギリス陸軍落下傘連隊(レッド・デビルズ)による航空ショーが行われたほか、巨大なイギリス国旗とアメリカ国旗が掲げられた。

トランプ氏はスターマー氏のことが本当に好きらしいし、18日の共同記者会見では二人の良好な関係が明らかだった。しかしそれにも増してトランプ氏は、17日に英国王夫妻から受けた歓待に完全に魅了されていた。

ホワイトハウスのスージー・ワイルズ首席補佐官によると、今回の訪問の決定的なハイライトは、17日の夜にウィンザー城の聖ジョージ・ホールで開催された、160人を招いた豪華な晩餐(ばんさん)会だったという。

イギリス王室に対し長年にわたり深い憧れを抱いているトランプ氏にとって、国王から乾杯される以上のことなど、ほとんどない。自分のためにチェッカーズ上空を空軍機が何機飛んだとしても、国王からの乾杯にはかなわない。

イギリス国旗の赤白青を模したパラシュート兵2人が空中を落下している。1人は足に大きなアメリカ国旗を括り付けて広げている。もう1人は足に発煙筒を着け、赤い煙をたなびかせている

画像提供, EPA

画像説明, チェッカーズ上空で英米首脳のための航空ショーが行われた(18日)

今回のような国賓訪問は、首脳たちがより個人的なレベルで関係を築くためのもの、そして、お互いのスタッフが業務上の関係を構築するためのものだ。また、両国の関係の緊密さを大舞台で示す機会でもある。

そうした意味で、今回の訪問は英米双方にとって順調な展開だった。

18日の共同記者会見も、意見の相違が露呈する可能性があったにもかかわらず、あからさまに気まずい場面はほとんどなかった。

そうした争点の一つ、イギリスによるパレスチナ国家承認の計画について問われた際、トランプ氏は自分は違う意見だと述べた。しかし一方で、スターマー首相に対して満面の笑みを見せ、背中を温かく叩いた。スターマー氏がガザ地区のイスラム組織ハマスを非難したタイミングだった。

もう一つの潜在的に厄介な話題、つまり、性犯罪者のジェフリー・エプスティーン元被告との関係を理由に、スターマー氏がピーター・マンデルソン駐米大使を解任した件については、トランプ氏は珍しく静かにしていた。ほとんど発言せず、すぐにスターマー氏に話を譲った。

両首脳は、ガザとウクライナについて、スタッフを同席させずに、約1時間にわたって二人きりで会談した。その後の記者会見では非常に友好的な様子を見せたものの、意見を異にする主要な争点については、どちらも立場を変えていないことがすぐに明らかになった。

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このような訪問が成功したとしても、トランプ氏に対して各国首脳が持ち得る影響力には限界がある。

チェッカーズの中で、私はワイルズ首席補佐官に、今回の訪問がアメリカの対英通商、関税、国際問題に関する政策に影響を与える可能性について尋ねた。ワイルズ氏の回答は率直だった。影響は全くないと。

トランプ氏が今回の国賓訪問をどれほど楽しんだとしても、ウィンザー城での忘れがたい夜を理由に、重要な国際問題に関する立場を変えることはない。

しかし、すべての儀式と華やかさを経て、スターマー氏は少なくとも、外交的な代償を払うことなく、トランプ氏に敬意を払いながら異なる意見を言う権利を得たように見える。

米大統領の機嫌を損ねれば大きな代償を払う可能性があるが、関係性を慎重に築くことで、イギリスは他国に課された厳しい通商関税を回避することに成功してきた。スターマー氏もまた、屈辱的な叱責を受けたり、侮蔑的なあだ名を付けられたりすることはなかった。

今回の会談が、今年ホワイトハウスの大統領執務室で見られたような、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領をはじめとする各国首脳との気まずい衝突に発展する可能性は、初めからなかったと言える。だが注目すべきは、記者会見の締めくくりにおいて、トランプ氏がワシントンで見せるような攻撃的な姿勢とは異なり、より穏やかな態度で質問に臨んだ点だ。

スターマー氏は、この豪華な国賓訪問を企画することで「トランプの切り札」を使ったのだろうか。訪問は完璧に演出され、トランプ氏とファーストレディーを明らかに喜ばせた。

そして、スターマー氏がトランプ氏の考えを変える力を得たわけではないにせよ、両者の関係が決裂する可能性は、これまでになく遠ざかったように感じられる。