バッド・バニーさん、米スーパーボウルのショーでアメリカ大陸の団結とプエルトリコ愛を強調

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アナベル・ラッカム 文化記者
米領プエルトリコ出身の人気歌手バッド・バニーさん(31)が8日、プロフットボール(NFL)の優勝決定戦、スーパーボウルのハーフタイムショーに出演した。そのパフォーマンスは、故郷プエルトリコへの巨大なラブレターのような内容だった。
14分間のステージでは、レディー・ガガさんとリッキー・マーティンさんがゲスト出演したほか、ペドロ・パスカルさん、カーディ・Bさん、カロル・Gさん、ジェシカ・アルバさんといった著名人が、カメオ出演で登場。フィールド上には舞台装置として、バッド・バニーさんのショーで定番の、プエルトリコの伝統家屋をモデルにした「カシータ」が置かれ、多くの著名人がその玄関前ポーチで踊った。
バッド・バニーさんの本名は、ベニート・アントニオ・マルティネス・オカシオ。アメリカ最大の国民的スポーツイベントと言われるスーパーボウルのハーフタイムショーに出演するにあたり、ドナルド・トランプ米政権への政治的メッセージを発するのではと予想されていた。しかし、ふたを開けてみるとその代わりに、アメリカ大陸の団結を訴えるメッセージを打ち出した。
ネイルサロンやバーを含め、ラテン文化のさまざまな形を表す舞台装置の間を移動しながら、バッド・バニーさんは「Tití Me Preguntó」、「MONACO」、「BAILE INoLVIDABLE」などの代表曲を次々と披露した。
音楽配信サービス「スポティファイ」によると、バッド・バニーさんは2025年に世界で最も再生されたアーティストだった。そして今回、スーパーボウルのハーフタイムショーを全編スペイン語で披露した初のミュージシャンとして歴史を刻んだ。
ただし、英語でのメッセージも二つあった。スタジアムの掲示板には「The only thing more powerful than hate is love(憎しみより強力なものは愛だけ)」と、英語で掲げた。そして、手にしたフットボールには「Together, We Are America(みんな一緒に私たちはアメリカだ)」と書かれていた。

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今年のスーパーボウルの舞台は、カリフォルニア州サンタクララのリーヴァイス・スタジアムだった。そこでのバッド・バニーさんのライブは、米グラミー賞の最優秀アルバムに選ばれた「Debí Tirar Mas Fotos(もっと写真を撮っておくべきだった、の意味)」を昨年発表して以来、アメリカで初のイベントだった。
今回のショーでは、そのすべての芯にプエルトリコがあった。バッド・バニーさんはフィールドに設置されたサトウキビ畑から登場したし、舞台装置は彼の故郷の風景や音を表現するものだった。
ショーでは、家族の意味も大きくフィーチャーされた。ラティーノのダンサーが大勢踊る中で、若いカップルの結婚式があった。そして、今月1日のグラミー賞授賞式での彼のスピーチを映し出す小さいテレビの前で、彼がグラミー賞のトロフィーを小さい男の子に手渡すという象徴的な場面もあった。
2017年にプエルトリコを襲ったハリケーン・マリアに触れる演出もあった。嵐で破壊された島のインフラを象徴するものとして置かれた電柱に、ラップしながら上ったバッド・バニーさんの姿は、ハリケーンの犠牲者への追悼のように見えた。
衣装にもメッセージ性が込められていた。フットボールジャージーにも見えるクリーム色のトップスに描かれた「64」は、ハリケーンの公式死者数の可能性がある。ハリケーン・マリアの死者数は4600人以上と推定されている一方、政府発表の死者数は64人にとどまっている。
プエルトリコの住民は当時、ハリケーン被害に対する連邦政府の支援が本土の災害時に比べ不十分だったとして、第1次トランプ政権を批判していた。

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今回のステージではトランプ米大統領への直接的な批判はなかった。しかし、今月1日のグラミー賞授賞式の受賞スピーチでは、連邦政府の移民税関執行局(ICE)に抗議していた。
ICEをはじめ連邦当局による移民摘発活動については、全米各地で抗議が起きている。ミネソタ州ミネアポリスでは今年1月に、連邦職員が市民を射殺する事件が相次いだ。政権の取り締まりに対する、国民の監視の目が厳しくなっている。
トランプ大統領は今回のスーパーボウルには出席しなかったが、ミネアポリスで1月にアレックス・プレティさんとルネー・グッドさんが射殺された後、「すべてを見直す」と述べていた。
バッド・バニーさんはその後のグラミー賞の受賞スピーチで「神に感謝する前に、ICEは出ていけと言うことにする」と発言。さらに、「憎しみは憎しみでもっと強くなる。憎しみより強いのは愛だけだ。だから、お願いだから、違うやり方が必要だ。闘うなら、愛でもって闘わなくては」と呼びかけていた。
トランプ大統領は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、バッド・バニーさんのハーフタイムショーについて、「完全に最悪で、史上最低の一つだ!」と酷評。「アメリカの偉大性を侮辱するものだ」と述べた。

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バッド・バニーさんがスーパーボウルのハーフタイムショーに登場するのは、今回が初めてではない。2020年にはゲスト枠でシャキーラさんと共演している。しかし、今回は主役として圧倒的な存在感を示した。ステージの端から端へ悠々と歩きながら、力強い歌声を響かせた。
レディー・ガガさんは、ブルーノ・マーズさんとの共作「Die With A Smile」をサルサ調で披露した。リッキー・マーティンさんは、プエルトリコ文化を守るよう警告するバッド・バニーさんの曲「Lo Que Le Pasó A Hawaii(ハワイに何があったんだ、の意味)」を歌った。
バッド・バニーさんは最後にスペイン語で「神よ、アメリカを祝福してください」と叫び、北米・南米の国名を次々と挙げた。その後ろではダンサーたちが各国の旗を次々と掲げた。バッド・バニーさんがワールドツアーの公演をプエルトリコでしつつ、アメリカ本土ではしなかったことも、ここで想起された。

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バッド・バニーさんは2013年から音楽活動を続けている。イギリスの音楽・カルチャー誌i-Dによる昨年のインタビューで、アメリカ本土での公演を今回見送ったことについて「多くの理由」があるものの、「どれも憎しみが関係するものじゃない」と話していた。
スーパーボウルでの今回のステージは、スポーツ界最大の舞台で、ラテン文化の最高の形を表現するものとなった。

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