NASA、無人探査機を小惑星に衝突させる実験 軌道の変化確認へ

アメリカ航空宇宙局(NASA)は26日、無人探査機「ダート」(DART)を小惑星に衝突させる実験を行った。地球を脅かす可能性のある隕石の軌道を安全に変えることができるか、確認するのが狙い。
探査機「ダート」のカメラは1秒間に1枚の画像を送信し続け、直径約160メートルの小惑星ディモルフォスに衝突すると画像は途絶えた。

画像提供, NASA/JHU-APL
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(JHU-APL)を拠点とする管制官たちは、ダートのカメラにディモルフォスが大きく映し出された後、衝突により見えなくなると、歓声を上げて喜んだ。速報値の計算によると、衝突地点はディモルフォスの中心から17メートルしか外れていなかった様子。
NASA主導のこの計画で、今回の実験が期待する結果につながったか確認できるまでには、まだ数週間がかかる。しかし、NASAの惑星科学部門長のローリー・グレイズ氏は、素晴らしい成果が得られたはずだと述べた。
「私たちは人類の新時代に乗り出そうとしています。危険な小惑星の衝突などに対する自衛力を持てるかもしれない時代に。これはすごいことです。そのような能力を手にするのは初めてです」と、グレイズ氏は記者団に語った。
JHU-APLのミッション・システム・エンジニア、エレナ・アダムス博士は、惑星防衛策があると知って、「地球人は前より安心して安眠できるようになるはずだ」と述べた。

画像提供, NASA/JHU-JPL
研究者たちは今後、ディディモスと呼ばれる別の大きな小惑星を周回するディモルフォスの軌道が変化するかを確認し、実験が成功だったかどうかを判断する。
地球上にある複数の望遠鏡で精密な観測を行う予定。
ディモルフォスは衝突前、直径780メートルのディディモスを1周約11時間55分かけて周回していた。
衝突後は、この周回時間が数分短縮されるはずだという。

地球から11キロ離れた地点から送られた画像を見る限り、全てが計画通りに進んでいるようだった。
時速2万2000キロの相対速度で移動するダートはまず、小さい岩と大きな岩を区別する必要があった。その後、探査機に搭載されたナビゲーションソフトウェアがスラスター(推進装置)を噴射して軌道を調整し、確実に正面衝突するようにした。
一時的にでも、2つの小惑星の異なる形状を観測できたことにも、科学者たちは注目した。

画像提供, NASA/JHU-APL
ディディモスは予想通りのひし形だった。表面には複数の岩がある部分と、なめらかな部分が両方あった。
ダートのカメラシステムを担当したキャロライン・アーンスト博士は、ディモルフォスを見たときに非常に興奮したという。
「魅力的です。小さな月で、とてもかわいらしくて」
「私たちが見てきたほかの小さな小惑星も、表面が大きな岩で覆われていて、(ディモルフォスと)多くの点で似ている。そのため(ディモルフォスは)破砕集積体である可能性が高く、小さな岩がゆるく固まったようなものだと考えている」

ダート(DART)とは二重小惑星進路変更実験(Double Asteroid Redirection Test)の頭文字をとったもの。
JHU-APLのミッション・リーダー、アンディ・リヴキン博士はBBCニュースに対し、ダートは「まさにその名前通り」に機能するよう設計されたと説明した。
「この技術は『キネティック・インパクター技術』(動力学的衝突体技術)と呼ばれ、将来、小惑星がこちらへ向かって飛んできた時に役に立つ」と博士は話した。
「発想はとても簡単で、気になる物体に宇宙船を激突させる。宇宙船の物量と速度を利用して、気がかりな物体の軌道を少しだけ変えて、地球に激突しないよう、地球から外れていくよう進路を変える」
今回の実験対象として、デモルフォスとディディモスは慎重な検討の末に選ばれた。どちらの軌道も地球の軌道と重ならず、わずかに軌道を変更したとしても、地球に接する危険は増えないことから、対象となった。
しかし、私たちに危険をもたらす可能性のある岩は宇宙に複数存在する。
天体観測によってすでに、地球に衝突すれば地球上の生命が全滅する巨大小惑星の95%以上は特定できている(そのどれも地球には衝突しない。軌道はすでに計算済みで、地球に接近しないことが分かっている)。それでもほかにまだ未検知の小さい物体が地球に落下すれば、地球全体とは言わないまでも、落下地点周辺の地域や都市が大混乱に陥る可能性がある。

画像提供, NASA/JPL-APL
ディモルフォス級の物体が地球に落下すれば、直径1キロ、深さ数百メートルのクレーターができる可能性がある。その場合、衝突の衝撃は周囲に深刻な破壊をもたらす。そのため、小惑星の速度を少しでも変えられるだろうかという関心もある。地球接近より数年前に、小惑星の速度変更ができれば、わずかな変更でも有効だということになる。
「ダート」ミッションの科学者、ナンシー・チャボット博士は、こう説明する。
「腕時計が壊れて、少しずつ速くなるとする。最初の数日は時間がずれているのに気づかないかもしれないが、数週間もすると、時計がもはや正確ではないと気付く。速いので、正しい時間より進んでいる」
ダートからの送信映像は衝突時にいきなり途絶えたかもしれないが、近くで実験を観測していた小型人工衛星からの映像が届くはずだ。
イタリア製の小型衛星「LICIAキューブ」はダートの3分後に続き、50キロ離れた場所から一部始終を撮影していた。このデータは今後数日かけて地球へ送信される。ダートの衝突で、地表からがれきが吹き上がる様子も観測したはずだ。
欧州宇宙機関(ESA)は今後4年の間に、二重小惑星探査計画「ヘラ」として計4機の探査機をディディモスとディモルフォスへ向かわせ、今回の衝突の後の様子を観測する。

画像提供, HERA/ESA









