世界初のブタ心臓移植を受けた男性が死亡、術後2カ月 アメリカ

画像提供, University of Maryland School of Medicine
1月に世界で初めて遺伝子操作したブタの心臓の移植を受けた男性が8日、死亡した。米メリーランド州ボルティモアのメリーランド大学医療センターが9日に発表した。
末期症状の心臓疾患と診断されていたデイヴィッド・ベネットさん(57)は、1月7日にメリーランド大学医療センターで実験的な移植手術を受け、約2カ月間生き延びた。
術後の容体は良好で自発呼吸も確認されたとされていたが、医師によると数日前から容体が悪化したという。
ベネットさんは手術に伴うリスクを認識していた。手術前には、この先どうなるかわからない「暗闇の中での一撃」だと述べていた。
この移植を受けなければ命が危険な状態だったため、米医療当局は特別許可をメリーランド大学医療センターの医師団に与えていた。
ベネットさんは手術の6週間前に末期症状の心臓疾患と診断されて以来、生命維持装置につながれた状態で寝たきりだった。
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術後にスーパーボウルを観戦
医師によると、7時間にわたる移植手術を受けた後、ベネットさんは数週間家族と過ごし、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のスーパーボウルを観戦した。また、愛犬ラッキーが待つ自宅に帰りたいとも話していたという。
しかしその後、ベネットさんの容体が悪化し、医師たちは「打ちのめされた」という。
執刀したバートリー・グリフィス外科医は、病院が発表した声明の中で、「最後まで戦った勇敢で立派な患者であることを、彼は証明した」と述べた。
一方で、ベネットさんの息子デイヴィッド・ベネット・ジュニアさんは、父親の移植手術が「終わりでなく、希望の始まりになる」ことを望むと述べたと、AP通信は伝えた。
「私たちは、この歴史的取り組みのために費やされたすべての革新的瞬間、とんでもない夢、そして眠れない夜に感謝している」


「異種移植」への期待
グリフィス外科医は手術後のメリーランド大学の声明で、「臓器不足の危機解消に(世界が)一歩近づく」ことになると期待を示していた。
移植用の臓器が不足している現状では、待機リストで10万人が順番を待っているとされ、アメリカでは臓器提供を待ちながら1日に平均17人が死亡しているという。
「異種移植」と呼ばれる治療のために人間以外の臓器を使う技術は、長年にわたり研究が重ねられてきた。ブタの心臓弁の移植はすでに治療法として広く定着している。
昨年10月には米ニューヨーク大学の医師団が、ブタの腎臓を人間に移植する手術に成功したと発表。当時はこれが異種移植の分野で最先端の研究成果だったが、移植を受けた人は脳死状態で、回復の見込みはなかった。
<解説>ジェイムズ・ギャラガー、保健・科学担当編集委員
異種の臓器を使用するうえで最大の障壁となるのは、体が新たな臓器を異物とみなす「超急性拒絶反応」だ。
今回、移植に使われたブタの心臓には10の遺伝子組み換えが施されていた。移植直後は緊張感が漂ったが、その後の拒否反応はなく、この障壁は取り除かれたと言える。
手術から1カ月後に医師団に話を聞いたところ、まだ拒絶反応の兆候はなく、提供された心臓は「フェラーリのエンジン」のように快調に動いていると、医師団は説明した。一方で、ベネットさん自身が虚弱な状態に変わりはないとも話していた。
あの後何が起こったのか、ベネットさんの死因は何なのか。正確なところは分からない。
世界的な臓器不足解消のためにブタの臓器を使うという未来に、どこまで近づけるのか。それは死因をめぐる調査結果次第だろう。







