英、IT専門家や技術者1600人超の就労ビザ認めず 上限理由に

パラブ・ゴーシュ科学担当特派員 BBCニュース

ロールス・ロイス製トレント・エンジンの工場で

画像提供, Getty Images

昨年12月から今年3月にかけて、英政府が就労ビザ(査証)を認めなかったIT専門家や技術者の数は1600人以上に上ったことが、BBCニュースの取材で分かった。

英政府が定める月ごとの上限を上回ったことが理由だという。

移民政策が、ハイテク産業の振興を目指す政府の取り組みを阻害しているとの批判の声が上がっている。

政府は、雇用主が新たに人を雇い入れる際には、海外よりも国内の人材を優先すべきだとしている。

ビザ発行に関する今回の統計は、科学技術に関する政策提言団体「科学・工学のための活動」(CASE)が入手した。

CASEのサラ・メイン事務局長は、「科学や工学といった人材不足が明白な分野で、新規雇用は内務省(が定めている)上限を免除されるべきだ」と語った。

メイン博士は、「悲劇なのは、政策は誰のためにもなっていない。政府、雇用主、あるいは国民にとっても」と述べた。

「最も優秀で最も良い人材に英国は開かれているべきだと、政府はスローガンを繰り替えすのに、この政策はそのような人材をまさに拒否している」

2017年12月から18年3月にかけ、欧州連合(EU)域外からの人材を雇い入れたいと考える雇用主からの申請が、予想を上回る数で内務省に提出された。

いわゆるティア2査証制度は、テリーザ・メイ首相が内相だった時期に導入された。目的は、高い技能を持つ人材の、EU域外からの受け入れを制限することだった。

上限を超えたためにビザが認められなかった人材の職種別の内訳
画像説明, 上限を超えたためにビザが認められなかった人材の職種別の内訳

雇用主は探している人材が英国内で見つけられなかったことを証明する必要がある。2017年12月以前は、過去6年間近くで上限を超えたのは1回だけで、2015年6月に技術者の雇用申請が上限を66件上回ったときだった。

1年間の上限は2万700人で、月次では約1600人だ。

内務省のデータからは、12月、1月、2月には、申請者の半数近くがビザを認められず、3月には初めて半数以上が認められなかったことが明らかになった。

CASEは情報公開法に基づき、さらに職業の種類に分けた数字の公開を内務省に求めた。それにより、へルスケア産業の労働者が最も多くビザを拒否されていたことが分かった。しかし、英国の企業が申請した多数のIT専門家や技術者のビザも認められなかったことが初めて明らかになった。

昨年12月から今年3月にかけ、採用が決まっていたIT専門家1226人と技術者383人がビザを取得できなかった。さらに、医師や医療従事者1876人、教師197人、そのほか584人の専門職について、就労ビザが認められなかった。

申請が急増した理由は明らかになっていないが、英国のEU離脱を前に、EU出身の労働者が英国を離れたり、英国内の募集に応じていない可能性がある。

メイン博士は今年3月、現在の制度の変更を求める書簡をメイ首相に送った。書簡の中でメイン博士は、「才能のある人々を訓練し引き付けることは、政府の産業政策の成功、また英国の生産性のために不可欠」だと指摘している。

英産業連盟(CBI)で英国の政策を担当するマシュー・フェル氏は、英企業は政策によって不利益を被っているとし、「NHS(英国の国民医療サービス)の人員拡充か英経済の成長か、どちらかを選ばざるを得なくさせる移民政策は破綻している」と語った。

月次でみた各職種のビザが拒否された数
画像説明, 月次でみた各職種のビザが拒否された数

「我々には両方が必要で、『グローバルな英国』を政府が推進しようとしているときに、世界から高技能の人材を意図的に遮断しているのは自滅的だ。英国のポイント制度の条件を満たす高技能人材が、彼らの貢献よりも数を優先する恣意的な上限のために拒否されていることを、今回のデータは示している。少なくとも政府は人材不足職種(国内の人材のみでは需要を満たせないと認められた職種)を上限から免除すべきだ」

内務省の報道官は、「海外から来た専門職の人々による英国への貢献を政府は認めている。しかし、移民政策が国益に資することは重要で、雇用主が海外から採用する前に、英国居住者の労働市場で人材を探すようにしなくてはならない」と述べた。

さらに、「ティア2/一般(編注:ビザの一種)の雇用で毎月の上限を超える需要があった場合は、博士号レベルの職種の空きを埋めようとする申請者が優先される。人材不足職種リストに載っている職業で就労が拒否されたことはない」

英国王立協会の会長を務めるべンキ・ラマクリシュナン教授は、ビザ上限制度が英国の足かせになると語った。

同教授は、「コンピューター技術は現代の世界を支えるものだが、予見できる将来において、我々は海外からIT専門家たちを採用する必要がある」と述べた。

「雇用主たちは、高い技能を持った移民が必要なことを分かっているし、受け入れている。それは大半の一般市民も同じだ。じゃまをしているのは、政治的な目的のために、でたらめの全く根拠がないように思える移民上限を設定している人たちだ」

英ウェルカム・トラスト・サンガー研究所のジュリア・ウィルソン副所長は、上限が英国の科学振興を阻害していると語った。

ウィルソン博士は、「過去数カ月にわたって繰り返された問題によって、サンガー研究所の重要な研究の進捗が遅れた」と説明。「ゲノム学は政府の産業戦略の成功や英経済に死活的に重要な分野だ。(制度が抱える)問題を予見できない、あるいは改善できないことは、制度が目的にそぐわないのを示している」