【解説】 オミクロン株、南アフリカの状況から分かったこと
レイチェル・シュレア、ピーター・ムワイ、BBCリアリティー・チェック(ファクトチェック)

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新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」は南アフリカで最初に特定された。その後、同国では急激にこの変異株の感染が拡大した。
現在、イギリスをはじめとする各国でもオミクロン株の流行が始まっている。世界保健機関(WHO)は、オミクロン株は「これまでの変異株には見られないほどの速さで広がっている」と述べている。
南アフリカの状況から、オミクロン株について何が分かっているのだろうか?
オミクロン株の症状は軽い?
南アフリカでは、すべての州で新型コロナウイルスによる入院者が急激に増加した。
しかし、感染者数に対して、その増加速度は予想を下回っている。酸素吸入や人工呼吸器を必要としている患者は少なく、入院期間も短い。
南アの主要医療機関「ディスカバリー・ヘルス」は、同国での感染の第1波と比べると、オミクロン株に感染した成人が入院する確率は約3割は低いと試算している。
しかし南アフリカの研究者たちは、このことからすなわちオミクロン株の病原性がほかの変異株より弱いということにはならないと指摘する。

これまでの感染の波と大きく異なるのは、国内でワクチン接種や自然免疫が増えている点だ。
ワクチンを2回接種していても、すでに感染したことがあっても、それがオミクロン株の感染を防ぐ効果は低くなっている。それでも重症化は防いでいるようだ。
ヨハネスブルグのクリス・ハニ・バラグワナス病院に勤めるヴィッキー・ベイリー医師は、入院患者が少ないのは、新型ウイルスに対して、前より強い免疫を持つ人が増えたからかもしれないと話した。
「この変異株そのものが以前のものより病原性が弱いという証拠はない」

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WHOは、オミクロン株の病原性が弱いかもしれないと示すデータについて、入院患者が少ない上、入院患者の大半が重症化リスクの低い40歳以下だという要素から、データ自体がゆがめられている可能性があると警告する。
また、南アの病院は入院患者全員に新型ウイルス検査を行っているため、別の理由で入院している軽症者が多くデータに含まれているかもしれないという。
さらに60歳以上の国民は、他の年齢層に比べてワクチン接種率が高い傾向にあるため、重症化を逃れている可能性もある。
南アフリカは若者の多い国だ。国民の年齢中央値は27.6歳と、イギリスの40.4歳、日本の48.4歳に比べてはるかに若い。そのため、高齢化社会の国とはオミクロン株流行で経験する内容が違うかもしれない。
オミクロン株は子供がかかりやすい?
ハウテン州など、南アでも最も感染者の多い地域の報告によると、子供の入院が増えている。
これを、オミクロン株が若年層にもリスクが高い兆候だとして、警戒する声も上がっている。
しかし、ヨハネスブルグのウィットウォーターズランド大学のヘレン・リース教授は、この報告は非常に少ない数から導き出されていると指摘。また成人の場合と同様、子供が新型ウイルスにかかって入院したのか、他の理由で入院した後に感染したのかの区別はつかないと説明した。
ベイリー医師の病院にも、COVID-19が重症化した子供が入院しているが、その数は少なく、2~3日で回復しているという。
ベイリー医師はまた、子供の入院が多いというデータは、貧困地域から出ているため、平均よりも栄養状態が悪く、ウイルスに対するリスクが高かった可能性があると述べた。
ハウテン州でも、COVID-19に感染している子供の入院者患者の割合は減ってきている。12月第1週は14%だったが、第3週には8%となった。
オミクロン株に対するワクチンの効果は?

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南アフリカではワクチン接種を完了している割合は人口の26%と、比較的低い。そのため、南アの状況をワクチン接種率の高い国と直接比べることは難しいかもしれない。しかし、南アでは自然免疫を獲得している人が非常に多い。
セント・アンドリューズ大学のミュゲ・セヴィク博士は、他人にウイルスうつす危険性は、ワクチンによって大きく下がっているとみている。病状が短期間で回復するため、感染拡大の機会が減っているからだという。
しかし、ワクチン接種率の高い国でも、オミクロン株が急速に広がっていることは明白だ。
完全に感染を防ぐワクチンというものは、ほとんど存在しない。しかし重症化を防いでいることから、大幅な変異を遂げたオミクロン株についても、ワクチンがなお効果を上げていることが示されている。
ただし、その効果のほどはまだ不透明だ。
南アフリカでの初期研究によると、米ファイザー製のワクチンは数カ月前に2回の接種を終えていても、オミクロン株による入院を防ぐ効果がおおよそ70%ほどだった。3回目の接種後には、これが90%になったという。
しかし、南アでは米ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンも使われており、多くの国民が接種している。そのため、どのワクチンがどういうグループの人に有効なのか、今後もさらに研究が必要だ。
追加取材:ニコラ・モリソン(BBCモニタリング)










