【解説】 ブレグジット、次はどうなる 延期?――7つのシナリオ
ピーター・バーンズ、選挙・政治上級解説員、BBCニュース

イギリスの下院は12日、テリーザ・メイ首相が欧州連合(EU)と取りまとめた離脱協定を149票差で否決した。13日にはEUとの合意のないまま離脱するいわゆる「合意なしブレグジット(イギリスのEU離脱)」も否決された。そして14日には、3月29日の離脱を延期することを決めた。
これにより、メイ首相はEU離脱を通告するEU基本条約(リスボン条約)50条の延長をEUに要請することになる。EUの加盟27カ国がこれに賛成すれば、ブレグジットは延期される。
メイ首相は、延長期間は3カ月以内に留めるべきだという意見だ。もし下院が再び離脱協定を否決した場合には、延長期間がさらに長くなると示唆している。
ではその次は? 可能性はまだ多く残っている。
あり得る7つのシナリオを並べてみる――。

1. 延期後に合意なしブレグジット
EU離脱が延期されても、合意なしブレグジットが永久に除外されたわけでない。
もしイギリスとEUがこの延長期間内に協定をまとめられなければ、期限がくれば自動的に合意なし離脱となる状態は、変わっていない。
つまり、イギリスの下院議員の多数が合意なしブレグジットに反対するだけでなく、実際に合意なし離脱を防ぐため何らかの措置を取らなくてはならない。
2. メイ首相の協定を再々採決
メイ首相にとって最も簡単な選択肢は、自らの協定をもう一度、下院採決にかけることだ。
イギリス政府は来週前半にも採決を行う方針。もし協定が承認されれば、メイ首相は3月21日のEU首脳会談で短期間の期間延長を要請することができる。
一方、3度目の採決は認められないと指摘する議員もいる。下院では同じ会期中に全く同一の動議を投票にかけてはならないという決まりがある。
しかし、採決を認めるかどうかを決めるのは議長だ。
採決が認められれば、議員は短期間の延期後に協定に沿ってEUを離脱するか、協定を否決して長期的にブレグジットを延期するかの二択を迫られる。
もし3度目の正直で協定が可決されれば、これを新たな離脱日に発効するための法整備が必要になるだろう。
3. 大がかりな再交渉
離脱の延期が3カ月以上と長期化する場合、英政府はEUに全く新しい離脱協定を交渉したいと申し出るかもしれない。その際には、代替案について下院の意見表明の機会を与えることも考えられる。
これは細かい修正の後にまた議会採決をするのではなく、もっとじっくり時間をかけた一からの再交渉を意味する。
この場合、政府は「ノルウェー型」と呼ばれる、現在の協定よりもEUとの関係が緊密な協定案に方針を変える可能性もある。
しかし、もしEUが再交渉を拒めば、政府は他のシナリオを選ばなくてはならない。
4. 2度目の国民投票
2度目の国民投票を行うという選択肢もある。
前回の2016年のように、結果に法的拘束力を持たせないのが通常の国民投票だ。しかし一部の議員からは、結果に法的拘束力を持たせ、すぐに発効されるようにすべきだという意見も出ている。
どちらの場合でも、国民投票は自動的には実施されない。国民投票に関するルールは2000年政党、 選挙及び国民投票法に定められている。
国民投票を実施するには、新しく法律を定め、投票可能な国民の基準などのルールを決めなくてはならない。また、国民に何を質問するのか、内容について選挙管理委員会が審議・助言を行う時間も必要となる。質問はその後、新法の中に明記される。
この新法が承認されても、まだ国民投票は実施されない。実際の投票の前には「国民投票期間」が設けられることになっている。
ユニバーシティー・コレッジ・ロンドンの憲法研究チームによると、国民投票期間は最短でも22週間必要だという。
5. 総選挙の前倒し
メイ首相は今のこう着状態から抜け出すための最善策として、総選挙の前倒しを選択するかもしれない。
首相は単独では総選挙の実施を決められないが、2017年の前回選挙のように、2011年議会任期固定法を適用し、下院の賛成を求めることができる。
この場合、下院の3分の2以上が賛成すれば、総選挙となる。採決から選挙実施までの最短期間は25日だが、投票日は首相が決めることができる。
6. 再び内閣不信任案の採決
最大野党・労働党は、いつでも内閣不信任案を提出することができる。
2011年議会任期固定法によると、イギリスでは総選挙は5年に1回行われるべきだと定められている。つまり、次回総選挙は2022年だ。
しかし内閣不信任案が提出されれば、下院議員は政権を継続すべきかどうかを投票で判断する。不信任案には、「この議会は女王陛下の政権を信任していない」という文言が使われる。
過半数の議員は不信任に賛成した場合、そこから14日間のカウントダウンが始まる。
もしこの期間に現政権や別の政権が議会で信任を得られなければ、総選挙が前倒しで行われる。
この場合も、採決から選挙実施までの最短期間は25日だ。
7. ブレグジット中止
欧州司法裁判所(ECJ)は昨年12月、イギリスは一方的に第50条を破棄し、EU離脱を取り消すころができるとの判断を下した。残りの加盟27カ国の同意も不要だという。
メイ政権はなおブレグジット実現に尽力しているが、もし2度目の国民投票や、それ以前に政権交代が行われれば、これは大いにあり得る可能性だといえる。
しかし、ブレグジットを延期すればいずれにせよ、2016年の国民投票を覆すことが究極の選択肢なのかどうかという疑問はついて回る。
EU離脱を中止する方法は定かではない。しかし、議会が第50条の破棄を求めてそれを承認すれば、それで足りる可能性は高い。
その他の選択肢は?
昨年12月に保守党内で提出された党首不信任案をメイ首相が乗り越えたため、保守党によるメイ氏への党首不信任決議は今後12カ月間、行われない。
ただし、離脱協定が承認されず、メイ首相に方針転換するつもりがなければ、首相はいつでも辞任できる。すると保守党の党首選が始まり、新たな首相が誕生する。
議員から「問責決議案」が提出され、可決された場合にも、メイ首相は退任しなくてはならない。問責決議案は不信任案に似ているが、自動的に総選挙の実施とはならない。この場合も首相や政権の交代があり得る。
しかし、誰がメイ首相の後任になるにしろ、新首相もブレグジットについて同じ数々の選択肢に直面することになる。
(英語記事 Brexit: What happens now?)











