エア・インディア機墜落事故、燃料制御スイッチ「オフ」が原因か 予備報告書が指摘

白い建物の壁や屋根が破壊され、インド航空機の尾翼が建物から突き出ている

画像提供, Reuters

画像説明, 離陸直後に墜落し建物に突入した、インド航空ボーイング787ドリームライナーの尾翼

インド西部アーメダバード発イギリス・ロンドン行きのエア・インディア機が6月に墜落した事故で、事故を調査するインド航空当局は12日、当該機の燃料供給を制御するスイッチが離陸直後に「オフ」にされたとする予備報告書を公表した。

インド西部アーメダバードを出発しロンドンに向かっていたエア・インディアのボーイング「787-8型ドリームライナー」は、現地時間6月12日午後1時38分に離陸した直後に墜落した。この墜落で、計260人が死亡した。乗客のイギリス人男性(40)1人が奇跡的に生き延びた。

乗客の国籍は、インド169人、イギリス53人、ポルトガル7人、カナダ1人。

15ページにわたる報告書によると、事故後に回収されたコックピット・ボイス・レコーダー(CVR)には、一方の操縦士が「なぜ遮断したんだ?」と尋ね、別の操縦士が「そんなことしていない」と答える音声が記録されていた。

インド航空事故調査局(AAIB)が主導する事故調査は現在も続いており、最終的な詳細な報告書は今後12カ月以内に公表されるとみられる。

燃料供給スイッチを「なぜ遮断した?」

航空機には、左右のエンジンへの燃料供給を制御するスイッチがあり、通常は地上でエンジンを稼働・停止する際に使用される。

事故機のフライト・レコーダーによると、離陸直後に左右の燃料制御スイッチが「RUN(運転)」から「CUTOFF(遮断)」に切り替わっていた。

これにより、左右のエンジンが推力を失ったと、AAIBの報告書は指摘している。

コックピット内では一方の操縦士が、なぜ燃料供給を遮断したのかと尋ねるなど、混乱した状況が記録されていた。ロンドンのガトウィック空港行きの旅客機には、スミート・サバールワル機長とクライヴ・クンダル副操縦士が乗っていた。2人のどちらが燃料制御スイッチについて尋ねたのかは、報告書は明かしていない。

報告書によると、「機体は協定世界時(6月12日)午前8時8分42秒(インド標準時同日午後1時38分)に最大速度180ノット(時速約333キロ)IAS(指示対気速度)に到達した直後、エンジン1およびエンジン2の燃料制御スイッチが、1秒起きにRUN(運転)からCUTOFF(遮断)に切り替えられた」。

「エンジンN1およびN2は、エンジンへの燃料供給が遮断されたため、離陸時の数値から減少し始めた」と、報告書には記されている。

燃料制御スイッチはその後、通常飛行中に使用される「RUN」に切り替えられ、エンジンの再点火プロセスが自動的に開始された。片方のエンジンが推力を取り戻したものの、減速した機体のスピードを回復できなかったとされる。

報告書によると、協定世界時6月12日午前8時8分52秒(インド標準時同日午後1時38分52秒)に「エンジン1の燃料制御スイッチがCUTOFFからRUNに切り替わった」。その4秒後に、エンジン2の燃料制御スイッチもCUTOFFからRUNに切り替わった」。この時点で協定世界時6月12日午前8時8分56秒だったという。

さらに9秒後の協定世界時6月12日午前8時9分5秒、操縦士の1人が遭難信号「メーデー」を繰り返し通信した。管制官が対応するも、操縦士からの応答はなかった。

機体は急降下し、バイラムジー・ジージーボイ医科大学および市民病院の医師らの居住施設に直撃し、爆発が起きた。

操縦士2人はフライト前に「十分な休息を取っていた」と、報告書には記されている。

複数の専門家からは以前、飛行機が鳥と衝突するバードストライクなどが墜落の原因になった可能性が指摘されていた。しかし報告書によると、空港の監視カメラ映像を調べたところ、飛行経路周辺で「特筆すべき鳥の活動」は確認されなかったという。

報告書は、「現時点の調査においては、(ボーイング製)787-8型機あるいは(米エンジンメーカー)GE製GEnx-1Bエンジンの運用者や製造元に対して推奨する措置はない」とし、機体やエンジンに重大な欠陥は見つかっていないことを示唆した。

燃料サンプルに「問題なし」

報告書によると、事故機に使われた燃料タンクから採取された燃料サンプルは「基準を満たしていた」という。

航空専門家らは当初、燃料の汚染が墜落の要因になった可能性があるとBBCに語っていた。エンジンが2基同時に停止する事態は、燃料の汚染や詰まりで引き起こされることがあるという。

航空機のエンジンは、精密な燃料計量システムに依存している。これが詰まりを起こすと、燃料供給が途絶え、エンジンの停止につながる可能性がある。

報告書によると、事故機の左翼のAPU(補助動力装置)フィルターと燃料補給・投棄バルブからも「ごく少量の燃料サンプル」が採取された。

これらのサンプルは、「限られたサンプル量でも検査が可能な、適切な施設で検査される予定」だという。

予備報告書は事故原因について結論を示しておらず、調査が続いているとしているが、操縦士の行動に焦点を当てて調査している様子がうかがえる。

この墜落事故は、近年の航空史上最悪な事故の一つ。事故調査はAAIBが主導し、ボーイングやGE、エア・インディアのほか、インド、イギリス、アメリカの航空当局の協力を得て進められている。

国連の国際民間航空機関(ICAO)の規則では、航空事故発生から30日以内に予備報告書を提出するよう定められているが、報告書の公表は義務付けられていない。

少なくとも建物5棟が破壊

エア・インディア機は人口密集地に墜落し、バイラムジー・ジージーボイ医科大学および市民病院の医師らの居住施設に直撃した。

報告書によると、少なくとも5棟の建物が破壊された。

「機体は、地上の建物との衝突と、その後の火災により破壊された」と、報告書は説明した。

787-8型機の墜落事故は、2011年の導入以来初めて。

エア・インディアは事故後、大型の広胴型機による国際線の運航を削減している。

この悲惨な事故をきっかけに、インドの航空安全体制にも注目が集まっている。

インド航空規制当局の民間航空総局(DGCA)は今月初め、エア・インディアが所有するドリームライナー33機のうち26機について、強化された安全検査を実施した。重大な問題は確認されなかったという。

DGCAのトップはBBCに対し、(重大事故が発生した過去2年間を除けば)国際安全指標において、インドの航空安全記録は世界平均を上回る水準を維持していると強調した。

しかし、ここ数週間では、メンテナンスの不備や訓練不足を指摘する報告が相次いでいる。