自分を押さえつけた男の舌をかみ切り逃げた女性、61年越しの再審無罪 韓国

判決直前に撮影されたピンクのコート姿の崔末子(チェ・マルジャ)さん

画像提供, News1

画像説明, 崔(チェ)さんのケースは、裁判所が性暴力時の正当防衛を認めなかった典型的な例として、韓国の法律教科書に引用されている

自分の身体を押さえつけた男性の舌をかみ切ったとして、数十年前に傷害罪で有罪判決を受けた韓国の女性に対し、同国の裁判所は10日、再審で無罪判決を出した。

この事件で崔末子(チェ・マルジャ)さん(79)は、18歳のとき裁判で被告にされ、重い傷害の罪で有罪となり懲役10カ月を言い渡された。一方、崔さんを襲ったとされる男性(当時21)は、それより軽い懲役6カ月だった。

崔さんの運命はこの事件によって、10代で変わった。「被害者から被告人へと変えられた」のだった。

判決は長年、確定したままだったが、崔さんは70歳を過ぎてから何年かかけて、名誉の回復を訴えた。その結果、今年7月に南部・釜山(プサン)で再審が始まった。

初公判で検察は崔さんに謝罪し、有罪判決の破棄を裁判所に求める異例の対応を取った。

この日の無罪判決のあと、崔さんは「この事件をそのままにはできなかった。(中略)私と同じ運命をたどる被害者のために立ち上がりたかった」と述べた。

「周囲の人からは、岩に卵を投げつけるようなものだと忠告された。でも私は、この事件をそのままにはできなかった」

崔さんは支持者への感謝も表明。同時に、「権力を乱用し、弱者を踏みにじって法を操った」権力者らを非難した。

男性は性暴力の罪には問われず

裁判記録によると、崔さんは南部・金海(キメ)市で男性に地面に押さえつけられた。男性の舌の約1.5センチをかみ切り、どうにか逃げた。

韓国メディアによると、男性はその後、崔さんに対し、負傷への賠償を継続的に要求。ナイフを手に崔さんの家に押し入ったこともあったという。

最初の裁判では、男性は住居侵入および脅迫の罪で6カ月の執行猶予つき判決を受けた。強姦未遂には問われなかった。

一方、崔さんはそれより重い刑が言い渡された。裁判所は当時、彼女の行為は正当防衛の「合理的な範囲」を超えていると判断した。

崔さんは捜査中に6カ月間拘束された。判決には10カ月の執行猶予がつけられた。

再審請求、下級審では棄却

崔さんが再審請求に踏み切ったのは、2018年に韓国でも「#MeToo」運動が沸き起こったからだった。触発された崔さんは、人権団体に相談し、約2年かけて証拠を集めた。

だが、名誉回復の道は困難なものだった。下級裁判所は、正当防衛の主張を裏付ける証拠がないとして、再審の申し立てを棄却した。

それでも崔さんは、他の性暴力被害者が自分と同じような目に遭うのを見たくないと闘い続けた。そして昨年12月、最高裁は彼女の再審請求を認めた。

この日、裁判所の外では、崔さんと彼女の支持者たちに笑顔があふれた。「崔末子がやった!」、「崔末子は成功した」などと書かれたプラカードも見られた。

彼女の事件は今では、裁判所が性暴力で正当防衛を認めなかった典型例として、韓国の法律の教科書に載っている。