エヴァラードさん殺害事件、被告の警官に終身刑 英裁判所

画像提供, Everard family
英ロンドンで帰宅途中のサラ・エヴァラードさん(33)を誘拐、殺害したとして起訴されたロンドン警視庁の警官に対し、中央刑事裁判所は30日、終身刑を言い渡した。
裁判によると、ウェイン・カズンズ被告(48)は今年3月3日、ロンドン南部で友人宅から自宅に向けて歩いていたエヴァラードさんを誘拐した。その際、エヴァラードさんを逮捕するふりをした。
エイドリアン・フルフォード裁判官は判決で、「衝撃的、悲劇的、そして極めて残忍」な事件だとした。また、誘拐、強姦、殺害の様態は「グロテスク」で、被告は自らの家族を「裏切った」と述べた。
エヴァラードさんの家族は、カズンズ被告が刑務所から出ずに死ぬことになり、安心したと話した。
<関連記事>
ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監は判決後、「警視庁に恥をかかせた」被告によって「貴重な信頼の絆」が傷つけられたとの認識を記者団に示した。
警視総監は被告を「弱虫」だとし、「警察たるもののすべてを甚だしく裏切った」とコメント。「申し訳ない」と付け加えた。
カズンズ被告が警官になった経緯は、政府の警察行為独立事務所(IOPC)が調査を進めている。これまでに、被告が以前に運転していた車2台が、わいせつな露出事件との関連を指摘されていたものの、見逃されていたことがわかっている。
ロンドン市議会の警察犯罪委員会では30日、警視庁の幹部2人が出席。カズンズ被告が同僚らに「レイプ犯」とのあだ名をつけられていたとのうわさについて、耳にしていなかったと述べた。
一方、警察官の監察を担当するトム・ウィンザー警部は、あだ名については一部の警官が知っていたとBBCのラジオ番組で話した。
「私は知っていた。彼には薬物乱用や過激なポルノ、その種の不法行為に関する悪評もあるとされていた」
終身刑の判断
判決の言い渡しでフルフォード裁判官は、エヴァラードさんについて、「知的で能力と才能にあふれ、多くの人に愛された若い女性だった。まだ人生はこれからだった」と述べた。
カズンズ被告に対しては、「有罪と認めてはいるが、心からの悔恨は見られない。一方で、自分を哀れんでいるのは明らかで、犯行に対する正当な帰結を避けるか、低減しようとしている」と批判。
事件の深刻さは「極めて高く」、終身刑に相当すると述べた。
「今回のように、単独の被害者を誘拐、強姦、殺害するのに警官の役割を乱用したのは、政治、宗教、イデオロギー上の信念のために殺人を犯すのと同じくらい深刻だ」
「事件のすべての状況が、私たちの民主的な生活基盤をさまざまな点で脅かしている」

「世界がより安全になる」
エヴァラードさんの家族は、終身刑の判決に対して一定の満足感を表明した。
「何事も事態を改善はできないし、サラを戻すこともできないが(中略)彼が一生刑務所に入れられることで、いくらか心が穏やかになる」
「サラは不必要に、残酷に命を奪われた。この先、楽しむはずだった長い年月も奪い取られた。ウェイン・カズンズは警官という信用ある立場にいた。その信頼を乱用してサラをおびき寄せ、死に追いやったことに怒りと嫌悪を覚える。彼が刑務所にいることで、世界はより安全になる」
「サラが死んでもうすぐ7カ月になるが、彼女を失った痛みはものすごく大きい。いつも彼女の不在を悲しんでいる。私たちは心の中で彼女を安全に抱いている」
警視総監の辞任要求
この事件をめぐっては、ロンドン警視庁のディック警視総監の責任を問う声が出ている。
ハリエット・ハーマン下院議員(労働党)は、警察に対する女性の信頼感が「崩壊してしまうだろう」とツイート。ディック警視総監の下では警視庁は信頼回復は無理だとした。
プリティ・パテル内相も、警視庁に対して「深刻な疑念」があるとし、「責任を取らせる」と述べた。
事件については「嫌悪感を覚える」とし、「怪物」に終身刑が言い渡されたのは正しいことだと話した。
犯行の模様
判決公判では、カズンズ被告の犯行様態も明らかにされた。
裁判によると、被告は3月3日夜、ロンドン市内クラパムから、ブリクストンの自宅に向かって歩いていたエヴァラードさんを、警視庁発行の身分証明書と手錠を使って誘拐した。
被告は議会や外交関連の警備を担当する警官で、拳銃使用の訓練も受けていた。事件当日の朝、米大使館を警備する12時間のシフト勤務を終了。エヴァラードさんを誘拐すると、車でドーヴァー近くの人けのない地域に移動し、彼女を強姦した。
被告は4日午前2時半前に、警察支給のベルトでエヴァラードさんを絞め殺した。
その後、アシュフォードに近いホーズ・ウッドに所有する森林地帯で、エヴァラードさんの遺体を冷蔵庫の中で燃やした。遺体の一部は付近の池に投げ入れた。

画像提供, Met Police
同月9日、被告はケント州ディールの自宅で逮捕された。エヴァラードさんの誘拐に使われたレンタカーから容疑者として浮上した。翌日、エヴァラードさんの遺体の一部を警察犬が発見した。
事件当時、エヴァラードさんは企業のマーケティング幹部として働いていた。カズンズ被告は既婚で2人の子どもがいた。

<解説>終身刑とされた背景――ドミニク・カシアーニ内政・司法担当編集委員
50年以上前に死刑を廃止したとき、極悪犯罪者は一生、刑務所に閉じ込められることになると、英議会は国民に約束した。
以来、終身刑の適用を可能にするため、裁判をめぐる複雑なルール整備が行われてきた。
法律では、終身刑は「通常」、殺人を2回以上犯した犯罪者や、警察や刑務所の職員を殺した犯罪者、子どもを誘拐し残酷に殺した犯罪者、イデオロギーが動機となって犯行に及んだ犯罪者だけに適用が検討される。
法律を整備したとき、国会議員らは今回のような深刻な犯罪は想定していなかった。しかし、前述の犯罪者以外でも、深刻さが極めて高い事件の場合は、裁判官は終身刑を言い渡すことができるとしていた。
今回の裁判でフルフォード裁判官は、被告がエヴァラードさんをだまし、誘拐、強姦、殺害するために警官の地位を悪用したと結論づけ、テロにも匹敵する悪質さだと述べた。ただ、問題なのは犯罪のおぞましさと、被害者の長時間にわたる苦しみだけでなく、安全な社会の土台をつくる警察への信頼を損なったことでもあった。
それこそがまさに、裁判官がカズンズ被告に終身刑を出すことを、法律が認めた理由だった。









