米連邦、67年ぶりに女性の死刑を執行 政権交代目前に

Lisa Montgomery in jail. File photo

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画像説明, リサ・モンゴメリー死刑囚

米司法省は12日、殺人罪で死刑判決を受けていたリサ・モンゴメリー死刑囚(52)の刑を執行した。連邦政府が女性の死刑を執行したのは67年ぶり。

モンゴメリー死刑囚は、連邦政府による死刑が決まっていた唯一の女性だった。

モンゴメリー死刑囚をめぐっては、幼少期の虐待による精神疾患を理由に、弁護団が減刑を求めていた。刑務所のあるインディアナ州の連邦地裁は11日にいったん延期を決定したものの、最高裁がこれを覆したため、予定通り12日にインディアナ州テラホートの刑務所で薬物注射による刑が執行された。

モンゴメリー死刑囚は2004年、ミズーリ州で当時23歳で妊婦だったボビー・ジョー・スティネットさんを絞殺し、体を切り裂いて赤ちゃんを誘拐した。

最後の言葉は…

死刑執行に立ち会った女性によると、同死刑囚は最後に言いたいことはあるかと問われると、「ない」と答えたという。

モンゴメリー死刑囚の弁護人を務めるケリー・ヘンリー弁護士は声明で、執行に関わった人々は「恥を知るべきだ」と批判。

「政府はこの傷つき、妄想にとらわれた女性を殺すためなら何でもした」、「リサ・モンゴメリーの死刑は正義とは程遠い」と述べた。

Protesters outside the prison in Terre Haute, Indiana, U.S. January 12, 2021

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画像説明, インディアナ州テラホートの刑務所前には、死刑執行に反対する人たちが集まった

モンゴメリー死刑囚の刑執行はこれまでに2回、延期されていた。1回目は新型コロナウイルスのパンデミックの影響だった。

弁護団は、同死刑囚が虐待により脳に損傷を負っていると主張。父親による性的・身体的虐待や、母親による性労働の強要が繰り返されていたと、家族も証言していた。弁護団は、虐待は拷問に値するほどひどいものだったと述べていた。

その上で、犯行当時のモンゴメリー死刑囚は精神をわずらっており、現実からかい離していたと弁護した。この意見は、同死刑囚を担当してきた弁護士41人や人権擁護団体なども支持している。

一方で被害者の遺族や友人は、犯行は非常に残酷なもので、たとえ精神疾患があったとしても死刑に値すると述べている。

2007年に死刑が確定

モンゴメリー死刑囚は被害者のスティネットさんとインターネットで、犬好き同士として知り合った。犯行当日、スティネットさんの家まで車で向かったモンゴメリー死刑囚は、被害者の首をロープで絞めて殺害し、子宮から赤ちゃんを取り出した。

警察によると、モンゴメリー死刑囚は当初この赤ちゃんは前日に自分が産んだ子供だと主張していた。しかしうそが露呈すると、スティネットさん殺害を自白したという。

モンゴメリー死刑囚は2007年に有罪が確定した。2008年以降はテキサス州にある、特別な対応が必要な女性受刑者向けの連邦刑務所に収容され、心療内科の治療を受けていた。死刑執行日が決まった後は、自殺を防止するための監視が独房で続けられていたという。

ヘンリー弁護士は、モンゴメリー死刑囚が受けた最初の法的弁護は著しく不十分なもので、虐待やトラウマ、精神疾患への指摘に欠けていたと指摘していた。

トランプ政権で立て続けに

連邦レベルでの死刑は昨年まで17年間行われていなかったが、ドナルド・トランプ大統領の指示で再開されていた。

トランプ氏は任期が終わりに近づく中、立て続けに死刑を執行しようとしている

アメリカでは政権の移行期間中には政府は死刑を執行しないことが、130年にわたって慣例となっていた。しかし、今月20日にジョー・バイデン次期大統領が就任するまでに、連邦政府による死刑執行が5件予定され、モンゴメリー死刑囚の執行は3人目だった。

仮に5件の死刑がすべて執行されれば、トランプ氏は過去約100年で、在任中の連邦レベルの死刑執行が最も多い大統領となる。

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<解説> ジェシカ・ラッセンホップ、BBCニュース(ワシントン)

死刑囚の命を救おうとする闘いは常に、最後の瞬間まで白熱する。リサ・モンゴメリー死刑囚をめぐるそれも例外ではなかった。

死刑囚の刑を差し止め、終身刑に減刑できるのは大統領だけだ。現在はトランプ大統領がその権限を握っているが、もし弁護団がモンゴメリー死刑囚の刑執行をバイデン氏の就任まで引き延ばせれば、減刑を実現できただろう。バイデン氏は連邦政府による死刑を終わらせると約束しているからだ。

モンゴメリー死刑囚のケースも、多くの死刑囚のケースと同じように終わった。モンゴメリー死刑囚の弁護団は最後の最後に、刑執行を進めたい司法省に対して矢継ぎ早に訴訟を起こした。

究極的には最高裁が、モンゴメリー死刑囚の弁護団が起こした全3件の訴訟で、原告敗訴の判決を出した。そのうちの1件で弁護団は、精神的に刑にそぐわないモンゴメリー死刑囚を死刑にするのは違憲だと主張していた。

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