スイス国民投票、移民抑制を否決 EUとの移動自由を維持

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スイスで27日、欧州連合(EU)との間で人の移動の自由を定めた協定について、破棄の是非を問う国民投票が実施され、反対61.7%、賛成38%で否決された。
スイスはEU加盟国ではないが、EUと相互に依存した一連の協定を結んでおり、欧州の自由貿易圏に出入りできる。
これに対して保守系右派のスイス国民党(SVP)が移民抑制を提案したが、政府は反対していた。
2014年には、EUからスイスへの移民数を制限する同様の提案が僅差で可決され、スイスとEUの関係を損なうこととなった。
直接民主制をとるスイスでは、国民に直接的な発言権が与えられている。国民は定期的に国民投票や地域投票に参加し、様々な問題について票を投じる。
移動制限を支持する人々は、制限によってスイスは独自に国境を管理し、自分たちが望む移民のみを選べるようになると主張した。
一方で移動制限に反対する人々は、先行きが不透明な時代に、健全な経済をリセッション(景気後退)入りさせることになるほか、何十万人ものスイス市民が持つ、欧州各地での居住や就労の自由を奪うことになるとした。

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何世紀にもわたり中立政策を守ってきた内陸国のスイスは、時間の経過と共に、EUとのより密接な関わりの追求と、より孤立主義な路線との間で揺れ動いてきた。
27日の国民投票が、スイスとEUの協定の一部が破棄されれば全ての協定を無効にすることができる、いわゆる「ギロチン条項」を発動することで、スイス政府にEUとの移動の自由を定めた協定を一方的に無効にするのを余儀なくさせていた可能性がある。
この条項はEUとの輸送や研究、貿易に関する2国間協定に影響を与え、経済活動に混乱をもたらすとされていた。
国民投票に対する反応は
SVPのマルコ・キエザ党首は政府や議会、労働組合などの幅広い反対に遭った自分たちの提案について、十分な支持が得られなかったと認めた。
キエザ氏は自分たちの運動を、旧約聖書に出てくる「ダビデとゴリアテの戦い」(勇敢な少年が巨人から村を守った話)のように、弱小勢力が強大な敵に立ち向かうようなものだったと呼んだ。「だが、我々は国のために戦い続け、移民政策の決定権を取り戻す」とキエザ氏は述べた。

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提案に反対する人たちは、国民投票の結果はスイスがEUとの開かれた関係を支持していることの表れだと主張した。反対派は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が続く中、有権者は移動の自由をなくすことによる経済的損害を心配していたと述べた。
「スイス・EU間の自由移動は、スイスにとってもEUにとっても正しいことだ」と、カリン・ケラー=ズッター法相は記者団に述べた。「スイス国民は今日再び、この双方向の道が正しい認めた」。
「今日はEUとスイスの関係にとって素晴らしい日だ」と、シャルル・ミシェル欧州理事会議長はツイートした。「スイス国民が発言し、明確なメッセージを発信した。「協力し合うことで、我々には素晴らしい未来が待っている」。
父親の育休、戦闘機、狩猟
スイスではこの日、移動の自由以外にも複数の国民投票が行われた。その中には、父親の育児休暇に関するものも含まれる。
有権者の大半が父親の休暇導入に賛成し、この提案は可決された。周辺の欧州諸国と比べて父親の育休整備が遅れているスイスに、大きな変化がよそうされる。
この案では、子どもが生まれてから6カ月以内の2週間の有給休暇取得が、初めて父親に認められる。また、給与の8割が、1日あたり最大196スイスフラン(約2万2000円)まで補填される。
ほかにも、戦闘機の新規調達が賛成50.1%の僅差で可決された。オオカミなど保護の対象となっている野生動物の駆除を容易にする狩猟法改正は否決された。
ブレグジットへの影響は
スイスの国民投票は、2016年にイギリスがEU離脱の是非を問う国民投票を行う前から、すでに準備が進められていた。
スイス議会の最大政党SVPは、移民政策の決定権強化は国にどのような利点があるか、ブレグジット(イギリスのEU離脱)推進派と同様の主張をしてきた。
しかし現在、スイスへ流入する移民の数は減少傾向にあり、有権者はSVPの反移民メッセージに嫌気が差し始めているようだ。
スイス・EU間の移動の自由を支持するスイス国民の選択は、反対多数で否決されたことは、EUを離脱したイギリスと通商交渉中のEUに有利に働く可能性がある。イギリスにとっては、EUと自由貿易協定を妥結するにはどのような譲歩が必要かという、合図になるかもしれない。









