米俳優チャドウィック・ボーズマンさん、がんで死去 映画「ブラックパンサー」主演の43歳

動画説明, 黒人のヒーローを演じ……故チャドウィック・ボーズマンさんについて

大ヒット映画「ブラックパンサー」の主演などで知られる米俳優チャドウィック・ボーズマンさんが、結腸がんのため亡くなった。家族が日本時間29日午前、公表した。43歳だった。ボーズマンさんは、がんと診断されていたことを公表していなかった。

ボーズマンさんはロサンゼルスの自宅で、妻や家族に囲まれて息を引き取ったという。

家族はボーズマンさんのツイッター・アカウントなどで、訃報を発表した。「2016年にステージ3の結腸がんと診断され、ステージ4に進行したこの4年間、闘病を続けていた」という。

「チャドウィックは本物の闘士で、何もかも耐えぬき、皆さんが本当に愛するようになった数々の映画を皆さんにお届けしました」と家族は書き、2017年の「マーシャル 法廷を変えた男」から、今年6月にネットフリックスで公開されたスパイク・リー監督作「Da 5 Bloods」に至るまで、「どれも、数え切れない手術や化学療法の最中と合間に、撮影されたものです」と明らかにした。

「彼にとって『ブラックパンサー』でトゥチャラ王に命を吹き込むことができたのは、俳優人生において特に光栄なことでした」と、家族は書いている。

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ボーズマンさんは、2013年の「42 〜世界を変えた男〜」で黒人初の大リーグ選手、ジャッキー・ロビンソンを演じ、2014年には「Get On Up」で米ソウル音楽の第一人者、ジェイムズ・ブラウンを演じて注目された。2017年の「マーシャル」では、1967年に黒人初の米連邦最高裁判事になったサーグッド・マーシャルを演じた。

主演した2018年のマーベル映画「ブラックパンサー」は、世界的に大ヒットし、マーベル作品として初めて米アカデミー賞の作品賞候補になり、作曲、美術、衣装などの部門で受賞した。

ライアン・クーグラー監督を筆頭に、キャストのほとんども黒人の作品だった「ブラックパンサー」が、世界全体で13億ドルの興行収入を上げる大ヒット作になったことは、それ自体が文化的にきわめて重要な到達点と評価された。

「ブラックパンサー」は、「世界最高峰の科学技術力を持ちながら、世界にそれを伏せているアフリカの国ワカンダと、その若きトゥチャラ王」や、アフリカ大陸のダイナミックな自然と色彩と文化、王を支える仲間たちの姿を、激しいアクションと豊かな情感、多重的で手堅い脚本、優れた映像と演技と演出によって、総合的に描きだした。特に、自分と同じような外見のヒーローやヒロインを初めて大画面で見た多くの子供たちに、勇気を与えたとされる。

動画説明, 黒人スーパーヒーローが「今」を描く 映画「ブラックパンサー」

ボーズマンさんは昨年、「ブラックパンサー」は「才能ある若い黒人」であることの意味を変えてくれたと話していた。

他のマーベル映画でも同じ役を演じていたほか、2022年公開予定で「ブラックパンサー2」が計画されていた。

「ブラックパンサー」で繰り返される合言葉、「ワカンダ」国に忠誠を誓う「ワカンダ・フォーエバー(ワカンダよ永遠に)」が、ハッシュタグ「#WakandaForever」となり、ツイッターでトレンド入りしている。

これまで、がんの診断を公表していなかっただけに、ボーズマンさんの訃報は世界中の映画関係者やファンに衝撃を与えている。しかし今年に入って、体重が目立つほど落ちている様子に、多くのファンは体調を心配していた。

マーベル映画の公式ツイッターアカウントは、「私たちは大変心を痛めており、私たちの思いはチャドウィック・ボーズマンの家族と共にあります。あなたの伝説は永遠に語り継がれます。安らかに休んでください」とツイートした。

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監督が追悼

「ブラックパンサー」のライアン・クーグラー監督は30日、訃報についてコメントを発表し、ボーズマンさんの病気について自分も知らされていなかったことを明かした。初めて会った2016年からずっと「病気と共に生きていた」ことを、訃報の発表で初めて知ったという。

「チャドは自分のプライバシーをとても大事にしていて(中略)周りを大切にする人でリーダーで、信念と尊厳と誇りの人だったので、自分の苦しみから仕事仲間を守っていた。美しい人生を生きて、素晴らしい芸術を作った」と、監督は書いた。

予定されていた続編「ブラックパンサー2」の準備を重ね、脚本を書きながら昨年を過ごしたというクーグラー監督は、「二度と彼と話をしたり、ビデオやテキストでチャットしたりできない」のが本当に悲しいとして、「これほど鋭い喪失の悲しみは初めてだ」と書いた。

ボーズマンさんが「ブラックパンサー」の他のキャストのオーディションに(大規模映画の主役としては異例ながら)協力したことや、作品をより豊かなものにするため様々な提案を重ねたことなども明らかにした。

「アフリカの色々な文化では、亡くなった大切な人をよく先祖と呼ぶ。その人と血縁のこともあるし、そうでないこともある」とクーグラー監督は書き、ボーズマンさんと会ったときから「自分たちの先祖が彼を通じて語りかけてきた」し、だからこそ偉大な先人をたびたび演じていたのだろうと振り返った。

「辛い気持ちを抱えながら、一度でも彼と共にいられたことを深く感謝しつつ、チャドはもはや先祖になったのだと、その事実を受け止めなくてはならない。また会える時まで、彼はみんなを見守ってくれると承知している」

「とてつもない才能」

マーベル映画で共演している米俳優マーク・ラファロさんは、「今年相次ぐたくさんの悲劇が、チャドウィック・ボーズマンを失ったことで、ますます深刻なものになった。それしか言えない。なんて人で、なんてとてつもない才能だったんだろう。兄弟、君は時代を超えた偉大な1人で、これからますます偉大になる、そのスタートにさしかったばかりだった。神様が愛してるよ。力と共に休んで、王様」とツイートした。

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米俳優ドウェイン・ジョンソンさんも、「愛の中で休んで、兄弟。君の光を輝かせてくれて、その才能を世界と共有してくれて、ありがとう」とツイートした

米民主党の副大統領候補、カマラ・ハリス上院議員は、「本当につらい。友人で同じバイソン(2人が同窓のハーディング大のスポーツチーム名)のチャドウィック・ボーズマンは才能あふれる、優しくて学識豊かで、謙虚な人でした。あまりに早く逝ってしまったけれども、その人生は世界に変化をもたらしました」とツイートした。

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ボーズマンさんの最後のツイートは、ハリス氏が副大統領候補に選ばれたことを喜び応援する内容だった。ボーズマンさんが演じた黒人初の連邦最高裁判事、サースグッド・マーシャルは、ハリス氏が最も尊敬する人物としてあげる1人でもある。

米ジャーナリストのクリント・スミスさんは、「ブラックパンサーの衣装を着た自分の3歳の息子のことを、ずっと考えている。買ってもらったらほとんど毎日着ていて、脱ごうとしなかった。息子はそのままそこらじゅう『僕がブラックパンサー』だと言って歩き回っていた。どれだけ喜んでいたことか。チャドウィックが僕たちにくれたものは、計り知れない。なんてとてつもない喪失だ」とツイートした。

ボーズマンさんと「ブラックパンサー」の功績については、大勢が同様の思いをそれぞれにソーシャルメディアに書きこみ、ボーズマンさんの死去を悼んでいる。

A fan poses with a cosplayer portraying a character from the 2018 US superhero film based on the Marvel Comics character, 'The Black Panther' pose in the Kenyan capital, Nairobi on February 14, 2018

画像提供, Getty Images

画像説明, ボーズマンさんと映画「ブラックパンサー」は、多くの子供に勇気を与えた。写真は、2018年にケニア・ナイロビでコスプレイヤーと写真を撮る子供

サウスカロライナ州で1976年、内装業を営む父と看護師の母の間に生まれたボーズマンさんは、伝統的に黒人が通うアメリカの大学の中でもトップクラスのハワード大学で、映画演劇の演出術などを学んだ後、英オックスフォードの夏季演劇コースに奨学金を得て参加。後に、この奨学金を提供したのが米俳優デンゼル・ワシントンさんだったと判明した。

帰国後は、ニューヨークの映画学校を卒業した後、ニューヨークで演劇活動を続けた。2008年にはロサンゼルスに移り、映画俳優を目指した。

Chadwick Boseman at the commencement address

画像提供, Reuters

画像説明, 2018年に母校ハワード大学の卒業式で、力と連帯を意味する「ワカンダ・フォーエバー」のポーズをとったボーズマンさん

2018年には母校ハワード大学の卒業式に出席し、黒人など少数民族が大半の学生を前に、「この中には、大学そのものに抵抗した人もいるでしょう。皆さんの多くはこれからハワードを離れて、人を差別したり、片隅に追いやったりする歴史をもつ制度や組織に入ることになる」と述べた。

「ここで皆さんが、愛する大学に抵抗して闘ったこと自体、皆さんがこれから入る世界をより良くするために、自分が得た教育を有効に活用できるという、そのしるしです」と、ボーズマンさんは後輩に語りかけていた。

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