逆転無罪のキリスト教女性がパキスタン出国 冒涜罪で死刑判決から8年半

冒涜(ぼうとく)罪で死刑判決を受けた後、逆転無罪となったキリスト教徒のパキスタン人女性、アーシア・ビビ(本名アーシア・ノーリーン)さんが、パキスタンを出国していたことが分かった。パキスタン政府が明らかにした。
ビビさんはイスラム教徒と口論した際にイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜した罪に問われ、2010年に絞首刑が言い渡された。ビビさんは一貫して無罪を主張していた。その後、昨年10月にパキスタンの最高裁が無罪判決を下した。
無罪判決をめぐってパキスタンでは世論が大きく割れた。冒涜罪を強く支持するイスラム強硬派が激しい抗議を繰り広げた一方、リベラルな人々はビビさんの釈放を求めた。
パキスタン政府は、ビビさんがどこへ向かったのかや、いつ出国したのかについては明かさなかった。
しかし、ビビさんを弁護するサイフ・ウル=マルーク氏はBBCに対し、ビビさんはすでにカナダへ入国していると述べた。ビビさんの2人の娘はカナダへの亡命が認められているとされる。
第三国への出国の準備が整うまでの間、ビビさんがどこで生活していたのかは伏せられてきた。
パキスタンのイムラン・カーン首相は4月の時点でBBCに対して、ビビさんは「安全」で、「まもなく」出国することになると話していた。
ビビさんの夫が、英米やカナダへの亡命を希望したのを受けて、カナダのジャスティン・トルドー首相は昨年11月、ビビさんの受け入れをパキスタン政府と協議していると発言していた。
ビビさんの夫、アシク・マシーさんは、パキスタンは自分や家族にとって「とても危険」な場所になったと話していた。

事件の経緯
ことの発端は、2009年にさかのぼる。
ビビさんは一緒に果樹園で働く複数の女性から、イスラム教徒ではないビビさんが触れたバケツの水は汚いと言われ口論になった。
検察側によると、女性たちからイスラム教に改宗すべきだと言われたビビさんは、イスラム教の預言者ムハンマドについて侮辱的な発言をしたという。
ビビさんが冒涜した事実を認めたとの告発があり、警察による捜査の末、逮捕された。
最高裁は、証拠が信用できないことや、群衆の前で「殺すぞと脅され」る中での自白だったことを理由に、無罪を言い渡した。
冒涜法をめぐる分断

画像提供, EPA
イスラム教はパキスタンの国教で、国の法制度の土台となっている。厳格な冒涜法への支持は根強い。
イスラム強硬派の政治家は、自分の支持基盤を固める手段として、しばしば厳罰を支持してきた。
一方で、冒涜法が個人的な論争における報復に利用されることが多く、証拠不十分にも関わらず有罪扱いされるとの批判もある。
1990年代以降、人口のわずか1.6%にすぎないキリスト教徒の多くが有罪判決を受けてきた。
近年、キリスト教コミュニティを標的にした攻撃が多発しており、キリスト教に対する不寛容な風潮が広がっている。
パキスタンでは1990年以降、少なくとも65人が冒涜罪で死刑になったと報じられている。
4人の子どもを持つビビさんは、女性として初めて冒涜法に基づき死刑判決を受けた。









