台中パイナップル戦争、輸入禁止措置に対抗する台湾に海外から多くの支持

ティム・マクドナルド、ビジネス担当記者(BBCニュース)

A hawker selling pineapples seen in the street of Taipei

画像提供, Getty Images

画像説明, 台湾・台北市の路上で売られているパイナップル

今年2月から3月にかけて、中国と台湾がパイナップルをめぐり対立した。パイナップルはピザのトッピングに合うか、合わないかという万年の議論さえしのぐ争いだった。

中国は3月1日から台湾産パイナップルの輸入を禁止した。自国の作物に影響を及ぼしかねない「害虫」が確認されたからだというのが、その理由だった。

台湾の指導者らはこの禁止措置について、虫は全く関係ないと主張。台湾を国の一部だとみなしている中国が政治的圧力を強化していることの表れだと激怒した。

中国の措置に対抗すべく、台湾は海外に新たな顧客を求めたほか、中国の消費者が今後は食べられなくなるパイナップルを国内で消費するよう市民に呼びかけた。

「台湾産パイナップルは戦闘機よりも力がある。地政学的な圧力がそのおいしさを押しつぶすことなどできない」と、台湾の頼清徳副総統はツイッターで断言した。

台湾の農業委員会によると、台湾では年間42万トンのパイナップルが生産されている。昨年そのうちの1割強が輸出されたが、ほとんどは中国向けだった。

中国で販売できなくなると、台湾の生産者は供給過剰によるパイナップル価格の下落に直面してしまう。

「フリーダム・パイナップル」運動

蔡英文総裁は2月末、台湾の消費者にパイナップルをもっと買ってもらおうと、ソーシャルメディア上で「パイナップル・チャレンジ」を立ち上げた

呉釗燮(ジョセフ・ウー)外交部長も同様に2月末、外交部のツイッターアカウントを使い、「世界中の志を同じくする友人たちに、台湾を支持し、フリーダム・パイナップルの下に結束する」ようハッシュタグ付きで呼びかけた。

アメリカの事実上の在台大使館、アメリカ在台協会(AIT)と、カナダの駐台北貿易弁事処(CTOT)はそれぞれ、この呼びかけに喜んで応じた。

AITはブレント・クリステンセン所長が机の上にパイナップルを3つ置いている写真などを数多くフェイスブックページに投稿した。

台北にあるCTOTも3月初め、職員がパイナップル・ピザを囲んでいる写真を投稿。パイナップル・ピザはハワイではなくカナダ発祥だとする説明書きも添えた。

「私たちCTOT職員はパイナップル・ピザが好物だ。特に台湾産パイナップルが乗ったピザがね!」

蔡総統は、日本から約5000トン分のパイナップルの発注があったと明かした。

「台湾のパイナップルはまもなく本格的な収穫期を迎えます。これから美味しいパイナップルが日本にどんどん輸出されます。日本の皆さん、どうぞ宜しくお願いします!」と、蔡総統は3月半ば、日本語でツイートした。

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日本のツイッターユーザーも、大勢が台湾のパイナップルを応援した。台湾政府がキャンペーンを立ち上げてからわずか数日で、中国に輸出されるはずだったパイナップルを消費できるだけの発注が入った。

一方で、台湾南部でパイナップルを有機栽培し、「パイナップル王子」として知られるヤン・ユーファンさんは、台湾の生産者は近年、中国市場に傾倒していっているとBBC中国語に話した。日本などの市場よりも検査が簡単かつ速いことが理由という。

しかし、台湾の農業分野の輸出は中国大陸に偏りすぎているため、多様化が必要だとヤン氏は述べた。

「来年収穫予定のパイナップルは昨年に種まきを終えたものなので、来年はさらに大きな問題に直面することになる」

Yang Yufan, a well-known organic pineapple grower from Southern Taiwan

画像提供, Yang Yu-Fan

画像説明, ヤン・ユーファンさんはパイナップルを有機栽培していることで知られる

国外からの害虫や病気の流入を警戒と

中国は、税関当局が台湾産パイナップルから何度も害虫を検出したため、輸入を禁止したと主張した。

中国・国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、害虫や病気の流入を防ぐバイオセーフティ上の予防措置だと説明した。

しかし中国はこの1年、曖昧で不透明な貿易政策を用いてライバル国に罰則を科そうとしていると非難されてきた。

特にオーストラリアの農業生産者は、オーストラリア政府の政策に対する報復として、自分たちの生産品が非公式の禁止措置や理不尽な新基準の対象となっていることを懸念している。

蔡総統は輸入用パイナップルの99.97%は検査をクリアしているとして、中国の主張をきっぱり否定した。

Taiwanese president Tsai Ing-wen

画像提供, Getty Images

画像説明, 台湾の蔡総統

外来種は実際に経済的な損害を引き起こす恐れがあるため、バイオセキュリティは非常に厄介な分野だが、貿易紛争における対抗手段として利用されてきた長い歴史がある。

アジア貿易センターのデボラ・エルムス氏は、「ほとんどの在来種が防御手段を持たない害虫や病気が国外から持ち込まれる可能性があるという、正当な懸念に基づく対応措置もある」としつつ、「衛生植物検疫(SPS)と呼ばれる規則は、非常に簡単に外国との貿易を遮断できる方法でもある」と指摘した。

国連貿易開発会議(UNCTAD)のデータベースによると、中国によるSPS規制の数は1642件と、インドやアメリカパナマ、ペルーを除くほかの国よりも多い。

ただ、この数字は定性的なものではないため慎重に扱うべきだと、エルムス氏は述べた。不十分なルールの方が、いくつもの緩やかな規制より抑制的な場合もあるかもしれないと。