南アジアの新型ウイルス流行、少ない検査が実態を隠しているのか

シュルティ・メノン、BBCリアリティー・チェック

Woman in Pakistan wearing facemask

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画像説明, パキスタンでは感染者は減少傾向にある

インドではこれまでに260万人以上が新型コロナウイルスに感染しており、アメリカとブラジルに続いて世界で3番目に多い。

そもそも人口が巨大だと思えば驚くことではないが、では近隣諸国ではどうなのだろうか?

南アジアで流行は広がっている?

インドでは3月末に厳しいロックダウン(都市封鎖)が敷かれた。しかし制限が緩和されて以降、感染者は24日ごとに倍増している。

当局が検査の実施を拡大しているため、毎日の新規感染者の報告数は増えている。現在、当局は1日に70万件の検査を実施している。

南アジアの新型コロナウイルス感染者数
画像説明, 南アジアの新型コロナウイルス感染者数

しかし、南アジアの他の国は別の道をたどっているようだ。5月と6月には急激に感染が増えたものの、その後に確認される感染件数は、減少傾向にある。

南アジア地域で2番目に感染者の多いパキスタンでは、6月中ごろには1日に6000人が感染していたが、8月までに1000人以下に減っており、危険な楽観主義が広がっている。

バングラデシュも、8月21時点で28万7959人が感染しているが、1日当たりの感染者数のピークは6月半ばだった。その後は、7月末から減り始めた。

7月末にはイスラム教の祭典「イド」があったため、パキスタンとバングラデシュでは感染者が増えるのではないかとの懸念もあった。

しかしバングラデシュでは増加傾向があったものの、パキスタンでは引き続き感染者が減り続けている。

Boy in Afghanistan gets his temperature check

アフガニスタンでは、6月半ばの急増を境に感染者が減っているが、当局の統計の信頼性を疑う声もある。

アフガン保健省が行った最近の調査では、人口の3割以上が感染しているという結果が出た。

ネパール政府は100日間にわたるロックダウンを敢行。この時期は、インドとの国境に近い地域に感染が集中していた。また、人口の密集している都市部に感染が広がると、いくつかの州で地域的なロックダウンを行った。

一方、スリランカは他の近隣国に比べて感染者が少ない。4月以降に急増した段階があったものの、その数はなお抑えられている。スリランカ政府は厳しいロックダウンや、接触者の追跡、厳格な隔離ルールなどを導入した。

Police and army at a checkpoint during a curfew in Colombo

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画像説明, スリランカ政府は厳しいロックダウンや、接触者の追跡、厳格な隔離ルールなどを導入した

BBCシンハラ語のサロジ・パシラナ記者は、「接触者追跡システムには、公共の保健職員のほか、地元警察、情報機関、地方自治体の職員などが関わり、徹底して行われた」と話した。

南アジアの検査の状況は?

南アジアには世界の人口の約25%が集中する。しかし、新型ウイルス感染者の数で言うと、全体の15%しか占めていない。

ウイルス学者のシャヒド・ジャミール博士は、「インドや南アジア諸国の100万人当たりの感染者数は少ないが、100万人当たりの検査件数も少ない」と指摘する。

ジャミール博士によると、南アジア諸国の全検査件数は多いように見えるが、人口を考えれば決してそうではないという。

インドではこれまでに3000万件の検査が行われた。パキスタンでは220万件以上だ。

南アジアで伸びない検査数
画像説明, 南アジアで伸びない検査数

しかし人口1人当たりで計算すると、その検査数は他国よりも大幅に少ないことが分かる。

特にパキスタンとバングラデシュでは、検査が縮小しており、これが感染者数の報告にも影響を及ぼしているとみられる。

パキスタンでは6月、1日当たり3万1000件を検査していた。最も多かったのは7月27日の4万1666件だ。

しかしこの後から検査数は急激に減り始め、8月3日には1日当たり1万759件まで低下。その後、また増加している。

7月にパキスタン政府が行った調査によると、首都イスラマバードだけでも30万人が新型ウイルスに感染しており、その大半が無症状だったという。

バングラデシュでの検査件数も、政府が7月に高い検査費用を設定したことで減少した。また、偽の陰性証明書の売買スキャンダルも起こった。

ネパールでは、8月16日までに合わせて51万7907件の検査が行われたが、1日当たりの検査数は1万強といったところだ。

感染確認者1人当たりの検査数
画像説明, 感染確認者1人当たりの検査数

アフガニスタンは、検査に関するデータを公表していない。赤十字は、当局発表よりも感染者数がかなり多いのではないかと懸念を示している。

世界保健機関(WHO)は適切な検査数として、陽性者1人に対して10~30件という基準を出している。

南アジア諸国はこの基準を満たしているとは言いがたい。

バングラデシュと人口の近いロシアと日本では、陽性者1人に対する検査数がそれぞれ35件と29件だ。しかしバングラデシュではわずか5件と、WHOの基準に達していない。

ネパールでは6月14日には陽性者1人につき25件の検査が行われていたが、8月16日には20件まで減っている。

南アジアで致死率は?

南アジアでの新型ウイルスによる死者は、その全体数でも、10万人当たりの致死率でも、西洋諸国よりも少ない。

8月20日時点で、インドの10万人当たりの致死率は3.98、パキスタンは2.92だった。バングラデシュは2.34、アフガニスタンは3.70、感染者の少ないネパールとスリランカはそれぞれ0.43、0.05となっている。

一方、最も感染者の多いアメリカは52.93、次点のブラジルは53.04だ。欧州で最も高かったのはベルギーの87.28だった。

数値は明るい兆候のように思えるが、南アジア諸国は公衆衛生への支出が比較的少ないことから、データの信用性に疑問が出ている。

英ヨーク大学の公衆衛生専門家、カムラン・シディキ教授は、「多くの死亡例が主要統計に含まれる形で適正に報告されていない。あるいは、死因が正しく分類されていない」と指摘した。

しかしジャミール博士は、もし新型ウイルスによる死者数が少なく報告されていたとしても、世界の他地域との差は「歴然としている」と述べた。

「南アジアの人口は、欧米よりも平均年齢が非常に低い。これが最もあり得る説明だと思う」

追加取材:ワリュル・ラフマン・ミラジ(ダッカ)、ラマ・パラジュリ(カトマンドゥ)

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